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第六章第一話
「親を呼んでるからな。」帰りの新幹線の中で、体育教師が言ってきた。
「親を呼んでるからな。」修学旅行の帰りの新幹線の中で、若い私は体育教師に呼び出されて、そう告げた。若い私は、とても憂鬱になった。新幹線は静岡駅に滑るように着いた。どうして嫌な待ち時間はすぐに過ぎてしまうのだろう。新幹線を降りて、二列に並んで歩いていると、父の姿が見えた。遠目で見ても、腕組みをして怒っているのがわかる。まさか父が来ると思わなかった若い私は、激しく動揺した。 父が出迎え、体育教師が父に何事かを説明している。父が体育教師と担任に頭を下げている。若い私は、激しく動揺して貧乏揺すりをするように身体を揺らしている。よく見ると、旅行中に悪さをした連中の親はだいたい呼び出されていた。生徒一行は駅で解散し、若い私はとぼとぼと父の後を歩き、父の車に乗り込んだ。