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女騎士さん、冒険者になる。~今日も魔物の肉がうまい~  作者: 九條葉月


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残念美少女


 ミーシャが借りている部屋は、何というか、悲惨だった。

 いや、別に建物が古いとか、所々雨漏りしているとか、幽霊が出るとかいう話ではない。ただただ汚かったのだ。


 床の上には要るんだか要らないんだか分からない紙が散乱しているし、棚の中には分類もされずに本が突っ込まれ、棚に入りきらない本は床に積み上げられている。


 そして何より、埃。埃が凄かった。床の上にまでうっすらと積もっているし。机の上どころか羽根ペンの上まで埃まみれだ。


「なんという汚部屋ヒロイン」


「おへやひろいん?」


「ミーシャ! まずはお掃除よ! こんな部屋で寝られるか!」


「こんな部屋って……。どこに何があるか分かり易い、素晴らしい配置なんですよ?」


「はい出た! 部屋が汚い人のテンプレ言い訳! おかーさんそんな言い訳許しません!」


「お母さんって。そもそも、セナさんってお掃除できるんですか?」


「いくら公爵令嬢でも、騎士団にいたのだから掃除くらいできるわよ」


「いえ、性格的に」


「性格的に綺麗な部屋に住んでいそうだったミーシャにとやかく言われたくないわ! ちゃっちゃっとやっちゃうわよ!」


 私は空間収納(ストレージ)から『人形』を5体取り出した。幼い子供が持っていそうなデフォルメされたものだ。二頭身くらいの、目がボタンのやつ。


「さぁ! ゴーレム(・・・・)よ! この汚部屋を片付けるのだ!」


 私の号令に呼応して、人形がのそのそと立ち上がってお掃除を開始した。小さい身体で一生懸命に本を抱える姿は可愛らしいわね。


「……いやセナさん。なんでゴーレムを使役できるんですか? まさか魔術師かつ使役術士……? しかも小さいとはいえ5体同時に――あぁ! 駄目ですゴーレムさん! その書類は貴重なもので! あーその本は動かさないで! すぐ読もうと思っていたんです! あー!」


 汚部屋ヒロインの悲痛な悲鳴が部屋にこだまするのだった。是非も無し。





 部屋もあらかた片付いたところで。


「じゃあ、まずは自動展開の結界を教えましょうか。やっぱり自分の身を守るものから習得しないとね」


「はい! よろしくお願いします!」


 直立不動の態勢で敬礼をするミーシャだった。もしかして魔術師というか魔導師団って体育会系なの?


「とはいってもこれは経験というかコツを自分で掴まないとねー。というわけで今回用意したのはこちらです!」


 じゃじゃーん、っと私が取り出したのは小さな麻袋。中に入っているのは、大豆みたいな豆である。なんでも『醤油』の原材料なのだとか。


 ちなみに醤油とは東の国からもたらされた調味料でうんぬんかんぬん。


「ダ・イーズの実ですか。それを一体どうするのです?」


「この大豆を一粒とって、指で弾いてミーシャに当てます」


「……はい?」


「何回かやれば、危険を感じて身体が勝手に結界を展開するようになるでしょう」


「いやいや、どういう理屈ですか? 豆が当たったくらいで自動展開の結界を使えるようになれば苦労はしない――」


 ミーシャが疑わしげな様子だったので、実戦(・・)で試してみることにする。まずは大豆を指で弾いて、ミーシャを狙う。


 おっと。


 久しぶりだったせいか狙いがはずれて、壁に突き刺さって(・・・・・・・・)しまった。大豆が。


 大豆が直撃した壁からは仄かな煙が。


 ちょっと擦ったのか、ミーシャのサイドヘアから何本かの髪が切れ落ちている。


「まぁ、こんな感じで。何回か当たれば身の危険を感じてくれるでしょう。というわけで、やってみましょうか!」


「い、いやいやいや! なんでダ・イーズの実が壁にめり込むんですか!? どんな威力ですか!? そんなの当たったら死んじゃいますよ!?」


「死にはしないから問題なし! ちょっと穴が空くだけで!」


「大問題ですよ!?」


 ミーシャの絶叫が家中にこだました。


 やはり命の危機というのは秘められた力を発揮しやすいのか、ミーシャはすぐに自動展開のコツを掴んだようだった。


 その後、近隣住民から騒ぎすぎだと苦情が来たことは言うまでもない。



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