娘の危機
私は傍観者のように、親子のやり取りを聞いていると
「何の騒ぎだ!」
そこにはお父様と後ろにお兄様そしてエマリアが息を切らしながら従っていた。
きっとイザベラ様が現れたのを見て直ぐにお兄様を呼びに行ってくれたのだろう。
でも、まさかお父様までいらっしゃるなんて…。
「イザベラ、エドワードこんな所で何を騒いでいる」
「父上、私とシルビアがここで話をしていると、いきなり母上がやって来てシルビアを叩いたのです」
「エドワード! 母の事を陛下に告げ口などしないで!」
イザベラ様は真っ青な顔をして叫びます。
「私は本当の事を父上に言っているだけです」
お父様はチラッと私を見ました。
本当か?と聞かれているようです。
一応、頷きました。
お父様も頷き返します。
わかった、とでも言っているのでしょうか…。
まあお父様が来てくれれば、この場も収まるでしょう。
後は本当の傍観者ですね。
「イザベラ 我が娘であるシルビアに手を上げた事、間違いないか?」
「そ、それは…
だってシルビアがエドワードを唆して…」
「どういう事か?」
「母上はシルビアが俺を唆して結婚しようとしていると思っているようです。
オレは父上と話をした後、もうその事は諦め、今はそんな気もありません。
でも母上はシルビアとオレが一緒にいたから、その話を蒸し返してきて」
へー諦めた?
って言うよりそんな事忘れていたのでは?
今は、セシル様で頭がいっぱいだもんね。
「イザベラにも言っておく。
私は兄妹同士での婚姻は認めない。
従ってエドワードとシルビアが一緒になる事はない。
それにシルビアにその気はない。
よく考えて見ろ!
お前に散々嫌みを言われ、エドワードにもきつく当たられて、そんな相手と結婚したい訳がなかろう」
「だって、だって2人でこんな所でこそこそと」
お父様がまた私を見ます。
「こそこそなどしていません。
エドワードお兄様に聞きたいことがあると言われて、ここで座って話をしていただけですし、直ぐそこにルイスたちも控えていました」
皆が一斉にイザベラ様を見ます。
ルイスやエマリアは咎めるような不満気な顔をしています。
「イザベラ、シルビアに手を上げた事については、後で沙汰を下す。
当分部屋で謹慎しておれ!」
「くっ!」
イザベラ様は苦しそうな顔をしながらも、頭をさげて戻って行った。
「シルビア すまなかった。
話をしてくれてありがとう」
そう言ってエドワードも行ってしまった。
「大丈夫か? シルビア」
フレデリックお兄様が肩に手を置いて顔を見ています
そして頬を触られました。
ああ、叩かれたからか…。
「お兄様、大丈夫です。
魔法が間に合いました」
そうこっそりお兄様にだけ聞こえる小さな声で答えた。
「そうか」
お兄様は頷いて、納得しました。
「お父様も来てくれてありがとうございます」
「ちょうどフレデリックの所にいたのだよ。
娘の危機に駆けつけられて嬉しかった」
そんな事を言われた。
娘の危機か…。




