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第九章第一話
その彼女は、私の視線に気がついたようで、人の輪から抜け出して近づいてきた。「久しぶりね。元気だった?」「あぁ、なんとかね。君のほうは?」「あなたも見てのとおり、この世界に落ちて来る人が増えたので、このごろ何だか忙しいの。」何でこの世界に落ちて来る人が増えたのだろう。私は、素朴な疑問を抱いた。 「何でこちらへ来る人が増えたのだろうかね?」彼女に聞いても、はっきりした答えは期待できないのに、私は尋ねた。「そんな事あたしに判る訳がないでしょ。」予想どおりの答えだった。「でもね。落ちて来た人がよく言うのは、現実逃避したくなるような事が多く起きはじめたらしいよ。」それは私がいた元の世界のことなのだろうか。私は最近タイムスリップしてきた人と話してみたくなった。