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BL担当とか女性読者狙いだな?

「ふふふ、可愛いボウヤだ……可愛がりが必要なようだね」端正な顔立ちの爽やかイケメンが

「え、でもボク、もうフラフラで立てないよぉ……」と、また2人目のイケメンに対して不埒な会話を持ちかける。

「ぐあああ! やめろ! キモイから! だいたい昼間っからそんな事してる場合じゃねぇぇぇ!!」と声を荒らげてそのシーンへの突入を全力で拒否する有田。






 こう・・なる前日の昼間、人の事など言えないほど有田は自分の身体についての調査・・をしこたま繰り返していた。足腰が立たなくなるほどに。


「――――ハラ減ったな」朝からそんな事も忘れて調査に没頭し。昼になってようやく体力の限界もあってか食料の調達へと、ビルから少し離れた所にあるコンビニへと足を運ぶことにする。何か食べないと本当にこのままイキ倒れになりそうな有田だった。


 着るものはとりあえず間に合わせ、今までのサイズの合わない警備服。道中もフラフラになりながらも目的地が見えてきた。

 コンビニの中は割と普通になんでも揃っていた。だが、人が見当たらないのは今日の朝からの事で変わりはない。「寂しいよなぁ……」等と思いつつもさっきまでの激しい疲れがやはりこの寂しさを和らげていた。ストレス解消には確かに役には立っていたのだ。


 あのゲームのせいでこんな事になっているのだろうと、朝から何度かゲーム機を構ってみてはいたのだが、なんの手がかりもなく。寂しさがぶり返して来る度に、指を激しく動かしたものだ。


 コンビニの弁当も少ないままなので、これは夜中のうちに「この人の居ない世界」に迷い込んだのだろうと推測できる。弁当を買うという概念はもうないのだし、「持って行ってもこの場合なら仕方ないよな?」などと誰にいい訳するでもなく、弁当を掴み取る。


 が、帰るまでの距離がもう本当に遠い。距離としては短いのだが、体力が……本当に残ってなかったのだ。「まあ別にどこで食べてもいいか」と、コンビニの床に座り込み、そのまま食べ始める。……美味い!! そう思った。


 これは今まで有田が感じてきた美味しさとはどこかが違った。時間が来たから食べる、というのではなく腹が減ったから食べる……。こんな違いしかないのだが、それでもその美味さは随分と違うものだ。


 ガツガツと物凄い勢いでコンビニの床に座ってご飯を食べる美少女の図が、なんとも違和感のある事だろうか。しかしこれで腹が満たされると、ある程度有田の中に落ち着きが取り戻せていた。


「はあ、なんか違うんだよなぁ……ギャルになったらさ、もっと、こう、あるだろうに……女子更衣室に堂々と入れたりとか、女湯に入れたりとかさぁ……」そんな期待は始まった時点で終わっていた。だが、期待とは違った方向に行きつつも、女体に隠された神秘については充分に堪能している。


 これから先にも、まだ何かトンデモ展開が待ってるのかも知れないし無いかも知れない。


「しっかし……これは単に疲れてるからとかじゃない気がするんだよな……」


 女性の筋力――――平均がどれほどだろうが、有田のゲーム機を通して作られた身体は本当に華奢で、見た目には美しいのだが。これが身体を動かす事に関しては全く向いてないような体つきである。


 「よし」と床に両手をついて腕立て伏せをおもむろに開始する有田。そして一回目にして挫折する半端ない筋力に軽く絶望。

「えええ、これ、普通? 普通なの? 世の中の女子って……こんなにか弱いの?」とは言え疲れてるんだから仕方ない事なのか……。アレをヤり過ぎてしまったのが不味かったか。


 コンビニの床でいきなり筋力トレーニングを始める美少女という、またしても違和感MAXな構図。


 これは、少し問題だぞ……と、有田は危機感を感じ始めた。例えば、このよく分からない世界において、筋力がない、戦闘力がない、53万とか戦闘力いらないから、せめて一般人くらいはないと誰かに襲われたら最悪である。


 抵抗出来ない。


 これは警備員という職業をしていた経験上、どうしても敏感にならざるを得ない事柄だ。つまり、自分の安全の確保という部分だ。


「考えられるのはスタンガンとかの所持……か? いやでも、この世界がもう変なんだからそりゃあもう、もっと威力ありそうなモンで武装したっていいよな」


 有田の頭の中では、これはゲームのせいでこの世界が出来上がったという疑念があり、そしてもしそれがそうだとすると、主催した人物なども当然居るのではないか? 等という漠然とではあるが認識があった。


 もし、そうだとすると? この変な世界でいきなり殺し合いをしてくださいとか、デス・ゲーム的な何かが始まってもちっともおかしくない。……幸いにして、今まで誰にも会っていなかったのだが、これは会っていたらどうなってしまうのだろう?


「とりあえず鍛えておいて損はないよな……」警備員当時からの日課であるトレーニングは、やはりこの世界でも続ける事にしようと決意するのであった。


 そんな決意の中、ポロンポロンとコンビニの扉が開閉する音がする。


「あら、また人に会っちゃったわ……」「アタシ、その任せますので」という会話と共にイケメンが2人。任せますって何を任せるんだ……? 有田の頭の中にはヤバイ、襲われるのでは? という疑念があり、警戒の体勢のまま二人を見つめ返している。


「ねえ、大丈夫? アナタはここで住んでるのかしら?」と、イケメンはオカマ言葉で話しかけてきた。どうやら二人共オカマなのかも知れない。言葉遣い的に。そう思って有田も言葉を安心して口に出した。


「俺の事? ですよね」


 ……有田も、女性ではない。中身は男なのだ。つまりこれはそう言う事・・・・・だった。


 




 自己紹介も早々に済ませ「ちょっと整理しましょっか」とイケメンの一人が声を上げる。とりあえず聞くだけ聞いてみようと二人とも耳を澄まして声の主に視線を集める。ちなみにこのリーダー各で黒髪の男はセイヤ、大人しい茶髪の方はショウと名乗っていて、有田はそのまま有田だと名乗っていた。


「私達はゲームを起動してこの変な世界に来たのよね、でも、作ったキャラクターが男女共に逆だった」

「俺もそのゲームやってて、こんな体になったんだ……と、思う」

「アタシも……」

「そこで思うんだけど、私達、言葉遣いを変えておいたほうが良いと思わない?」

「え? ああ、俺も確かに違和感ありすぎだもんなぁ……」


 言葉遣いは気を付けたほうが良いかもと思ってはいた有田ではあったが咄嗟には出てこないのも確かだ。男の話を今聞いておいて良かったのかも知れない。男も満足そうに二人を見ながら話を続ける。「特に自分の事をどう呼ぶかって、大切だと思うのよ」と主張するセイヤ。このセイヤとショウという名前はどこぞのホストクラブなのか? と言えなくもない名前だが……、有田もアリタという様にカタカナで書くと一気に女の子になる。


 ますはこの名前に慣れないといけない。その上で自分の事を私とかアタシとか言うのが有田にとっては妥当なのだろう。「じゃあ、アタシはボクにするね」というショウ。イケメンの弱気な感じでボクって言ったら……それはもう総受けとしか言えないだろう。また、ショウもそういった事を期待しているのだ。


 なんの事はない。結局この二人も有田の逆バージョンであるという事だ。


「それじゃ、私は俺に直して話そうかな……」と、こちらは攻めなんですね。これはBL路線まっしぐらじゃないか……。しかも、この二人は中身が女性。つまり男が好きなのだ。


 男が好きな男同士で、しかも攻めと受けが決まっている。有田には入る余地はない。だが、これは有田も入りたくない。何故なら、身体は女でも心は男。……女の子が好きなのだから。


「俺は、なんかもうこのままでいいや……」

「え? どうしたんだい?」

「ボク、何かマズイ事いっちゃったかな?」


 早くもそっち路線で話す事に慣れてしまっているこの二人。……相当な予習・・をしてたに違いない。だが、有田に至ってはそういった知識も程々にはあるのだが、テレが先行して話す言葉を変えられずにいる。


「まあ、その、今はこのままでいっかって思って……」


 なにしろ不思議な構図である。美男美女が三人集まって、それでも三角関係にならないのだから。というかむしろ有田は邪魔者くらいな扱いになるだろうし。ホモが二人とレズひとりという奇妙な組み合わせがここに誕生した。


 セイヤがこの言葉遣いを直そうと言い出した意図は、ショウとの関係をより深くしたいが為である。確かに目をつぶれば夢のような、いや、目を見開いて全力で現実を受け入れてセイヤはショウとの関係を望んでいるのだ。


「ところで、ここら辺にシャワーでも浴びれるようなところはない?」

「ああ、俺の知ってる場所なら近くにあるよ。ついでに宿泊施設も」


 軽い気持ちで案内して来た有田だが、この後に激しく後悔する事になる。なにしろ理想のイケメン同士のナマBLを望む二人が宿泊施設に侵入することになるのだから。


 紹介した後に気付く有田と気まずい雰囲気……。最悪だ。


 とは言え、こんな世界で唯一知り合えた、出会えた人間同士なんだ。互の主張はある程度尊重しなくてはならない。BL組をSビルの待機室に案内して、休憩と仮眠、シャワーなどの場所を探した。


 探したという言い方には理由がある。というのは有田がSビルの警備というのが仕事であって、また違うとも言えるからだ。Sビルの施設はオフィス中心、その他にショッピングを中心としたW棟、展示等を中心としたC棟があり、有田の職場はそのC、W棟の方なのだ。つまり警備隊は二つの場所を本部として活動している。


 警備室は開放されていて、無線機や懐中電灯もある。BL組みにはこのSビルの方の警備室を与えることにした。「ここなら、多分、誰も来ないよ、きっと」と部屋を見渡し、そして無線機のチャンネルを全て一つに統一して使い方を説明しておいた。


「おや、アリタちゃんは他の場所で休むのかい?」

「……そりゃまあ、俺はお邪魔でしょうからね」


 あまりに察しが良過ぎるのも、返って悪い事もある。……その場は凍り付いたような沈黙で満たされ、二人は誤魔化しきれない期待を高鳴らせた。それは有田にとっては見たくない光景だし、この場を去るのも無理はない。


「アリタちゃん! ボク、離れるのが怖いよ……」

「大丈夫だって、無線機の使い方も覚えたでしょ?」

「でも、ボク……このままじゃ」

「俺が付いてるんだ、心配なんてしなくていいぜ?」


 ショウはBLに興味はあるが初心者だった。つまり心の準備がまだ整ってないのだ。一方のセイヤはやはりBL大好きな腐女子の一人。この展開を逃すような事はセイヤには我慢ならない。有田は有田で、今朝からヤリたい事はヤってしまっているので、この二人もそうなんだろうと思い込んでいた。


 だが、中身が女同士であるという事と精神年齢を頭の中には入れてなかったのだ。


「アリタちゃんはこれからどうするんだい?」

「俺は、ちょっと薬局のシャッターでもこじ開けようかと思ってる」

「なぜだい?」

「筋トレするには必要かも知れないからね……」

「「筋トレ?!」」


 やはり有田の発想は男子のままだし、筋トレに驚く男二人も中身は女子だ。この日はこれで一旦別行動となる。

 もう昼の二時を回っていて時間はかかったがシャッターの強引な開閉には成功して、欲しいもの湿布系のスティックタイプの塗り薬を多めにもって筋トレに挑む。


 こう言ってはなんだが、あの二人は中身が女だからな……と、有田は思っていて。つまり頼れない可能性もあるなと思ったのも確かなのだ。


 腕立て伏せは、やり方によって筋肉の質が変わってくる。じっくりと体重を乗せるように持久力のある筋肉をつけるのか、素早くぱっぱと何十回もこなせる様な瞬発力のある筋肉をつけるのか。フローリングに拳を当てて腕立てすれば、拳の外側の皮を厚くする事が出来たりする。


 ……柔肌だとか、せっかくのこの美しい身体なのにゴツゴツしたような身体に改造してしまおうだなんて。これは勿体ないような……そんな気もしたが、これをこなす事は絶対に後で役に立つはずだ。


 体力を使い果たしては塗り薬を塗って筋肉を冷やして、また始める……。繰り返し繰り返し、何度でも。そうして筋肉痛の身体を引きずって、その日は爆睡となる。


 翌日。


 湿布薬の匂いが身体の至るところからプンプンと匂ってくる身体に我ながら後悔している有田と、昼間っからいちゃついているBLバカップル……。

 一応昼に集合しようと連絡し合っていた。


「ふふふ、可愛いボウヤだ……可愛がりが必要なようだね」端正な顔立ちの爽やかイケメンが

「え、でもボク、もうフラフラで立てないよぉ……」と、また2人目のイケメンに対して不埒な会話を持ちかける。

「ぐあああ! やめろ! キモイから! だいたい昼間っからそんな事してる場合じゃねぇぇぇ!!」と声を荒らげてそのシーンへの突入を全力で拒否する有田。


「そうだよね、うん、緊急事態だしな」

「ボク、本当に怖かったんだから……」


「何時頃からだったか分かる? この停電」



 人も居なくなったが今度は電気だ。これはさすがにヤバくなって来たんじゃないのか……?? こうしてサバイバル感が深まる二日目となるのだった。



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