精霊の存在
「そうだ、シルビア部屋に戻って持ってきたんだ。
これが最初に読んだ本」
お兄様が私に渡してくれたのは、この国での闇魔法の歴史を書いた本です。
「お兄様この本借りてもいいですか?」
「ああ」
「これを読みながらじっくり考えてみます。」
各々ゆっくり考える事にして、一旦お開きとなった。
◇◇◇◇◇
数日後、本を読みながらまた考える…
ここ数日自分のたどり着いた考えと、それを証明するだけの証拠や立証が出来るのかと考えると、可能性はかなり低い。
そもそもイザベラ様が闇魔法を使える前提での、推測でしかないのだ。
やっぱり。私が、思い違いをしているのかな?
今回ばかりはいくら第六感が働いていても、それを証明するのは無理に思えた。
コンコン
ドアが開いてエマリエが入ってきた。
「シルビア様、ローゼリア様がお越しになると先触れが来ました」
「お姉様が?
わかったわ、エマリエお茶の用意をお願いね」
・・・・・・・・・・
しばらくしてやってきたお姉様がちょっと興奮しているように見えます。
「シルビア、フィリオ国のクレア様覚えてる?」
「ああ、フィリオ国ってお母様がなくなる前に皆で行った国ですよね?
確かあの時お姉様と同い年だった王女さまがクレア様ですか?」
「そう、私たちは同じ王女で同じ年だったから、一番よく話をしたし、気があったの。
あれからお互いに時間を見つけては、手紙をやり取りしていたのよ」
「そうだったんですか」
確かクレア様は緑に輝く髪がとてもキレイなお優しい方だったと記憶している。
魔法がお得意な2人は何かお互いだけが出来る方法で文通しているらしい。
詳しい方法を聞くとそれは秘密って言って教えてくれなかった。
あまりにもお姉様が急いで話し出したので、まだ座ってもいなかった。
とりあえず、お姉様を落ち着かせ、お茶を準備して、侍女たちは控えの間に下がらせる。
すかさずお姉様は盗聴防止魔法をかける。
「慌てちゃってごめんなさい。早くシルビアに知らせたくて」
「いいえ、私の為にありがとうございます。
それでクレア様がどうかしたんですか?」
「あのね、クレア様の国は精霊との契約で魔法を使えるようになるのですって。
国民の数の何百倍も精霊がいるんですって、それで親しくなれる精霊の強さや種類で使える魔法が決まってくるの」
「じゃあフィリオ国の人は生まれたときに使える魔法属性は決まってないんですね」
「そう! そう言うことなの。
それでフィリオ国には闇魔法を司る精霊がいるの」
「闇魔法の精霊?!」
「そう、それと精霊はフィリオ国の人じゃなくても、精霊と繋がれる能力がある人ならその魔法を使えるようになるんですって」
「え? それ本当ですか?」
「ええ、クレア様が間違いないって」
この国では、精霊についての知識も研究も進んでいません。
あえてお互いの国の間に結界をはり、干渉出来なくしているためです。
「本当はこの話も他の国にはあまり知られないようにしているみたいなんだけど…」
「たまたま、話の流れで聞いてしまったの。
だから、クレア様にはあまり人には言わないでとお願いされたんだけどね」
お姉様が口に指を立てて、言います。
「だけど、先日のシルビアの仮説とこの話が結び付いてしまったの。
だから、早くシルビアと考えてみたくて」
お姉様が慌てていた訳がわかりました。
なるほど、それならイザベラ様が闇魔法を使えるようになる方法はある事になる。




