前哨戦
レオノーラ様がじっとこっちを見ている。
何かすっごく、睨まれてますね。
どっちからちょっかいを出す気ですかね?
それとも2人まとめてかしら?
なぜレオノーラ様が私たちを気にするかと言うと私が彼女の侍女にあえて聞かせた噂のせいです。
彼女の侍女が休憩している所で聞こえるように『新しい候補者が見つかったようだ、しかも魔力も強い』等々
とっても気になるような事を流してみたのです。
それをすっかり真に受けたレオノーラ様がセシルとミルビア(シルビア)を調べまくったのです。
でもレオノーラ様が調べたものは、わざわざ私が用意したニセの情報なんですけどね。
そもそも子爵令嬢のミルビアは存在しない訳だし…
「セシル様、ちょっと失礼しますねお花積み(トイレ)に行ってきます」
私はあえて離れてみた。
さあどっちに来るかな?
後ろをチラっと見るとセシル様へと向かっていくレオノーラ様が目に入りました。
私は隠れてハイドン(隠れる)をかけて、花壇の裏からもとの場所へ戻りました。
「失礼、セシルと言うのはあなたの事かしら?」
「は、はい」
いきなり現れたレオノーラ様に呼び捨てにされて、セシル様は面食らったようです。
「あなた2属性を扱うってほんとうなの?」
「あ、あの…」
「風と水だったかしら?手のひらに水を、貯められる程度で2属性とか言ってる訳ではないわよね?」
「…いえ…」
「ハッキリおっしゃって!どうなの?あなたの魔力量は?」
レオノーラ様の勢いに押されセシル様は固まってしまってます。
うーんどうしようかな?
私が出ていくと、後の仕掛けが困る…
「何を黙ってるの!この私が聞いてるのよ!早く答えなさいよ!」
どんどん大きな声で威嚇し始めるレオノーラ様。
そのとき…。
「お止めください!そのように威圧されては、話も出来ませんわよ」
いきなり声がした。
見るとアリシア様が立っていた。
今日のアリシア様はいつものように侍女の後ろに隠れていない。
固い表情だけど、意を決したような態度でレオノーラ様に意見してる!
よく問題をおこすとか、わがまま言う等の噂は真っ赤な嘘で、いつも侍女の後ろに隠れるように立っていて自分で意見をあまり言わない。
それが本当のアリシア様だった。
それが今、レオノーラ様を、窘めてる!
わぁお!
「あら、誰かと思ったら、意気地無しの引っ込み令嬢じゃありませんこと?」
「オルコット侯爵令嬢誰に物を言っているのです?」
レオノーラ様が一瞬怯んだ。
「な、なにを…」
「わたくしは、ブライトマン公爵家のアリシアですのよ?
誰に向かっておっしゃってるの?
レオノーラ!」
「なっ!私たちは同じ王妃候補…上下関係など関係ありませんでしょ?」
「それは、王妃候補での講習や審査期間中の話ですわ
今日は社交の場。
純然たる貴族間の格差が物を言う場ですわ!」
「くっ!私は何もしておりません。失礼しますわ!」
レオノーラ様は慌てて逃げていった。
すごい!
あのアリシア様があんなに毅然とした態度を取るなんて!
ちょっと感動。
アリシア様にあの話をリークしておいてよかったわ




