第一章第八話
久しぶりに帰った我が家は変わっていなかった。
久しぶりの自宅は変わっていなかった。それは当たり前だった。何ヵ月しか経っていないのだから。開けっ放しの玄関から二階の自分の部屋に向かった。そこには高校2年のまだ若い小僧の私がいた。机に向かって、何か、難しいことでも考えているのか、何度も深い溜め息をついている。「みやび・・・」あんなに手酷くフラれたのに、まだあの女のことを考えているとは。あんなにこっぴどくフラれた女の名をため息つきながら、まだ思い続けているとは、未練がましい奴だった。私はできることなら若い私に、まだ人生は長い、これからもいろんな女と知り合うぞと耳打ちしてあげたかった。しかし、ここは私の経験してきた過去とは微妙に違うから、確実にそうなるとは言えなかった。これは良いことなのだろうか?この世界での私の未来はどうなるのだろうか?
次の日、私は高校2年になった若い私が学校へ行った後、私も久しぶりに母校へ行こうと自室の壁にどこでもドアを呼び出そうとした。しかし、どこでもドアは現れなかった。手順などなく、強く念じればよいはずだったが、いつまでも現れなかった。私は焦りまくった。どこでもドアはもう使えないのだろうか。私は不安でいっぱいになった。