勇者?
さーって、めでたくEランク冒険者になれたし、そろそろダンジョンに入れるのよね。知識はあるけど生身で潜るのは初めてなのでドキドキである。
なんでも活動拠点というものを買うために纏まったお金が必要なため、ダンジョンで荒稼ぎしたいのだとか。
パーティーメンバーで一つの屋敷を使うからには、男女が一つ屋根の下で暮らすことになるのだけど――まぁ、ニッツやガイル、フェイス君は変なことをしないでしょう。私に魅力がないわけではなく。私に魅力がないわけではなく。大事なことなので二回言いました。
ニッツたちはダンジョン探索に必要な消耗品を買いに行くとのことで、私は初回探索のお約束だという『今からダンジョンに入りますねー』という報告をするため冒険者ギルドを目指していた。なんか色々と注意点も教えてくれるみたい。
やっぱり冒険者と言えばダンジョン探索。なんかこう、お肉が上手く焼けるレアアイテムとか出ないかな?
ウキウキした気分で冒険者ギルドに入ると、この前ニッツたちに喧嘩を売ってきた二人組……スキンヘッド男と眼帯男が私に気づき、気安く片手を上げた。
「おう、セナ。史上最速での昇級だって? おめでとさん」
「抜かれないよう俺らも頑張らねぇとなぁ」
スキンヘッドの方がハーグス、眼帯の方がガータス。第一印象は最悪だったけど、なんやかんやで仲良くなった冒険者仲間だ。
この二人、どうやらライバルと目していた『暁の雷光』が怪しい女(つまりは私)に騙されたと思い、あんな絡み方をしてきたそうだ。ツンデレか。
ちなみにツンデレとはツーン・デレール女史が執筆した小説のヒロインが以下略。
ダンジョンに入る報告は急ぎというわけでもないので、ちょっと二人と雑談でもしましょうか。
「なにかいい依頼あった?」
「いや、あんまねぇなぁ」
「最近はゴブリンの調査ばっかりだ。そろそろこの辺のゴブリンは絶滅するんじゃないか?」
「あら、それだとゴブ肉が食べられなくなるわね。やはり養殖するしかないかしら?」
「養殖って……」
「セナならやりかねねぇよなぁ……」
冗談4割だというのにドン引きするハーグスとガータスだった。もちろん6割本気である。
「だが、ゴブリン討伐ばかりで他の魔物が増えてきているからな。ここらで調査も打ち切りだろう」
「そうなの? まぁ今日はダンジョンに潜る予定だから――」
「――はっ、素人がダンジョン? 身の程知らずだな」
と、背後からそんな蔑みの声が。なに? 私が冒険者ギルドに来ると絡まれるのがお約束なの?
ちらっとハーグスとガータスを見ると、二人はサッと視線を逸らしてしまった。罪悪感があるのか、あるいは巻き込まれるのを嫌ったか。
なんか面倒くさいなーっと考えながら振り返ると、そこにいたのは――ハーレム野郎だった。
キラキラしたイケメン。金色の髪に整った顔つき。線の細い身体からしていかにも『王子様』っぽい。いや本物の王太子殿下の方が百倍イケメンだけれどね。なんという残酷なイケメン格差であろうか。せっかくイケメンに産まれたというのに。
そんなイケメン(弱め)、両脇に女性を侍らせていた。一人は紫色の髪が特徴的な魔術師で、なにやら妖艶な雰囲気を漂わせている。あと胸部装甲が凄い。
もう一人はいかにも『妹!』って感じがする少女であり、この世界では珍しいツインテールが目を引く。こっちもなんだか魔術師っぽいわね。それと胸部装甲は薄め。
「……あいつらはBランクパーティ『栄光の勇者』だな」
「何日か前に長期探索から帰ってきたから、セナの強さを知らないんだろうな……」
と、小さな声でハーグスとガータスが耳打ちしてくれた。私の強さはギルドマスターとの腕試しで知れ渡ったはずなのだけど、その時にいなかったみたい。
私も小さな声で二人に質問する。
「え~っと、『栄光の勇者』ってことは、勇者なの?」
「違う違う。自分で勝手に名乗っているだけさ」
「普通は恥ずかしくて名乗れないんだがなぁ……。いや、あの男の名前は『ユー・シャー』だから、ある意味勇者だけどな」
自称勇者の、ユー・シャーさん? 何それ冗談……じゃ、ないっぽい。なんという勇者みたいな名前でしょう。
とはいえ、いくら名前が勇者っぽくても本物の勇者になれるわけではない。
勇者とはかつて魔王を討伐した英雄であり、現在では国王陛下に認められた者だけが正式な当代勇者となる。
さすがに勇者の自称は捕まると思うのだけど……。パーティ名だけならとお目こぼしされているのかしら?
あと、『普通は恥ずかしくて名乗れない』ということは、ユー・シャーさんは勇者を名乗れるほどの実力は持っていないらしい。




