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第一章第六話
女の話を遮るように、私は席を立ち、店を出ようとした。
私は女の推測を遮るように、店から出ようとした。「この世界も、元いた世界よりも、ましな世界とは限らないわよ!」店を出る私の背中に彼女は現実的な言葉を浴びせかけた。わかっているよ、そんなことは。でも、少し愉快じゃないか?二つの世界、人生を楽しめるなんて、と私は自分に言い聞かせて、夕暮れの繁華街を歩いた。
どこでもドアを使えば、すぐに自分の家に帰れたのだが、私はバスに乗って帰りたくて、静岡の駅付近にあるバスターミナルへ向かった。丁度、私の自宅方面へ向かうバスが出るところだった。バスはゆっくりと出発した。