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私は静かに暮らしたい  作者: あやぺん
本編

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42/43

その後の話

 謎の金平糖や蛇のご利益がインゲにあったのかは分からないけど、その話をするとなぜ自分には、自分の大切な人には何も起こらないとなることもあるだろうから、その話はしないようにしようとイオと決めた。

 元々、龍神王様は大陸中に行くから不在がちで、副神様達は好き嫌いが激しい存在。それに彼らは気まぐれだ。気に入って黄泉の国へ連れて行って一緒に暮らすこともあるので、善い人だから救われるというのは死後の話の時もある。

 私は今回の件で以前よりも信仰心を抱いたし、そもそも自然とそういう考え方をしていたんだなと自覚。

 イオは火消しとして働いてきて、たまに不思議なことがあるからぼんやりは信じているし、やはり自然と身についた価値観みたいなものがあるという。

 なので新居にはしっかり神棚を作ったというか、空き家に元々あった神棚を少し立派に改装してもらった。

 二人で決めた、イオ家家訓の一つは神棚をしっかり祀って手入れをして挨拶と感謝をすることである。


 祝言日に向けて他にも家訓を決めて、結婚契約書の内容も決めて、新居も決めて少々改装して引っ越し準備や足りない必要物集め——基本的に我が家のもので足りていて残りは中古や貰い物——と秋から新年までは、あっという間。

 年末役所が空いている最後の日に新年と同時に入籍という処理を終わらせて、年末は両家が新居に人が集まった状態で祝言日を迎えて、夜中に初詣へ行ってそのまま宴会。

 明け方には皆寝てて、男性陣は全員もれなく居間で転がってぎゅうぎゅう。ラオと息子三人は昼には起きて変則勤務なので昼過ぎから出勤して、イオは夜二十三時頃帰宅して明日に備えて爆睡。

 ちなみに私は緊張し過ぎてかえって眠くなり、我慢出来ずに母にイオを頼んで先に就寝。新婚初夜は元々一月二日と決めているから、元旦の夜に私の隣で寝たのは母だ。


 そうして迎えた一月二日、事前に打ち合わせの際に抵抗してみたけど、これは譲れないというのでこちらが譲った、火消しの伝統的な挙式が決行された。

 ハ組からハ組が管理する小神社へ挨拶へ行き、帰りはハ組担当地域を練り歩いてお酒や甘酒が振る舞われる。この火消し花嫁行列は知っていたけど、これで小祭りになって区民も楽しんでくれる訳だけど、暇なハ組の火消しはこぞって参加という大人数の行列なので恥ずかし過ぎる。

 その後は餅つき大会で、こちらも組の一部が区民も出入り自由領域と解放されて、事前許可制の便乗出店もきて小祭り騒ぎ。

 冬なのに上半身裸で盆踊りの場所、遊び喧嘩をして盛り上がっているところ、祝い酒だとお酒を撒きながら飲み会しているところ、子ども——見習いその他——は薄めの梅甘水撒きと飲み会とあちこち賑やか。私はイオと両親四人と共にそれらに挨拶回りをしてから餅つき大会を開催。

 私達を祝いに来た人達だけではなくて、単に賑やかで面白そうだから遊びに来た人達も出入りする。かつて親や友人とちょっと参加して楽しんだこういう小祭りの理由が、まさか火消しとは無縁だった自分になるとは人生は何があるか分からない。

 餅つきは新郎のイオとト班二人とガントとネビーが中心。五人が中心となって老若男女をどんどん参加させて餅つきをして、手伝ってくれる女性達がおもちをどんどん丸めて餅包みを作ってくれるので、新婦の私はお祝いに来てくれた人にどんどん配布という流れ。


 お餅包みのお餅の中身はあんこか何もなしなんだけど、たまにわさび入りが作られて私の補助についてくれているヤァドの妻リンに「この人はわの人」と指示される。わの人には、渡したらその場で食べてもらうように促すことになっている。

 見た瞬間、餌食になると思ったコンはやはりわの人で、彼はわさび入りのお餅を食べてむせまくった後に「イオ、お前は新婚早々俺に喧嘩を売るのか!」とイオ達に突撃して遊び喧嘩に発展。


「もっちつきは〜、とーん、とん、とんとんとん!」

「もっちつきは〜、とーん、とん、とんとんとん!」


 なんの喧嘩かと思ったら歌と決め姿勢が格好良い方が勝ちらしくて、審査員はその場にいる子ども達で挙手制みたい。私は席でお餅包みを配りながら、母やサエ、姉や義姉達とそれを笑い合って眺めた。


「もっちつきは〜、とーん、とん、とんとんとん!」


 見ていたら何故か他のト班もガントもネビーも参加して、ネビーが(きね)で抜刀と乱突きを披露して「兵官六番隊は格好よかだから皆目指せ!」と人気兵官の浮絵みたいな姿勢になったので男の子達は大盛り上がり。

 ネビーが囃し立てたので「兵官、兵官、兵官」と始まって、来てくれていた兵官も参加して、小祭り警備の兵官達も仕事をしつつ決め姿勢をして一番人気の勢い。


「おいこらネビー! ここは火消しの組なのに兵官で乗っ取ろうとするんじゃねぇ! 食らえ! 祝酒!」


 イオがお酒が入っているらしき水筒をネビーの頭から被せた。


「おい新郎! 祝酒を俺にもかけろ!」

「よっしゃあ! 食らえ、ガント!」

「大工連合を作るぞー! レンジはどこだ! 親方! 親方はどこですか! 大工も乗っ取りますよ!」とガントが大声を出したら大工集団が「景気づけのカンナ削り祭りだ!」とやってきた。


「メグさん、カンナ削り祭りってなんですか?」

「薄削り出来るか競うんですけど多分、一般区民、特に子どもに難しいだろうって体験してもらう方かと。大工は半見習いや成人弟子も募集しているんで宣伝です」


 私も参加してこようと、大工でありガントのお嫁さんのメグは行ってきますと賑やか集団に合流。

 餅つきは餅つきで続くけど地味にするようで新郎イオは賑やかな大工集団に呼ばれて担がれて、ヤァドとナックとネビーが地味に大人しくなって、ニコニコしながら餅つきを継続。

 兄と新兄がかなり酔っ払った状態で肩を組んで私のところへ来たか、またわさび餅。大笑いしながら怒った二人はイオに遊び喧嘩を売って、カンナ薄削り勝負をして、三人とも全然出来なくて爆笑が起こった。

 

(打ち合わせの時の餅つき、私は配る係ってだけだとこんな賑やかなのは想像出来ないよなぁ)


 私は賑やかで楽しそうなのを見るのは好きだけど、参加するのはわりと苦手だから今日は何をするのもこういう感じでイオは喧騒の中心で私は少し外側。

 この後は、予定通り二人で並んで食事をしながらお祝いを言いに来てくれる人達にお酒やお餅や梅甘水を振る舞い。親しい人達はこの時間に挨拶に来てくれる。


「ミユ、なんか顔色悪くない?」と行列以来に隣に来たイオに心配されて額に手を当てられた。


「ちょっと熱い気がする」

「風は冷たいけど天気が良いし、緊張とこの衣装と照れで熱いです」

「うーん。でもなんか青白いっていうか。頭は痛くない?」

「少し」

「他には何かある?」

「緊張で吐きそうです。吐かないけどむかむかしているというか、食欲が全然無いです」

「ここのところちょいちょいそうだよな。目がとろんってしているっていうか、ぼんやりして見える。休もうか。便乗小祭りだから俺らがいなくても皆ワイワイ騒ぐ」

「それなら少し休みたいです」

「親父の家が近いから、俺らに会ってお祝いしてくれる人はそこに来てくれでええか。休もう休もう。嫁は家宝だから体優先」


 そこへ食事が運ばれて来て、大好きな海老のお味噌汁の匂いがした瞬間、どうしようもなく気持ち悪くなって私は呻いて両手で口元を覆った。


「ミユ、ちょっと。見た目より悪いんじゃないか? 我慢し過ぎだ!」


 イオが桶に入っている餅包みをバッと出してここに吐けと差し出してくれて、体を支えて撫でてくれた。私は我慢出来ずに嘔吐。

 まずこの場で横になろうと言われて横になり、イオは病人の扱いにわりと慣れているから安心で、時間があったら来て下さいと入院していた時にお世話になった病院職員も来てくれていたから医者や薬師も飛んできてくれて更に安堵。

 着物や帯を緩めにしてもらって、症状を確認されて、触診されて、身近にこういう症状の人はいないか尋ねられたけど特にいないと回答。

 先月半ばから私はちょこちょここういう感じでイオや家族に心配をかけている。長引く風邪なのかと心配されてかなり気をつけて生活していたのに、昨日は元気だったのに、一生に一度の晴れ舞台の日にこうなるとは。


「ちなみに最後の月のものはいつですか?」

「……えっ? あっ。来てません。いつもは月半ばですが来ていないから十一月の半ばが最後です」


 ん? と私は心の中で首を傾げてイオを見上げた。この発想はなかったけど指摘されてみると……。彼はどう思うんのだろう。


「……先生、子どもの可能性もあるってことですか⁈ ありますね。ありますよ。聞いていたら可能性ありだから薬はなるべくやめておいて安静第一です。お腹が出てくるとか胎動が分かるか、月のものが来るまで薬は控えておく。そうなりますよね⁈」

「心当たりがあるのでしたら」


 人が集まっていて家族もいる中で、祝言日にこれはとんでもなく恥ずかしい事態。


「一回なんですが。先生、一回、しかも半分くらいなのにありますか?」

「半分ってなんですか?」

「途中までして、かわゆいし緊張し過ぎて使い物にならなくなって終わりました。大失敗です」


 そんな話、ここでしないでと私は顔を両手で隠して、声を出そうとしたけど恥ずかし過ぎて「やめて」という声は出ず。

 ちなみに私は慣れてて嫌とか怖いと思ったところから、イオが震えてこんなことになったのは初とか、着物を脱がせなくて小一時間とか、最後は今言った通り大失敗らしい事こそ「私はやっぱり特別。大好き」みたいな感想を抱いて彼への気持ちも密着度も増した。

 キスしまくりで盛り上がって、お互い好き過ぎてもうすぐ祝言だから初夜なんて別に早くて良いよね状態でそうなったらこんなことに。たった一回でしかも彼のいう通り半分までなのに。


「まあ、半分でも致したなら懐妊もあり得ます」

「……父親祭りだー! 俺の家宝が家宝を産むかもしれない! 帰って寝かせる! 違ったら蜜月がくるし、子どもが生まれても至福だからこの世の春の日に特大の春が来た!」

「孫はまだ居なかったのに、今年は一気に二人生まれる疑惑ってことか。連れ帰って寝かさないと。お前は嫁入り前の娘に何をしているんだ!」


 ラオが私を抱き上げた後にイオを蹴り飛ばした。


「痛い。祝言目前はもう嫁だ嫁! 嫁に手を出して何が悪い!」

「何が悪いって、出産前に遠出旅行。親孝行も兼ねてミユさんの親と四人で旅行っていうのが消えただろう! お前ら、理性無しになったイオの根性を叩き潰せ!」


 ラオの言う通り、今夜を待って今日から少しずつ練習なら旅行も楽しめたけどそれは消滅。

 嫁入り前に子どもが出来るなんて破廉恥(はれんち)だし捨てられるかもしれないから危ないみたいに思っていた自分が、好き過ぎるから良いと流されてこうなるとは。私は彼を信じていて既に祝言目前だったので後悔は特にないと思っていたけど、旅行の事は頭からすっぽり抜けていた。さようなら、温泉旅行。

 主にイオの友人達がイオを取り囲んで軽く、ふざけた感じで蹴ったり殴ったり。祝い蹴りや祝い突きなんて聞いたことがない。


「だから散々言うただろう! 一回で俺が生まれたんだから一回でも出来るって! 改めて証明するんじゃねぇ! もう禁欲は嫌だ。絶対早く成り上がって稼いで家を建てる!」

「うえっ。結構、酒が入っているから揺らすなネビー。お前だけ本気だろう。怒るなって」


 イオは馬乗りになったネビーに前後に揺らされて少し気持ち悪そう。


「我慢出来ないならそこらの女と結婚しろ。この女の敵!」

「そうだそうだ。イオに続いて結婚しろ。女の敵野郎!」

「俺の嫁はお嬢さんだからそこらの女と結婚するか! 女の敵はお前らだろう!」

「高望み野郎は一生未使用だから相応な相手を望んで結婚しろや! 女の敵!」

「うるせぇ! 七十年くらい生きるから人生の半分以上しまくりだ! 誰が一生未使用だ!」

「イオにあやかって理性をなくして誰かとこさえて結婚しろや!」


 最初に会った時は良家の子息だと思ったネビーは知れば知る程イオ達の仲間である。


「ネビーさん落ち着いて下さい」と止めに入ったロイは逆に本物卿家の息子で相変わらず上品なのでそのままでいてもらいたい。イオに好影響なのでどんどん彼とイオが親しくなりますように。


「ロイさん離せ! ガイさんにビシバシ鍛えて仕事をガンガン回してちび皇女様とお見合いって頼んで下さい!」

「ちび皇女様ってお嫁さんはお嬢さんって、華族のお嬢様狙いじゃねぇか! この高望み!」

「ネビーよりもイオだイオ! 祝言日に祝い事が倍とはめでたすぎる! 祝え祝え!」


 ラオに「息子はあのまま少し祝わってもらいましょう」と告げられて、ラオ家に運ばれて、母と姉、義理姉二人に手伝ってもらって楽な格好になり居間で布団の上に座った。

 懐妊疑惑の話を聞いていない人には緊張で疲れて、来てくれてありがとうございますと告げて、家族に動いてもらって、少し遅れてきたイオに身の回りの世話をされたり体調を気にかけられながらお祝いに来てくれる人達にご挨拶やお礼。


 挨拶と挨拶の合間、家族も居間にいない時にイオに後ろから抱きしめられて頬や首、口にもキスされてニコニコしながらこう告げられた。


「いやぁ、いきなり禁欲生活で楽しめないのは悲しいけどこれで一生お父さんとお母さんだから、離縁されても付きまとえる。何回でも口説いて再婚だ」

「ちょっと、浮気して離縁される気なんですか?」

「しないって。浮気は切腹って書いただろう。ミユは慰謝料と離縁だけど。もしもの話」

「お互い、相手が傷付かなくてそれを要求しなかったらお咎めなしやもっと軽い罰ですけどね」

「嫌だぁ。そんな冷めた夫婦にはなりたくない。一生べたべたする。親父みたいにサエさん、サエさん、サエさんみたいに俺もミユ、ミユさん、ミユちゃんって言い続ける。ジジイもそうだったし兄貴も裏ではそうっぽいから安心して! 心配なのはミユの方だけど、そこはまあそこそこ押しに弱いミユを押し続けるから大丈夫」


 お腹を撫で撫でされて「息子、息子、息子」と言われた。


「娘は嫌なんですか?」

「いや。次に言おうとした。どっちでもかわゆい。娘、娘、娘。ミユ、好きだ。好き過ぎる。大好きでも足りない。あいし……いたけ。しいたけ。しいたけのけ。次はミユの番」


 自分達に夢中で次のお客が来て声を掛けたことに気がついていなくて、私はイオが言いそうだった愛してるを聞きそびれた。前回は「あ……い……言えるかぁ! 大好きの百倍だ」だったから期待大だったので残念。

 お客はインゲ達とチエとスズで部屋に入ったものの戸惑って立ち尽くしている。


「け、は毛虫……」

「しじみ。みはミユ。そのー、あはは。ミユは緊張その他で具合が悪めだからちょっと支えていました」


 恥ずかしいから離れて下さいと言う前にイオは緩めの支えみたいな抱きしめに変更してくれた。

 ニヤニヤ笑うチエとスズに最初に挨拶をされたので、二人にこの縁結びでお世話になっているからお礼品を渡して話があるからと近くで待ってもらう。

 今度はインゲ達と挨拶。私が疲れと緊張で少し具合を悪くしたと聞いたから親達も合わせて全員でどんどん挨拶はやめて、三人だけにしてくれたとチエが教えてくれた。

 インゲ達は私がイオにどんどん惚れていく理由だから「三人は私達の縁結びの副神様です」とお礼品を贈る。お礼品は三人お揃いの筆で、縁結びの副神様の遣いである兎とそれぞれの名前をチエの父に彫ってもらったもの。


 この後、私はイオに退席してもらって彼にはインゲ達と外で遊んでもらい、チエとスズに妊娠疑惑を報告。

 一回、半分までしたことは恥ずかしいけどイオが好き過ぎて惚気たから二人共知っている。厳つい兵官と結納間近、クルスの家の奉公人の絵師と結納間近という二人が恋人ってどんな感じですか? と興味津々であれこれ質問してくるのもあって照れるけど結構話し済み。


「違うかもしれませんがそうかもしれません。遠出旅行が消えてしまいましたので、二人も気をつけた方が良いです。一回だけでも、というのは私だけではないみたいです」

「一回でもなんて初めて知りました。中々授からない夫婦の話の方をよく聞くけど逆もあるんですね。気をつけます」

「……」

「チエさん?」

「……次はしません。その、つい」

「つい? ミユさんはまあ祝言目前でしたから分かるけどチエさんは結納前なのに?」

「おそ、襲ったようなものです。き、までと思ったらすとき過ぎて。離れるのはやだ、やだと言うて……」

「あー、まあ、明日結納だからええのでは?」

「結納すると決まったら、こう、盛り上がってつい……」

「最後までしました?」

「はい。でも今、その、月のもの中です」

「最後までしたのに何もないチエさんと半分なのに懐妊疑惑。んー、ミユさんは違うかもしれませんね」

「そうですね。一年、二年と兆しがなくてがっかりな夫婦とかそういう話の方しか私も知りません」


 しかし、私は九月に男の子を出産。二年半後にまた男の子を出産。

 子どもは八才を迎えるまで育たないことは多々あるから油断大敵だけど、長男は間も無く半元服の半分を迎える。

 我が家にはイオを慕う男の子が訪れてイオと息子達と遊んでくれるので畳がボロボロになるから家の大半は板間になり、破られまくりなので障子や襖はなるべく取っ払って、一階は二間から一間へ変更。

 机もひっくり返すことが多いから、蓋付き囲炉裏に机をくっつけて掘り椅子というラオ家と似たような家になった。

 安心なのはインゲ達で三人ともうんと勉強して、現在区立中等校へ通っているのもあって、勉強面や教養面などあれこれ息子達の手本になってくれそう。

 泥遊びで元気に育て、と昨日イオと息子二人が河原で泥だらけになったので今日の洗濯物は大変。

 次男を抱っこしたイオと長男が歌いながら踏み洗いをして、ただの家事なのにとても楽しそう。


「空が青くて気分良し〜」

「さあ、よい、よい、よい!」と長男は手振りつき。

「よー、よー、やー」と次男は抱っこで揺られて歌も楽しいのか歌に合わせてイオの胸元を叩いている。


「悩みがないから気分良し〜」

「さあ、よい、よい、よい!」

「やあ、やあ、やあー」

「ハ組が解決火消しを呼べよ!」

「ハ組のテオとは俺のことだぁ!」

「だあ! あー!」

「おい、テオ。しっかり洗え! 水かけは後だ後! ナオは落ちるからそんなにやたら動くな」

「おやじ、今日も川に行きたい」

「おやじじゃなくてお父さんって呼びなさい。仕事に行く前に寝るから少しだけだぞ」

「いやったぁ!」

「勉強もしろよ。イオ家家訓、勉強しないものは遊ぶべからずだ」


 この家訓は卿家ルーベル家から横領した。優しい火消しになって欲しいけど、知的で上品に育って欲しいから高望みして上級公務員家系の教育も参考にしている。ただ、直しても、教えても、周りが火消しの子ばかりなので中々難しい。環境って大切。代わりに息子は真っ直ぐ、親切で明るく育っている。


「勉強きらーい」

「なら川遊びは無し」

「えー!」

「火消しの本を読むのでもよかだけど続きは読みたくないのか? 勉強したくないって俺と一緒にご先祖様の話を読みたくないのか?」

「読みたい! 読む! 一緒に読む! 火車組のテオとは俺のことだぁ!」


 男の子は母親に似るっていうのに長男の顔はちびイオだし性格もちびイオ。イオの親が小さい頃のイオにそっくりだと良く言う。

 今の私の目標は息子二人をイオのように育てつつ、女関係は硬派にすること。

 それからイオと老夫婦になって、縁側で二人で整えた庭を見ながら静かに穏やかにお茶を飲むこと。その間は多少静かではない日々が続くけど、最後は静かに暮らすので問題なし!

このお話にお付き合いいただきありがとうございました。毎回上手く書けませんが完結させるのが目標なので終わらせられて良かったです。

☆〜☆☆☆☆☆で評価、一言でも感想をいただけるととても励みになります。


本作は派生作品なので、イオがミユについて話してトランプを借りる話はお見合い結婚しましたの「幼馴染1〜3」

インゲ、ニムラ、クルスの元服間近は「お見合い結婚しました」の「特別番外良縁物語」で出てきます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 出会いでこんなに人は変わる!!! [一言] なんとおめでた婚!イオやるなァ! ミユちゃんが素敵な女の子で、読んでて楽しかったです。火消しの一族の嫁入り大変そうですが、幸せそうでなによりです…
[良い点] このシリーズ毎度面白過ぎて最高です! 今回のお話も大好きです!イオの必死さとまさかの天然っぽいとこ、ミユのツンと天邪鬼になっちゃうとこかわいかったです! 更新あると嬉しくてテンション上がっ…
[良い点] 完結おめでとうございます! 最初は印象最悪すぎて大丈夫??と思ったイオですが、やはりネビーの親友。 人柄よしで、唯一星の隣をゲットしましたね! インゲのあたりは、本編を読んでいて、未来のこ…
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