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第八章第一話
高二になった年(1982年)が暮れようとしていた。良いことなど何も無かった年だった。悪いことはてんこ盛りにあった年だったが。若い私は自分の部屋で音楽を聞いていた。この頃良く聞いていた、佐野元春だった。佐野元春懐かしい名前だ。彼の都会の生活を歌ったお洒落な歌が田舎の若い私をいたく刺激した。この人の歌が、私を都会へと導いたのだった。 高二の時は、良く音楽を聴いた。洋楽、邦楽共に良く聴いた。17歳近辺の年頃は、大人でもなく、かといって小さな子供でもなく、身体だけが大きくなったが、非常に中途半端で、自分自身のコントロールがうまくいかない年頃だった。何者にもなれそうだったが、何の力もない学生だった。毎日、歯痒かった。