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魔王軍幹部の弟子の使い走り  作者: あおいあお
第四章 神殺し編
98/183

98:大幹部会②



 一先ずサクッとアリシア様に魔王城へと送ってもらった。

 結界を無視する手並みは流石だ。


「んじゃ、すれ違いになるといけないし取り合えず行ってみよう」


 そのアリシア様の言葉で会議室へと向っていたのだが、幸いなのか途中で姐さんと鉢合わせた。

 廊下の先で手を振る姐さん。


「あの人?」


「そうですな」


「ふーん。強いね」


 アリシア様とそうやり取りする中、姐さんはニコニコでこっちへ来てたが二人の姿に一応は外向きの態度を取る。


「おはようございます」


「どうもね。アドラー君迎えに来た感じ?」


「まぁ、そんなところです」


 適当にやり取りする姐さんとアリシア様。


「じゃ、私たち行くから。またね」


「じゃーな」


「あ、はい。どうも」


 と、頭を下げつつ二人を見送る。


「アドラ、幹部会があるって分かって来たのよね? もう師匠は席に着いてるわよ」


「ありゃそうですか。じゃあ姐さんも居る事だし帰ろうかな」


「何言ってるの? せっかくだしあなたが出てよ。あなたの方が強いんだもん」


 急に何を言い出すんだこの人は。

 何を好き好んであの張りつめた空間に行かなきゃいけないんだ。


「あなたはこそこそ動いてるつもりだったみたいだけど、前回の事でアドラってバレた訳だし。顔合わせが目的なんだからあなたが行きなさい。師匠の為になるわよ」


「うっ。そう言われるとそうか……」


 アウラ様の評判が悪くなるくらいなら行くしかない。


「って言うか、あの人達誰?」


 と、二人の背中へ視線を向けて問う姐さん。


「ん? 大幹部のアリシア様と、その従者のスカーレットです」


「ぬえ!? ちょ、ちょっとそれ早く言ってよ!」


 姐さんは変な声を出して驚いている。

 そっか、面識はないのか。


「大丈夫ですよ。気さくな方なので」


「そ、そう? って言うかあなた、フレシア様と言い、いつの間にか知り合いになってるわね。ちょっと怖いんだけど」


 なんでだ。

 迷惑かけてないのに。

 かけて……いやかけちゃったか。フレシア様の我が儘に巻き込まれた身だった。


「おや? 呼んだか?」


 と、その女性の声にびくりと、あっしと姐さんは肩を跳ねる。


「久しいな。アドラー、アルラよ」


 恐る恐る振り返ると、案の定こちらに向うフレシア様が居た。

 その後ろにはグルーシーも居る。

 相変わらずの自信に溢れた姿勢と視線だ。


「お、ほほっ。お久しぶりでございますぅ」


「どうも」


 余所余所しさを隠しきれずに応える姐さんとあっし。


「なんだ。その態度は。私の前ではもうちょっと崩してもいいぞ?」


「そんな……恐れ多いですわ」


「つーかぶっちゃけ怖いっすわ。また無茶な戦い巻き込まれたくないんで」


 と、崩してもいいと言われたので、姐さんに代わって本音をぶちまけた。


「ははははっ! お前は偶にすごく正直だな。まぁ、そんなつれない事言うな。こうやって生きて会えてる事だしな」


 フレシア様は豪快に笑ってあっしら二人に肩を組んだ。

 そのまま左右から半目を送りつつ、三人並んで歩く。


「と言うか、何でお前等二人が居てその飼い主は居ないんだ?」


「「『アウラ様』な!?」」


「お、おう」


 と、グルーシーから尊敬に欠ける言葉が飛んで来たので、姐さんと揃って訂正する。


「って言うかそうよ。アドラってばどこ行ってたのよ? 黙って出て行く事ないじゃん」


「い、いやぁー。……すみません」


 あなたが怖くて逃げたんすよ。とは言えないしな。


「ああ。もしかしてお前等アウラを待ってたのか? それは悪い事をしたな」


 と、腕を解いてくれるフレシア様。


「いえ、師匠は先に行っててどっちが行こうかってなってて」


「ん? そうか。あの魔女は気配を隠すのが抜群に上手いな。……なんでお前等ニヤニヤしてんだ」


 アウラ様が褒められた気がして、姐さんと二人で頬が緩んでいた。

 アウラ様はフレシア様の気配感知も搔い潜った様だ。


「と、とにかくアドラお願い。正直今日調子悪いのよ。昨日何かがあった気はするんだけど、何故か思い出せなくって……ッ、思い出そうとすると頭痛いのよね」


「それは大変ですな。しっかり休まないと」


「うん。じゃあお願い」


 と言う事で、あっしが向かう事となった。

 ……正直憂鬱です。











「おっ。来たね~」


「なんだ。もう居たのか」


 会議室に入ると既に魔王様は席に着いてた。

 前回の面子を考えるに既に集まっていた様だ。

 やっべ。なんか嫌だな~。なんて思いつつ、そそくさとアウラ様の後ろへと控えた。

 一応時間前には来ているが。


「ん。アルラとはすれ違いになっちゃった?」


「いえ、あっしが行くことになりました」


「あらそう」


 と、こちらへ横顔を向けるアウラ様へと小声で応じた。


「よう! アドラー! 勇者と戦ったそうだな! 中々ガッツがあるじゃねーか!」


 うわぁ師範! そんな大声で言わないでください!


「そ、そうですかね? 何とか逃げた感じですけど」


 そう師範、“獅子師”リオウ様へと応じつつ、『今の発言って敵前逃亡として殺されちゃう?』と言う嫌すぎる考えが過った。


「強敵との戦いは学ぶことが多い。良い経験になったな!」


「は、はい」


 嫌な考えで普通の返事しかできなかったが、師匠の真っ直ぐな気持ちには何だか心が浄化される様だ。


「にしても今回は集まり良いんじゃない?」


「そうだね。喜ばしいよ」


 と、アリシア様の言葉に応じる魔王様だった。

 その言葉に改めて会議室を見る。

 魔王様を頂点として席に着く幹部と控える従者たち。

 序列一位、“巨神”ニグラトス。その後ろに控える将軍。

 序列二位は欠席。

 序列三位も欠席。だが今回も金髪碧眼の男は従者として居る。

 序列四位、二つ名はあるのか知らないが、アリシア様。その後ろのスカーレット。

 序列五位は欠席。だが今回もフードを被った顔色悪目の女性が従者として居る。

 序列六位、“六花竜”フレシア様。その後ろのグルーシー。

 序列七位はバラン様が討たれて空席のままだ。

 序列八位、“鬼武神”グラハス様。その後ろのグランド様。

 序列九位、“夜王”メラゾセフ様。その後ろの吸血鬼の男。

 序列十位は空席。

 序列十一位、“獅子師”リオウ様。その後ろの門弟と思われる男。

 序列十二位、“水銀の魔女”アウラ様。その後ろのあっし。

 更にはシュー様を始めとした三人の悪魔が給仕に徹する。


 こう見ると壮観だな。

 この面子が喧嘩すれば文字通りこの国は消し飛びそうだ。

 そう言えば昔、実際に大幹部同士の誰かが喧嘩して、この城が半壊したって話なら聞いた事があるな。

 真偽は不明だが。


「まぁ、そう堅くならなくていいよ。元々ただのお茶会なんだからさぁ。いつの間にか下手に開催できない大事になっちゃったけど」


 と、そう仰る魔王様。

 まぁ、そうだろうなとは、前回の経験含めて思っていた。

 あっしを含め、然程魔王軍に関わりが無くても参加できるこの幹部会。関わりと言うか、地位と言った方がいいか?

 スカーレットとかほぼ他人だろう。人間に味方してもあっしは驚かない。


 この幹部会で本当の機密情報が語られる事はないし、本当に大事な軍略の話し合いが行われる訳でもない。

 目的は顔合わせと、それによる個人主義な幹部連中との協調性を高める事と言った感じか。

 そして本当に魔王様の気紛れか。

 案外一番最後の理由かもな。


「世間話するのはいいが、一応呼んだ理由くらいはあるんだろう?」


「まぁね。どうやら神々が本腰入れて来るようだから、僕らも本腰入れようかって話だね」


「ほう」


 と、感心した様に呟くフレシア様。


「詳しい事はまだ分からないが、神界の連中が軍勢を率いてやって来るのは間違いないだろう。その時は全力で迎え撃つ事となるし、ウラノスが居たら僕も出る事だろう」


 ま、魔王様自ら……


「我々は互いに望んでいる。決着をつける事をね。人間社会にも何やら大きな動きがあった。ウラノスの蒔いた種が芽吹いた事だろう。これまでに無い大きな戦いとなる筈だ。神々が存亡を掛けた戦力を投入した時、その時は……君も出てくれるね?」


 と、魔王様の視線は序列三位の従者役の男へと向いた。


「……俺に言ってるのか?」


 暫し魔王様と見つめ合った間の後、その金髪碧眼の男は言った。


「君にも言っている。フルハよ」


「……分かった。元より勇者とは決着をつけるつもりだ」


「期待しているよ」


 と、にっこりと人好きのする笑みを向ける魔王様。


「さて、私は景気付けも含めて作戦名に拘る質でね。作戦とは呼べぬ大雑把なものではあるが、今回の神々に対する防衛戦に対しても、作戦名を発表しようと思う。皆が一度聞いただけで意図を理解し、鼓舞される。そんな名前をね……。作戦名は――」


 そして、魔王様は簡潔に言った。


「『神殺し(ゴッド・イーター)』とする」



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