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魔王軍幹部の弟子の使い走り  作者: あおいあお
第一章 王国滅亡編
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08:下位幹部会



 魔王城の中心部にある各要人達の事務室が集まる区間。その中の一室の前に、私は一人立っていた。

 私の師匠にして主、アウラ様を待つためだ。


 今日は大幹部の七位から十二位が集まる下位幹部会がある。

 俗世から離れ、時間に大変ルーズな師匠ではあるが、こういった集まりには意外とちゃんと顔を出すし、時間も守る。

 もっとも、時間寸前まで研究に夢中なのは想像に難く無いが。

 なので逐一懐中時計を確認しつつも、さほど遅刻の心配はしていなかった。


 私は何度目かも知れぬ身だしなみのチェックをする。

 いつもの濃い紫のローブとトレードマークの大きなトンガリ帽子。

 自慢の紫髪にも櫛を通したし。うん、バッチしね。


 と、扉の向こうで人の気配が発生する。

 私ですら今だに意識をしないと気づかない程に鮮やかな空間転移の魔法。

 基本魔王城への直接の空間転移は禁じられてるし、そもそも結界によりできない。

 が、そんな事は関係ないとでも言いたげに師匠は転移をやってのける。


 師匠の事務室には空間転移用の魔法陣が描かれ、常に転移で移動しやすい様にしているのだ。

 無論、師匠自身の結界をすり抜けてしまう技量があってこそだが。

 魔法陣そのものに結界をすり抜ける様な細工も師匠の技術を持ってすればできる様だが、敵に悪用されない様にそれはしないらしい。

 技術による通行証パスポートと言う訳だ。

 それもあってか魔王様も黙認している。

 そもそもそんな事をできてしまうのは魔王軍でも数える程だろうし、禁止されている理由も空間転移の気配だけでは敵襲との区別がつきづらいからだ。

 が、これをやってのける様な存在ならその存在感の大きさから誰かが分かってしまうので、結果的に魔王城への空間転移は許可された様なものなのである。

 ただし『出来る物ならな』と言う一文が加わる。


 師匠はただでさえ大幹部に数えられる実力がある上、空間魔法を得意とする。

 上位大幹部の方とお会いした事はないが、きっと師匠の空間魔法は魔王軍の中でも随一だ。

 ちなみにその眷属である私とアドラも魔力の影響を受けて空間魔法が上達している。

 魔女として弟子入りしている私はともかく、アドラまで空間魔法に目覚めているのは意味不明だ。ていうかズルい。くやしい。


 と、事務室の扉が開いて、私は頭を垂れた。


「おはようございます。師匠」


「ええ。おはよう。アルラ」


 落ち着いた、余裕のある声。妖艶な声音でありながら、よくよく聞けば若い女の声である。しかしその本質はワインの様に成熟された、深く味わい深い物。

 私を魅了してやまない声だ。


 私は顔を上げて師匠を視認した。

 私のより大きなトンガリ帽子。緩く着たのにしわ一つ無いローブ。両方濃い藍色の布地だ。

 透き通るような白い肌。背中まで流れる美しい銀髪。緩く波打つそれは何にも縛られる事なく、ありのままが美しいと言わんばかりである。

 そしてどこか眠たげでありながら、射抜く様なまっすぐな目。垂れ目なのに大きな目を飾る瞳は蒼玉サファイアの様な青色である。

 並んでみると背は意外と低く、しかしスタイルは良い、美しい女性。

 見た目は若い人間の女。私の隣に立ってどちらの年齢が上か聞いたら皆悩むだろう。

 だが感じる貫禄は並ではない。

 齢300を超える魔女。私の師匠にして、魔王軍大幹部の一人。

 序列十二位“水銀の魔女”アウラ様である。



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