逃げる
とりあえず、精霊を探してみようかな?
と言っても王城の中だけなのだけれど。
でも、もしここで精霊を見つけられたら、可能性がまた上がる。
どうするか、考えてみよう。
◇◇◇◇◇
次の日、私は庭園にいた。
花を眺める振りをして、周りにむかってサーチ(探索)の魔法をかけてみた。
そして魔法を知られにくくするようにハイド(隠す)を上からかける。
初めてやるから、上手くいってるかは、分からないんだけれど。
そしてのんびり散歩しているように、ゆっくりゆっくり歩いていく。
うーん見付かるのは、侍女の逢い引きとか、下僕がサボってるのとか、食堂の下働きのつまみ食いとか…。
みんな王宮の庭園が広いからって、隠れて何やってるの!
なんだか空しくなってきました。
ガゼボのベンチでひと休みする事にする。
「シルビア様、お茶をお飲みになりますか?」
「うん。少し疲れたから、ゆっくり休む」
「畏まりました」
「お菓子と果実水は用意して参りましたが、それではお茶ももらってきます。
ここからなら、調理場が近いですし」
「うん、ありがとう」
私は果実水をもらいながら、答えた。
少しして、何か騒がしくなってきた、サーチ(探索)で覗き見ればさっきの侍女がもめていた。逢い引き相手は訳ありだったみたい。
「何かあったのかしら?ルイス見てきて。
護衛はケインが、いるから大丈夫よ」
何も知らないふりして護衛を遠ざける事を試みる
「分かりました」
ルイスがいなくなって少しすると、何処からともなく大声が聞こえた。
「ずいぶんといい身分だな!」
出た!
何で行くとこ行くとこ現れるんだろ?
もしかしてわざと狙ってるの?
こいつが現れないのって図書室ぐらいだ。
だって騒ぐと怒られるからね。
でも、いい身分って… 王女なんだから当たり前じゃない。
こう言う時に喧嘩を売る言葉のチョイスとしてはどうなのよ。
やっぱりバカだな。
「こんなとこで呑気に何してるんだ!」
エドワードがこっちにやってこようとした。
それをケインが無言で立ち塞がる。
「どけ!」
「殿下、もう少しお静かに。
シルビア様が驚かれます。」
「うるさい!」
二人がやりあっているうちに、私は走り出す。
庭園のアーチを曲がり、自分にハイドン(隠れる)をかけて見えなくした。
そこから、ゆっくり裏の石畳の通路に足を踏み入れる。
「待て!」
「シルビア様!」
私が隠れた後、やっと気づいたらしい二人が追ってきた。
今日に限ってはエドワードに感謝だった。
下手に私が1人で逃げちゃうと護衛の2人が怒られる。
でも、今日のはエドワードが悪いし不可抗力だよね。
後でみつかっても、エドワードが怖くて逃げた事にするし。
私は通路を足早に進み、庭園の反対側に来ていた。
こっちには小さな林や花園が広がっている。
ここでまたサーチ(探索)を使ってみる。
うーん、気になるのは虫とか、リスなんかの小さな生物ばっかりか。




