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第九章第六話
私は、新しい時のはざまに落ちてきた人達のたまり場所を離れ、公園をあとにした。あの彼女には挨拶はしなかった。私はぶらぶらと街中へ向かって歩いた。これからのことを考えると、元いた世界に戻り、車椅子の不自由な世界よりも、透明人間のこちらの世界にとどまっていた方が、良いような気がしてきた。 私が元いた世界に戻ることを躊躇うのは、まさにその不自由といぅ点だった。何か事が起こっても、自分の力では何もできず、親兄弟に多大な迷惑をかけてしまうと言う点だった。何も起こらないかもしれないが、あの青年の世界と同じようになれば、足手まといになってしまう。悩みどころだった。