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【おまけ②】小ネタ集

 本作「八王子戯愛物語」に鏤められた小ネタの数々を、一気に解説したいと思います。



【タイトル一覧】

・「二人の所持金」――作品全体

・「中央線は大動脈(笑)」――「@八王子駅」冒頭より

・「マルべリ-ブリッジ小噺」――「@八急スクエア」冒頭より

・「美南と俊介の元ネタ」――作品全体

・「苫小牧、日光、高雄」――「@十六夜庵」「@サザンタワースクエア八王子」より

・「お洒落な店名」――「@ユーロード②」序盤より

・「茉莉桑の香りとは何ぞや」――「@ユーロード②」より

・「都まんじゅうあれこれ」――「@ユーロード②」より

・「架空の歌手と歌」――「@SELEO八王子」より

・「架空の企業」――「@サザンタワースクエア八王子」より

・「ナスとトマトと椎茸」――「@ボーダーステーション」より

・「由木家の位置」――「@由木家」より




【二人の所持金】

・作中、美南はまるで何も感じないかのように平然と大金を支払い、その上さらに俊介におごろうとまでしていました。「俺もそんな粗っぽい野口さんの使い方してみたいよ」とすっかり俊介は呆れていましたが、一体この二人はいくら持ってきていたのでしょうか。以下の条件を基に、試算してみました。

 ・キクマツヤで購入したものは「ニューヨークハット」、「七分袖リネンシャツ」。

 ・カラオケは休日の学生料金で2時間半相当、ただし計算が煩雑になるため全て日中の料金。

 ・earthで購入したものは「ベルト付タックキュロット」。

 ・プリクラのお金は、一般的な相場を考慮して四百円。

 ・続編「北海道旅行記」における出費も含める。


結果。

俊介……8,168円

美南……26,524円


 美南、多っ!!

 これは金銭感覚おかしいと思われてもしょうがない。一体このうちどれほどが親からの緊急用のお金だったのでしょう。帰ったら怒られそうですね……。

 


【中央線は大動脈(笑)】


・冒頭、横山美南が乗ろうとしていたJR中央線。他の複数の作品でも触れられているこの路線は、東京でも屈指の主要路線です。

 東京から伸びる五つの「本線」の一つ。その凄まじい過密ダイヤや運行形態の突飛さ、沿線都市のバラエティさが、しばしば話題を呼んでいます。

 ところがこの大動脈、しょっちょう動脈瘤をつくる困り者。人身事故や車両・施設トラブル、安全確認などによる運転見合わせの件数の多さが尋常ではなく、関東のJR線でも指折りです。朝の通勤時間帯を直撃した暁には、遅延証明書を貰おうとする人の列が各駅で発生。周辺のバスや私鉄線は大混雑に陥るなど、その影響ははかり知れません。

 昨年十二月に公開した拙作「冽空の刹那」でも、中央線の人身事故で人が亡くなっていますが、地味に笑えないネタなのです。

 ちなみに、美南の住む町は八王子の隣の駅、西八王子駅付近の設定になっています。



【マルベリーブリッジ小噺】


 JR八王子駅の北口広場に架かる巨大なぺデストリアンデッキ。作中でも触れましたが、この橋の通称は桑になぞらえて「マルベリーブリッジ」です。橋の中ほどのところにはこれまた巨大な八の字形のモニュメント「絹の舞」が設置されています。どうやら、八王子城をイメージしたものなのだとか。

 実際に行ってみれば分かるのですが、この橋は階段やエレベーターの配置が何とも使いづらく、しばしば不便との指摘を受けるのだとか。事業執行当時の八王子市長・石森氏までもが「非常に使い勝手が悪いと私自身も思っている」などと言ってしまう有様ですから、救いようがありません。

 そんな「日本一使いづらいペデストリアンデッキ」マルベリーブリッジも、現在は延伸工事中。今後に期待ですね!



【美南と俊介の元ネタ】


 蒼旗作品では毎度毎度、キャラクターの名前を舞台やテーマソングに絡めて決めています。

 由木俊介から見てみましょう。苗字の「由木」は、大合併で八王子市に編入した旧由木村から。名前の「俊介」は、本作のテーマソングを歌っている八王子出身の歌手、ファンキー加藤(元FUNKY MONKEY BABYS)の本名から取りました。

 一方、横山美南の苗字「横山」も、由木村同様に合併を行った旧横山村から。名前の「美南」は、八王子市出身のAKB48メンバー、高橋みなみからです。彼女の黒歴史に準えて美南をボクっ娘にすることも考えましたが、あえなくボツ案に。やってたらちょっとは斬新さが増したんだろうか……。



【苫小牧、日光、高雄】


 美南の引っ越し先である、北海道苫小牧市。

 俊介の両親の出身地である、栃木県日光市。

 俊介の父の単身赴任先である、台湾の高雄市。

 これらは全て、八王子市の姉妹・友好都市です。苫小牧と日光の間にも姉妹都市の協定があるので、三市はまさにリアル三角関係と呼べるでしょう(笑)

 その由来は江戸時代に遡ります。豊臣によって天下が統一され、徳川家康が八王子を訪れた際、一体には主を失った武田家の家臣たちが大勢いました。家康は考えたのです。彼らを雇い、防衛力にすればいいと。かくして、国境警備隊「八王子千人同心」が結成されました。

 彼らは様々な任務をこなし、江戸時代中頃には日光東照宮の修繕にも寄与します。幕末には一部が北海道に渡り、開拓を行っていました。現在の苫小牧市の礎は、千人同心が築いたと言われています。八王子と日光、八王子と苫小牧の関係は、こうして誕生したのでした。

 図らずも、俊介と美南はそんな千人同心の足跡を辿っているのです(という設定です)。



【お洒落な店名】


 作中登場した店舗に、ずいぶんお洒落な名前のものが二つほどありましたね。「アストリアン」と「フレンチ・リヴィエラ」です。

 実はこれ、両方とも地名がモデルなのです。アスリアンもとい「アストリア」はアメリカ合衆国北部、ワシントン州にある小都市。そしてフレンチ・リヴィエラこと「コートダジュール」は、フランス南部からイタリア西部にかけての沿岸部一帯を指す地域名です。紺碧海岸、などと日本語で書くと、さらに美しさがいや増しに。

 案外、地名を冠したお店ってあるのかもしれませんよ。



【茉莉桑の香りとは何ぞや】


 茉莉桑、という植物は現実には存在しません。漢字で書くと分かりづらいですが、茉莉とはジャスミンのこと。八王子を象徴する植物──(マルベリー)とは全く別のものですが、香りはそっくりなんだとか。そこで、二つくっつけたらそれっぽくなるかと思って創ったのが「茉莉桑」だったのでした。

 本作を書くにあたり、桑の香りを描写するのにはそれを知っておかなければと考えたのですが、入手が大変なのでジャスミンティーで妥協した経緯があったりします(笑)

 ちなみに、こんな裏設定も。桑の葉に含まれる匂い成分の中に、「cージャスモン」と呼ばれる物質があります。人工生成が非常に難しいとされ、葉にカイコガを呼び寄せる際に活躍するこの妙な名前の物質、なんと微弱ながら性的興奮を助長する効果があるのだとか。「セクシーガール」の名前はあながち間違っていた訳ではないのです。美南がここまで知っていて買ったのかどうかはご想像にお任せしますが、あり得そうで怖いですね……。



【王子まんじゅうあれこれ】


 王子まんじゅうは、実在企業・つるや製菓が製造している円形の白餡まんじゅう「都まんじゅう」がモデルです。八王子名物として挙げましたが、実はつるや製菓自体は静岡県や神奈川県など、日本各地にあるのです。あの味を知っている方も、多いのではないでしょうか。

 現地ロケの際は十個入りを購入し、全部一人で食べてみました。作中の俊介の感想はほぼ作者の感想と同じです。いや、ほんと美味しい。十個は多いけど。

 ちなみにFUNKY MONKEY BABYSの「八王子純愛物語」では、一個三十円となっています。おかしいな、十個だとちょっと高いのかな……。



【架空の歌手と歌】


 本作には二つの架空の曲が登場します。GreenPeace「MOMENT」と、狂猿組「祈望」です。

 これまでの蒼旗作品を読んでくださっている方には、前者は「ああ、またか」と思っていただけたと思います。「MOMENT」は昨年十二月の「冽空の刹那」、今年二月の「Uninstaller is Running.」でも登場している、もはや常連の曲です。元ネタはGReeeeNの「刹那」、歌詞や曲調については「冽空の刹那」で主人公が語っているので、そちらをご覧ください。ちなみに歌手グループGreenPeace自体は、「テガミ」にも登場しています。

 一方の「祈望」ですが、こちらの元ネタは八王子市出身の歌手グループ、FUNKY MONKEY BABYS「希望の唄」です。曲中に女性ボーカルパートは存在しませんので、この部分は創作ですね。ああ、ファンモン解散しちゃったなぁ……。



【架空の企業】


 架空ついでに、美南のお父さんの勤め先についても触れたいと思います。

 彼の最初の勤め先であった小宮堂印刷の元ネタは、八王子市に実在する「三省堂印刷株式会社」です。事業所の所在地は八高線の北八王子駅付近、浅川を越えた少し先あたり。したがって通勤の際は、必ず八王子駅を経由していたことになります。

 その小宮堂印刷が吸収合併されたのが、八王子製紙。モデルは言わずもがな、苫小牧に主力工場を持つ国内最大手の製紙企業「王子製紙株式会社」です。名前が似てるのはただの偶然で、八王子市内に王子製紙の事業所はありません。三省堂印刷株式会社が王子製紙に吸収合併されるなどという話もありません。間違って問い合わせたりしないでくださいね(笑)



【ナスとトマトと椎茸】


 美南が嫌いだった野菜、と俊介が作中で発言していたものです。

 この三つは、実は八王子市の名産品。広大な市域を有する八王子では農業も盛んで、これらの収穫量は都内でも随一なのです。最近では地産地消へ向けての活動も多く、都内初の道の駅として完成した「道の駅・八王子滝山」に設置された地元の野菜を販売するスペースは、毎日大繁盛しているとのこと。

 都立小宮公園で行われる、自宅で椎茸を収穫できる「ほだ木」を作るイベントには、作者も数年前に参加しました。楽しかったです!



【由木家の位置】


 FUNKY MONKEY BABYS「八王子純愛物語」を聴いていると、最後の辺りの歌詞に「んんっ?」となる方もいらっしゃったのではないでしょうか。「南のドルフィンに溺れ」という部分ですね。

 南のドルフィンとは、八王子駅南口に立つラブホテル「ドルフィン」のこと。どぎつい色のラブホテルが多い中、八王子駅南口のランドマークを自称するこのホテルは外見もかなり洒落ていて、夜間のライトアップも美しい建物です。サザンスカイタワーの圧倒的な存在感に押され、いまいち目立たないのが無念。まあ、ラブホテルで「溺れる」と言ったら、意味は大体お察しなのですが……。

 ちなみにこのドルフィンの所在地は、設定上は由木家のあるマンションの立地となっています。歌詞通りに俊介と美南のいちゃいちゃシーンを入れることも考えましたが、今回は見送ることにしました。やるとしても次回、あればですけど(笑)







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