3人の妃
正妃である私の母、マチルダはヴァレリー公爵令嬢でした。
ヴァレリー家は数代前に王女様が嫁いだ家柄なので、魔力は国でも1、2の強さを誇り、もっとも王族に近いと言われる家系です。
お母様の魔力は水と雷の属性を得意としていて、魔力量も多かったようです。
そして王族以外ではなかなかいない聖光魔法が少し使える人だった事が正妃選びの決め手となったようです。
その上お父様とは幼い頃から将来を誓い合った仲だったらしいの。
二人の間では必然な結果だけど、周りを納得させるためにお父様は根回しに走り、お母様は王妃教育を頑張ったとか。
そして貴族議会の長老たちを満場一致で賛成させる程の完璧な状態を作り出したのです。
さすが私の両親! 素敵です。
にもかかわらずこの事実を知ったイザベラ様は怒り狂い、あろうことか、お母様のお披露目パーティーで大騒ぎして、王様にも直談判しようとしたのです。
王様に対しての不敬罪に問われそうな愚行な行為なのに、イザベラ様は頭にきすぎて我を忘れておいでだったとか…
文官や騎士たちが必死に止めて、会場から連れ出し事なきを得たらしいですが、貴族の令嬢があり得ません。
ただその騒ぎをみていた1人の侯爵がイザベラさまを養女にされたのです。
ゲンドリオ侯爵はとても欲深で、野心家な方です。
イザベラさまが自分のためのいい傀儡となると目論んだのでしょうね。
侯爵はずる賢い方でしたので、イザベラ様を上手く操りはじめました。
パーティーの1件以来イザベラ様は表立っては大人しくなり、側妃になるべく努力をしているふりはしていたようですが、1番頑張っていたのはその他の側妃候補を蹴落とす事でしょうか。
これに関しては侯爵も手を貸していたのでしょうね。
それでなければ裏でこっそり嫌がらせをしたり、追い込んだりなど、イザベラ様には無理です。すぐにボロがでますもの。
婚約から半年後王太子と王太子妃の結婚式が行われ、すぐに懐妊したお母様は第1王子である、お兄様を生みました。
その一年後、側妃選びも最終段階に。
この時候補は3人に絞られていました。
フォルト侯爵家のナタリー様、キャンベル伯爵家のエミリア様、そしてゲンドリオ侯爵家のイザベラ様です。
この時、ゲンドリオ侯爵は貴族会に根回しに走り回っていたみたいですが、ご本人のイザベラ様の印象の悪さで、上手くいかなかったようです。
結局、側妃に決まったのはナタリー様でした。
ナタリー様は土属性の魔法を得意としていて、侯爵家の領地ではナタリー様の魔法を使いとても肥沃な土地をお作りになり、作物の収穫は他の地域の3倍近かったとか…火属性も少し持っていて、土と火で、普通より強度の強いレンガをお作りになったり、素敵な焼物をお作りになったり、才能豊かな方です。
その上性格もとてもお優しく、まさに大地の女神のような。
正妃であるお母様との関係も良好で、共にお父様を支えていこうと言っていましたね。
側妃の場合は盛大な結婚式は行いませんが、お披露目式とパーティーはするのです。
そこでも、イザベラ様は荒れまくり、ナタリー様本人にさんざん悪態をつき会場から連れ出されたとか…
本当に懲りない方です。
ここまでしても、まだ無事に済んでいたのは、この国があの方の魔法の力を惜しんでいた事も関係あったんでしょうね。