さあ、本番です
「あなた大丈夫?」
セシル様を気遣って話しかけるアリシア様。
「は、はい ありがとうございました。いきなりの事で何が起こったのか分からなくて…」
「あの方は自分より家格の下の令嬢には容赦のない人だから、気をつけて。
あまり1人にならないように他の方の近くにいるようになさいな」
「人のいるところですか…」
「そう、周りに人がいないところを狙われると今みたいに防音膜を張られて助けが呼べなくなるわよ。
あれは、中の音が漏れないように閉じ込め外からは入れなくするの」
「え? で、でもさっき…」
「ああ、わたくし?
なぜかレオノーラ様の魔法と相性がいいのか、あの方の防音膜はわたくしには効かないのよ」
そう言ってちょっと笑った。
へえ~それは初耳だったわ。
まあ私にも効いてないけどね。
ここまでの話は、アリシアに付いていた侍女3からの通信で聞いてました。
なぜなら、ミルビアとしての私は今、レオノーラ様の前にいるからです。
さっきアリシア様が現れた後、場所を移動して、レオノーラ様を待ち伏せしました。
そして先程のいざこざとの違いは周りに令嬢たちがこっちを見ている事なんですけど、レオノーラ様は気付いてないです。
レオノーラ様は周りの事は気にせず私に問い質してきます。
「あなたこの私に気軽に声をかけるなんて、どういうおつもり?」
レオノーラ様は私が子爵令嬢だと信じているので、わざと軽い感じで声をかけたミルビアに気分を害したようです。
「そんな、声をかけただけよ?」
「ふん、子爵令嬢のくせに!
私を誰だと思っているの?
それに、なぜこのお茶会にあなたごときが参加してるの?」
「さあ、言ってごらん。
子爵令嬢なんて身分のくせに、なぜこのお茶会に参加出来てるの?
あなたが魔力が強いなんて嘘でしょう?
3属性も使えると言うのだってありえないもの」
「確かに属性はありますよ」
「ふん!いくら属性が多くても、どうせ、平民程度の魔力しかないんでしょ?」
「そんな!ひどいです!」
私は泣いて崩れるように項垂れます。
そこへ…
「一体何の騒ぎ? レオノーラ様。
妹に何をしているの?」
ローザリアお姉様の声が響きました。
「え? 王女殿下!
なぜここへ入れたんですか?」
あ、さっき聞いてた防音膜ですか?
もう私が消しちゃってますよ。
そして逆によく声が聞こえるように拡張魔法を使いました。
なので、今の話は周りにいるご令嬢たちにしっかり聞こえてます。
「わ、私はただこの子爵令嬢に己の立場を分からせていただけですわ」
そう言ってレオノーラ様は言い訳を始めます。
「子爵? 何を言ってるの?
シルビアは王女よ?」
「え? 殿下こそ何を…」
レオノーラの前でうつ向いていた金髪の女が顔を上げる。
いつの間にか栗毛色の髪と紫水晶のような瞳のシルビア王女殿下が目の前に現れた。
「え? シルビア様… うそ!だって今そこにいたのは…」
と思ったら、
いきなり周りがざわざわ聞こえてきた。
「え? いつのまに…」
気がついたら、いきなり周りに人がいっぱいいる。
「なんてこと、よりによってシルビア様に向かって平民程度の魔力などとひどいことを」
「いくら妃候補と言っても所詮侯爵令嬢の分際で王女殿下に暴言をはくなんて」
「信じられませんわ、何様のつもりかしら」
そんな言葉が聞こえ始めました。
「ちがっ! 私はミルビアって子爵令嬢に言ったのよ!」
「そんな令嬢どこにいるの?
あなたの目の前にいるのは私の妹シルビアよ!」
レオノーラ様は混乱していますね。
「レオノーラ様、あなたはなんて事を…」
そう呟いて現れたのはアリシア様とセシル様だった。
さて、もう一幕いきますよ。




