閑話 『組織』の男・3
組織の再建を目指す男、ゼニーは護衛として与えられた騎士二人と共に森へと分け入っていた。
しばらく大人しくしていた結果、あの女騎士の襲撃はなく。もう動いても平気だなと判断したのだ。
「おっと、ゼニー様。しゃがんでください」
護衛騎士の声に従い、ゼニーは立ち止まって膝を地面に突いた。
騎士たちが顔を向けている方に視線を向けると――そこにいたのは何とも醜い魔物であった。
――オーク。
顔は豚に似ている。一見すると豚の頭に人間の身体を取り付けた感じであり、いかにも動きが鈍そうだ。
ただ、その身体は人間を大きく上回っており、たとえ少しばかり動きが鈍くともゼニーなど即座に潰されてしまうだろう。
「おっと、ゼニー殿。あまり顔を出さないように」
「オークは強力な魔物。俺たちだけでは逃げ切れないかもしれませんからね」
騎士が戦うのではなく、逃げることを選択する。しかも、逃げ切れる保証はないという。
それだけ強力な魔物なら、と、ゼニーは期待しながら『笛』を取り出した。
「ほぉ、それが例の笛ですか」
「どのように使うので?」
下手に出る騎士たちの態度に気をよくしたゼニーは簡単に説明してやることにする。
「なに、簡単です。自らの魔力を込めながらこの笛を吹くと、笛によって魔力が増強、拡大され、その魔力を持った人間の言うことを聞くようになるのです」
「ははぁ、」
「理屈はよく分かりませんが、凄い魔導具なのですなぁ」
よいしょ、よいしょとゼニーを持ち上げる騎士二人。そんな彼らに見せつけるようにしてゼニーは『笛』を吹いた。
何とも奇妙な、耳を押さえたくなるような甲高い音が森に響き渡る。
途端に脱力し、虚空を見つめ始めるオーク。それでも騎士たちは警戒するが……戦闘職でないゼニーは恐れることなくオークに近づいてく。
……側で見てみると、その巨体と肉の鎧がよく分かった。
理屈ではない。本能で『強い』と分かる。
――これなら、あの女にも勝てる。
そう確信したゼニーだった。




