生まれ変わったら魔王になる悪役令嬢だった(4歳)
階段でつまづいて頭を打った瞬間、シンシアは思い出した。
ここが乙女ゲーム「闇と光の剣」の世界だということを。
「闇と光の剣」は、孤児であるヒロインにして主人公のソフィアが、ひょんなところから光の力に目覚めた結果、学園に通うことになり、その中で様々なキャラと交流を深め、真の力に目覚め、魔王を討つという話である。
前世であまり友達がいない高校生だった香苗にとって、乙女ゲームが唯一の楽しみだった。
特にソフィアが困難に立ち向かい、絆を紡ぎ、乗り越えていく様は、何度泣かされたことか。
大好きすぎて、何周もしたし、レベルカンストまでやり込んだし、全アイテム、武器、防具もコンプリートしたのだった。
その中で、最後のボスとなるのが、魔王シンシアである。侯爵令嬢として生まれた彼女は、傲慢な性格になり、学園で人気者となっていくソフィアに嫉妬し、魔法の実力でも負け、いじめも断罪され、ついには禁断の魔法により魔王と化してしまうのだった。
しかし魔王シンシアは、あまり鍛えていた描写がないこともあり、魔王として立ちはだかったものの
簡単に倒されてしまうことから、最後の四天王が実質のラストボス、魔王戦は単なるおまけなどと言われてしまっていたのだった。
香苗の記憶を思い出したシンシアだったが、メインの人格は変わらないままだった。
しかし一方で思うのだった。魔王シンシア弱くて情けない。そんな情けない人になるのは嫌だ!と。
「う〜ん、どうしよう・・。魔王になるのは仕方ないとしても、せっかくなら強いボスとして
立ち塞がりたいよね。
よし!大好きなソフィアがカッコよく魔王を倒せるように、最強の悪になろう!
えいえいっ!おー!」
魔王になるのを避けるということは、全く思いつかないシンシアであった。