プロローグ
「どうしてこうなった」
ラノベの枕詞だとばかり思っていたけど、まさか自分がリアルで口にするとは思いもよらなかった。
期待に胸膨らむ高校ライフスタートの一週間前なのに。
学生寮ながら憧れの一人暮らしスタートの初日なのに。
牙城になるはずのワンルームが大量の血に染まっているんですけど?
夢の学園生活の拠点が一転、悪夢にうなされる殺人現場さながらになってるんですけど?
「捌けねーよこんな変化球!」
……いやいや焦るな、俺は悪くない。冷静になれ俺。
ここは落ち着いて状況を整理しようか。
荷ほどき前のダンボール箱に囲まれる中、恐る恐る視線を足元へ落とす。
まずね、フローリングの血だまりに横たわってるんですよ、美少女が。
ラノベならボーイミーツガールにうってつけなシチュだ。ただし、血まみれでなければ。
で、着ている服は防御できるのかも怪しい、ボディラインがある意味そのまま攻撃力に繋がりそうな姫騎士風ドレス(ちょいエロ)。
そして注目すべきは、ちょいエロドレスすら霞んでしまう彼女の頭なんですが。
彼女専用の剣が左側頭部から右へ余裕で貫通し、深々とイっちゃってるんですが。
「冷静ムリ! ほんと、どーしてこうなった!?」
処理能力がキャパオーバーした俺は、パニックが一周して思考が止まってしまう。
そのまま成すすべも無く天を仰ぐ俺の姿は『ショーシャンクの空に』のポスターを再現していることだろう。
思考停止から数秒。
「……けて」
どこからか蚊の鳴くような声がしてきた。
「……すけ……さい」
弱々しい力で掴まれる足首。
「……たすけて……ください」
そして俺の腰元にすがりつく血まみれ美少女。
「ぴやぁーーーーーーっ!」
自分でもビックリするほどのマヌケな悲鳴をあげ、そのまま意識を失ってしまった。