はぐれ精霊
「確かに、お姉様が言いたいことは分かりました。
でも、この国には、精霊はいないですよね?
フィリオ国との境には結界があるわけだし…」
「イザベラ様はフィリオ国へ行かれたこともないはずですよね?」
「結界は10年毎に境界の隙間や歪みが現れることがあるのよ。
それをお互いの国で補強をしているの。
だから、極々希にそのタイミングで精霊がこの国に迷い込んで来るかもしれないって。
そう言う精霊は国の外れで隠れている可能性があるみたいなの」
フィリオ国のある南側はいくつかの領が国境と隣接している。
そして、ゲンドリオ侯爵領もそのひとつだった。
可能性は低いけれど、もし闇の精霊がこの国に迷い込み、イザベラ様と出会ったとしたら。
「お姉様、可能性が出てきました」
ローゼリアも頷きながら言った。
「私もそう思う。この後お兄様のところへ報告に行くわ。さっきお兄様ったら執務室にいなかったのよ」
そう言ってお姉様は帰って行きました。
私は、一筋の光が見えたきがして、可能性を増やすための気力が湧いてきました。
もう一度集中してお兄様の本を読み返します。
このところ、気持ちが散り散りになった状態で読んでいたので、気が付かず読み飛ばしてる所がいっぱいありそうです。
ふと、1つの話が気になります。
もともと、この国で闇属性の力をもった人は血筋を遡ると、一族に隣国から嫁いだ人がいる場合が多いと言う事が書かれていました。
それは、いくつかの仮説が立てられます。
隣国で闇の精霊と契約した人がこの国に嫁いで、そこから闇属性を持つ人が生まれている。
闇属性が、子供に受け継がれているか、闇の精霊が契約した人の子孫に力を貸すもしくは再度契約をする。
そんな可能性が出てきました。
そもそも隣国から、嫁いで来た人間に精霊はついてくるのか?
もし付いてきて、その人が死んじゃったらどうするのだろう?
精霊は人間の何倍も長く生きる、契約者が死んでしまったら、また新たな人を探すんじゃないのかな?
だって、この国に入って来た精霊はこんどは隣国に帰れなくなっていても、おかしくない。
だとしたら、私たちが知らないだけで、この国にも結構な数の精霊がいるんじゃないかな?
はぐれた、精霊はこの近くにもいるのかも。




