6話 アイナside
今回はアイナsideです。
お楽しみください。
6話 アイナside
由夜が村を出て3時間後・・・。
異変は、畑仕事をしていた人から伝わった。
「なにか、変な音しないか?」
「確かに。地響きがするな。」
「遠くの山でも、噴火したんじゃないか?」
「そうかもな笑」
最初は、そんな些事な事だった。
だが、時間が経つに連れ噴火なんて生温いものじゃないと気づく。
「あれ、ゴブリンじゃないか?」
「よし、村の奴ら集めるぞ!」
最初は、一匹だった。
それでも、彼らには十分脅威だった。
それが、数分もしないうちに五十匹を超えた。
流石にこの時には、村中の者達は例外なくゴブリン襲来を知り、村の終わりを悟った。
もちろん、アイナもだ。
(由夜さん・・・。もう会えないかもしれません。約束守れそうにないです。ごめんなさい・・・。)
これが由夜登場5分前の出来事だ。
村の男達は、団結してゴブリン撃破をしようとしたが、村長に女子供を守るのを優先しろと言われて、悔し涙を飲んでいた・・・。
そして、ゴブリンが間も無く村に着くというところで由夜が、ゴブリンと村の間に踊り込んできた。
村人達は、由夜一人増えたところで今更どうにもならないと由夜を見ていると、由夜は刀をいきなり抜き一番近くのゴブリンに斬りかかった。
その動きを完全に目で追えたものは敵味方含めて皆無だった。
(由夜さんすごい・・・。でも、由夜さんがどんなに強くたってあんな沢山のゴブリンには勝てない・・・。いや、私が信じないでどうするの!?由夜さん負けないでください。)
由夜のゴブリンを斬る速度が速くなる中、村人達の心の中では希望の光がほんの少しだが確かに灯っていた。
「由夜さーん!がんばってくださーい!」
アイナは、精一杯叫ぶが残念ながら、由夜にその声は届いていない。
・・・数分後。
緑のはずの草原は、ゴブリンの血によって赤黒く染め直されていた。
百匹はいたはずのゴブリンは、皆血の海に沈んでいる。
その真ん中で一人佇む由夜。
そこへアイナが駆け寄って行った。
「ほら、また会えるって言っただろ?」
助かったことが嬉しんだかまた由夜に会えたことが嬉しいのかどちらのかなのか分からない。
いや、きっとどちらもだろう。
「わ、私、もう村がダメかと思いましたぁー」
もっとしたら、勝手に涙が溢れ出てきてしまった。
「いつもあんなにたくさんのゴブリンが襲ってくるのか?」
由夜にそんなとぼけたことを聞かれ、
「いえ。いつもは2、3匹です。あんなに多いのは、生まれて初めてですよ。」
と返した。続けて、
「由夜さんがいなかったら、私今頃生きていませんでしたよ。本当に、ありがとうございます。」
とも言った。
「そんな、当然の事をしただけだよ。」
(この人はなんて立派な人なのだろう!)
この時、アイナには由夜が英雄にでも見えていた。
ま、無理もないが。
「いえ、あんなに沢山の魔物が、襲ってきて村が無事なんて奇跡です。」
最初にアイナが由夜の元へ駆け寄らなければ、化け物扱いされていただろう。
そのあと、アイナが止めるまで村の人からの由夜への質問は続いていただろう。
由夜に抱きついているとこに恥ずかしさを覚えて急いで離れてしまった。
(私ったらなにやってるんだろう・・・。)
ひとまず、血まにれの由夜を家に案内した。
なぜが無性に手を繋がないと、何処かへふらっと消えてしまいそうな気がした。