花は咲いて
さいて――。
その言葉の本当の意味を知れなかった。
「今日、どこに行く?」
都会の海風を受けながら隣を歩く麗華がそう尋ねた。
「そうだな……今日はのんびりしたいから公園で過ごそうか」
「……そうだね」
麗華が放つ一瞬の沈黙を否定と捉えたが意見を曲げるつもりがないので見逃すことにする。
麗華と付き合って一年が過ぎ色々なことがあった、初めは押しが強く付き合ってくれと見ず知らずの女の子にせがまれた時は困り果てたが今では立派な彼女として隣で支えてくれる存在だ。
「ねぇ、一年たったね?」
「ああ、楽しかったな」
「ふふっ、そうだね、"楽しかった"ね?」
そんな他愛もないが大事な日常を続けながら、公園へと歩を進める。
□ □ □
――公園に着いた。そこには綺麗な花が咲いていた、ここは思い出の場所、家族を失った、いや奪われた場所。
今でも脳裏にこびりつく血の錆びたような匂い、冷凍食品のように冷たくなる死体、心を染める合図のサイレン、全てが鮮明だ。
いよいよ決着がつく。ポケットに隠し持っていたナイフをバレないように取り出す。
「お前みたいに綺麗な花だな」
「そうだね……ねぇこの場所、覚えてる?」
「この場所……?」
「うん」
辺りを見回し、もう一度花壇の前に立つ。
「あっ! この場所子供の頃に事件を目撃した――」
「さいていな人間さん、じゃあね」
彼を殺した。あの時の復讐を果たした。刺したときの心が満たされるような高揚感、それと同時に彼がいなくなることの虚無感、色々な感情が混じる、彼は最後に何かを言いかけていたが、もはや確認する術はない、これであの時現場にいた人間、犯人に復讐したのだ。
さいて――この言葉の続きをきっと彼は知らない。




