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アルティシアに改名を今更。そこが謎な訳じゃない

「何があったんだ? この音は」

「地震……にしては揺れ方がなんだか違う気がしたけどナ」

「皆揃ってるね……一旦車で外の様子を見に行かないかい?」


ローガンの提案が建設的で一番的を得ている。山間部付近の方角から音が聞こえてきたというのは全員の意見で一致していて山間部へ向かう事になるのだが……。

 全く、予想もつかない展開が待ち受けている。






 こう・・なる十日程前。

 あれから三日と経たずにケンとスミコは戻ってきた。短剣を返し頭は下げているが、これですぐに許すようなことはなく、後ろ手にロープで手錠の代わりで柱に縛り付けておいた。

 ここには法律がない、だから必要な事だ。


 アルティシアの能力は驚異の速さで伸びていて、それは風を操る事で普段飛べるような高さではないようなジャンプ力や、走る時の速さ、機動力等の強化がされていて、一人無双状態になっていた。


 また、ボウガンで武装したゴブリンが迷い込んだ時に分かったことだが、矢はアルティシアを避けて通る。

 風の壁とでも言えるのか、そう言った飛び道具もアルティシアには効かない。

 これは何度も試す、つまりアルティシアに向けてボウガンを放つ事を試す訳にもいかないので、確証を得た訳ではないが。

 実感として感じられるくらいにはある。

 この時にボウガンという新しい武器も手に入っていて、戦力の強化は充分ではあった。


 矢尻は石で作られていて、これは手作業で作るとしたら相当なものだ。

 だが、飛び道具は戦いの中では圧倒的なリーチを誇るので、これは何としても使いこなしたいところ。


 ケンとスミコが帰ってきて車も帰ってきた訳だが、その返ってくるまでの間どうしていたのかと言うと軽トラックの荷台に皆を乗せて運ぶというスタイルだった。

 この軽トラックは、まだアルティシアが負傷していた頃に仮設トイレを近くの作業現場から持ち出した時の副産物である。

 また、この軽トラックはモンスターの死体を運ぶのにも便利が良かった。


 どこに埋めても同じなのだが、どうしても埋められないような場所、埋めるのが見つからないような場所からは運んで埋めるしかない。

 この死体を放って置いたらとんでもない悪臭を放ち、その上、衛生的にも危ない。

 もちろん運ぶ際にはブルーシートを使って荷台を清潔に保つ事も忘れてはだめだ。


 こうして、モンスターの死体を運ぶ様な役割にケンを駆り立てて、しばらくの間は罰として酷使したのだったが、

「いやあ、モンスターをわざわざ埋めてるなんて……普通のRPGでは考えられないですよ」

 これくらいの軽口を叩く余裕はあったようだ。


「全くだね……RPGゲームなんかだと、一日に最低でも十匹は狩ってるもんね。

 これを何十万人がやったらハッキリ言って死体の山で動けなくなる、現実にこれをやってみると……

 どうにも今までゲームでただなんとなくやっていた事がウソみたいに思えてくる」


 それはゲームだからしょうがない事なのだろう、面白い部分だけ抽出しないと即刻クソゲー扱いの現在のゲーム市場では。

 だが、一旦冷静に考えてみると倒したモンスターがキラーンとか言って消えていくのは全くもってご都合主義な訳だ。


 だいたい、そんなに倒されるほどモンスターがウロウロしてない。


 ウロウロしてる筈がない。


 例えばゴブリンは繁殖力が強く、種族を超えて交配するという設定があったとしても。一日に殺される平均値が冒険者の数×10なんて事を考えれば……。

 生まれたばかりの赤ん坊が成人するまでの速度がどんなに早くても、絶対に絶滅する。


 何しろ、一日の平均殺傷量が何百万になるのだろうから。


 これが人気のある作品なら尚更だ。


 こうして死骸を埋める作業をこなしているうちに、ケンと仲間達との溝は埋まって行った。死体を埋める作業がいわゆる汚い仕事に属する事で、やり手があまりいない。

 ローガンとアルティシアだけでこなして居た事を考えると、ケンという男手は必要であったし、それがそのままケンの居場所にもなった。


 スミコは女性陣、と言っても中身が女性のセイヤとショウ達とすぐに打ち解けていて、主に食事の方面でバックアップする事になる。

 特に変わったのはご飯。

 お米をご飯に変えるという、つまりは炊飯なのだが。

 このご飯との出会いは一同のハートをキャッチするには充分過ぎた。


「あ、アタシにちょっとお焦げの部分を盛ってね」

「アリちゃんお焦げが好きみたいだね! 本当なら焦がさないように炊くのが良いのだと思うんだけど……そういってくれると嬉しい!」


 この焦げた部分、お焦げは少し香ばしく、炊飯器で炊いたならお目にかかれないご飯である。ソーラーパネルをもっと大量に持って来ればもしかしたらある程度の電化製品も使えるかも知れないが、電気なしでやれる事はやる……というところで。

 何しろ、このパネルもモンスターに襲われた際に一度壊れたりしているので……極力、冷蔵庫の電源を優先する事にしていた。


 







 ひと波乱あっての参加になったが、これはこれで馴染んで来ている。


 そうして、数日置きにモンスターを退治するという行動を取りつつ十日程が経った頃の夜中。


 ズドーン!! という何が起きたか分からないような地響きと共に一行は目を覚ますことになる。眠い目をこすりながら集まる一同。


「何があったんだ? この音は」

「地震……にしては揺れ方がなんだか違う気がしたけどナ」

「皆揃ってるね……一旦車で外の様子を見に行かないかい?」


 ローガンの提案が建設的で一番的を得ている。山間部付近の方角から音が聞こえてきたというのは全員の意見で一致していて山間部へ向かう事になるのだが……。

 全く、予想もつかない展開が待ち受けている。

 十分ほど車を走らせ、山の近くまで来てようやく正体を突き止めた。


「あれは……城か……?」


 純和風、お殿様とかが住んでそうな城。それが忽然と現れたのだ。

 夜である為に車のライトで照らし出されている城壁は、下方向だけが映し出されているが、月明かりのおかげで城のシルエットだけは確認できる。


 多少警戒しつつ、その城の様子を伺いに車を走らせる。


 とりあえずは城外を一周するような形で城の大きさを測ってみる。

 ……大きい、これは意外な程の大きさだ。城壁の長さは百メートルはないか。

 高さは、見る限り三階建てで、見える限りでは三十メートル程もあるだろう。


 城壁は途中で途切れていて、中の様子もある程度は伺うことが出来ている。


 その中には人影が彷徨いている。

 人間……なら味方であって欲しいところだ。

 だが、城という突飛な建物に住まう人々とはどんな人種なのだろう?


 城といえば戦国。

 兵力を利用して、国を治めるという名目で自分達の贅沢の為に民に過酷な農作業を強いて、あまつさえその兵力を脅しに使う。

 ヤクザとどう違うの? と言った印象が強い。


 身分とかそう言った制度を勝手に作り、そしてそれを強要するし武力による支配もする。


 ちなみに現在の爺いちゃんばあちゃんの世代に於いても、これはあり得ることで。

 例えばそれは地主制度。


 戦後、敗戦した日本は地主というモノを廃止した。

 これは日本が率先してそうしたのではなく、この国の制度についてここは直せと言われて渋々直したところである。

 地主にとっては、土地を貸し与えている代わりに貸した分の見返りとして、年貢のような。

 貸出料を徴収する事も当たり前のように行われていた。


 そしてこれを日本の政治の見直しとして、地主は土地を安く領民に売り渡す事になるのだ。外国の話じゃなく、あくまで日本のちょっと前の話だ。

 もしも、日本が負けてなくて勝っていたら?


 地主制度がまだ続いていたならどうなったのだろう。


 日本は間違っていた、としか言い様がない。


 今、現在であるからそんな事が言えるが、例えば国のために死ぬのは名誉であるとか。

 歴史をちょっと遡るだけで日本という国がどれほど歪んでいたか分かる。

 現代では考えられないような事も、ほんの数百年前までは日本もそうであったのだし、例えば今の常識も百年後から見たらなんて馬鹿な事でもめてるんだという風に映るのかも知れない。

 さて、その時代の壁を超えて、今まさに目の前に城がある。


 そして、目の前の城だが。


 これはどれくらい昔のモノなのか。

 もしくは、全くの異世界から来た城なのか。

 話は通じるのか。


 中の人間を確認しない事にはこれは分からないし、人数にもよる。

 これは、もしかしたら大規模な人の異世界転移なのか……?


 正面から兵士が偵察に出ているのだが、この車という乗り物は……。まるで見た事もないような世界の人間が夜中に見たならどうなるか。

 グオオオというエンジン音と共にライトが二つとソレの本体と思われる車のシルエットが光速で移動する。

 ……化物に見えてもそれは仕方ない事だ。


「た、たた、助けてぇぇぇ!!」


 城内に引き返し、いや、逃げ帰っていく兵士。


「おい、今人が居たゼ?」

「なんか逃げて行ったょ」

「車を見た事がないんでしょう……それしか考えられないですよ」


 車を見たことがないような世界の人達が引っ越して来たらしい。だったら車を走らせている限りは怖くて近寄っては来ないのか……。

 降りて話を聞きに行くのが良いか、それとも朝を待ったほうが良いか。

 

 ただ、日本語であるという事は確かなようだ。


 それならと「朝を待とうか、相手もその方が警戒心も解けるだろうし」アルティシアの判断で朝を待って接触を試みる事になる。

 差し当たってワレワレハ……宇宙人のような挨拶をする事になるのだろう。


 一応、交代で眠るようにしようと宿に戻って睡眠を取り、朝がやってきた。


「……おはよう、やっぱり夜のうちにここまでは来なかったか」


 アルティシア、リサ、ケン、スミコ、四人が遅寝の体制から目覚めて全員の起床。そこには驚くべき人物が居た。

「アルティシア、久しぶりね」

「え? エメルダ?!」


 あの騒動というか、地震のような音を聞きつけてエメルダが戻って来てくれていたのだった。綺麗な金髪に青い瞳、本場物のエルフさん。

 そして、驚くべきはその学習能力。

 ……薄い本の力なのだろうか? 日本語が聞き取れる程に、指輪なしでも話せるようになっていたのだから。どんな本でも参考書に成りうるという良い例であろう。


「凄いね! エメルダ!! 本当に日本語をマスターしちゃうなんてさ」

「フフ、まだちょっと、勉強たりないみたい、変じゃない?」

「充分過ぎるでしょ!!」


 エルフは元来高い魔力の他に知力も高いとされているが、知力の方も人間の比ではない。


 それにしてもの速さである。エメルダが単独行動から復帰するまでにはおよそ二十日間だったが、一緒に行動した分も二十日間程……つまり四十日。たったそれだけで日本語をマスター出来る能力があるなんて、天才の域を超えている。

 チートどころの騒ぎじゃない。


 こうして元のメンバーも加わり、八人であの突然現れたお城に探りを入れる。


 この訳の分からない世界に来て四十日が過ぎていた。



更新のギリギリまで書いてました。

もしかしたら粗が目立つかも……元からですか?!



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