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お茶菓子の失態

 グリコなる一粒300メートルのパワーを秘めた庶民派キャラメルのあだ名を持つ私が、プリンスこと小宇治崇君に恋をしているのは、前回ストーカー気味の情報収集癖とともに暴露したが。

 これはどういう状況なのだろう。


 小宇治君と私が同衾しているのだ。

 しかもキャミソール一枚にパンツ一丁。小宇治君に至っては上半身裸。下半身は恐ろしくて見れない。


 いや、この状況は分かっている。どう見てもどう考えても朝チュンというやつだ。

 だけどなにゆえそんなものが私に降りかかっているのかが理解不能。一生縁ないものだと思っていたのに。現実は小説より奇なり。これはこういうときに使う言葉だったのか。今理解した、100%理解した。だから早くこの状況から逃がしてください、アーメン。


 目を閉じて祈ってから、再び目を開ける。しかしそこはやはり見なれた6畳のワンルームなマイルームではなく、明らかに他人の部屋。シックな黒の内装や置いてある洋服、雑誌なんかを鑑みれば若い男性の部屋。

 そしてやはり、小宇治君がとなりで上半身裸(下半身不明)で寝ている状況も同じなのだ。



 えらいこっちゃ。私はベッドの下にきちんと畳んで置いてある自分の服を大急ぎで着る。なんでこんなにきれいに畳んでいるのか。泣けてくる。

 これは確実に私が畳んだ。シャツやスカートの畳み方が私スタイルだ。救いは下着の上下がちゃんとお揃いで、しかもキャミソールまでお揃いの一番お気に入りの下着を付けていたことか。でもそもそもの中身が貧相なものなのでどうしようもない。

 私ごときを手籠めにしたい男性がいるとは思わなかったので、齢二十歳であるがいまいちそういう危機感がなかった。まさか小宇治君がそれになってしまうとは。世紀末は終わったけど、平成の大不況。デフレスパイラル。ついに世も末ということだろうか。私は靴下を履きながら世界の終末の予感を感じ、一瞬だけ神に祈った。私が老衰で死ぬまで、たぶん後60年くらいは、世界を滅ぼさないでください、アーメン。

 バッグを取って、忘れ物がないかあたりを見回す。よし、ない。あとは逃げるのみ。

 私が出てしまえば鍵は空いたままだが、悪い、そこまで責任持てぬ。大急ぎで靴を履き、部屋から出るべくドアノブを回してドアを薄く開けた。ところで。


「やり逃げするんだー?」

 後方から声がかかる。嫌な汗が背中を伝う。

 ゆっくり振り向くと、トランクス一枚の小宇治崇君が私を見ていた。


 下半身は裸ではなかったんですね。良かった。(でもちょっとその中身覗きたい気もします。本心)


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