エドワード視点
「セシル・ヴァレリー…」
「え? 何かおっしゃいましたか?エドワード様」
侍従が振り返って言った。
「いや、何でもない」
侍従はエドワードの言葉を聞いて、肩を竦めて出ていった。
はぁー
あの日たまたま庭園を通りかかった時に、横から必死の様子で出てきた令嬢がいた。
ぶつかる事はなかったが、驚いてよろめいていた。
びっくりしながら、あたふたと謝られた。
クリクリとした青い瞳で、見つめられて、なぜか顔が赤くなるのを感じた。
話を聞いてみると、お茶会の後、数人の令嬢に絡まれて逃げて来たそうだ。
可愛い顔をしてるから妬まれたのかもしれない。
その上闇雲に逃げてきたから、道が分からないと不安げに言う令嬢が可憐だった。
仕方ないから、出口まで案内する。
とても感謝されて、笑顔でお礼を言われた。
その笑顔がなんだか、忘れられなくなった。
部屋に帰る時、庭園を通って行くと先程一緒にいた辺りに何か落ちていた。
拾ってみるとブレスレットだった。
きっと彼女の物だろう、次に会うことがあったら、渡してやろう。
そう思って、持っていたハンカチにくるんで、ポケットに入れた。
次の日から気がつくと庭園に足を向けていた。
お茶会に来たと言っていたから、そんなに頻ぱんには王城には来ないかもしれない。
でも、毎日庭園に来て、コスモスの真ん中にあるベンチで待っているのが日課になってしまった。
ある日シルビアに会った。
いつもなら何か小言の1つでも言ってやるがそんな気分にはなれなかった。
その後も毎日庭園に向かった。
あの日も昼過ぎにいつものように庭園に向かったんだ。
そしたら、彼女が立っていた
思わず声を掛けると、向こうも驚いたような顔をしたが、すぐにこの前のお礼を言われた。
そして、オレは持っていたブレスレットを渡した。
彼女はとても喜んでくれて、またお礼を言われた。
オレは彼女の笑顔がまた見れたことで胸が一杯になってしまった。
自己紹介もされて、セシルという名前もわかった。
やっとブレスレットも渡せた。
もう庭園に行く必要もない。
だけど、気がつくと庭園に足が向いてしまっていた。




