婚約話
「はあー疲れた」
私はやっとベッドでくつろぐ事が出来て、ほっとしていた。
あの後、お兄様も合流してくれて、二人がずっと側にいてくれたので、あれ以上のもめ事はなかった。
早めにナタリー様に退席の挨拶をしてさっき部屋に戻ったのだ。
前にお姉様が言ったように、イザベラ様は私の所為でお父様が振り向いてくれないと思っているのだろう。
でも、それは私の存在云々より、ご本人の性格と行いの所為だと思うんだけどね。
言ったところで話の通じる方ではないから、みんな諦めちゃってるけど。
それよりも、今1番の問題は、私の婚約話が持ち上がっている事だ。
私は貴族や王族に嫁いで、この先も窮屈な生活と真実の自分を偽って生きていくのは嫌だ。
だからこそ上手くここから、離れて自由を手に入れたいと思っている。
お兄様やお姉様… 家族は嫌いじゃないし大切に思ってる。
でも誰でも自立して巣だって行くのが当たり前しょ?
この考えも前世の考えに片寄っているかもしれないけど、これが私だもん。
しかもこの婚約は容認出来ない訳がある。
そもそも私がこの話を知ったのは偶然なのだが、たまたまお兄様に用事があり、探していた時に声を荒げて話すお兄様とお父様を目撃してしまったのだ。
お兄様が怒りながら反対する理由、それはこの話が隣国ガーゼリオの第2王子との婚約だからだ。
前にお母様が、亡くなるときに訪れていた国の反対に位置する国ガーゼリオ。
妖精が住む国フィリナやわが国が魔力を大事にするのに対して武力重視の国である。
ガーゼリオの民は気性が荒い上に自分勝手な気質がある。
王族も例外ではなく、力こそが全てと考える上に損得勘定で行動するきらいがある。
魔法が使える人もいるにはいるが、王家が抱え込み王家の為に力を使うように強要されているとの噂がある。
そんなところに力は弱くても魔法が使える私が行けば馬車馬のように使われ、ボロボロにされるだろうとお兄様は考えているようだ。
そんなところに行くのは、絶対に嫌だ。
ガーゼリオに行く振りをして逃げる手もあるけど、これは上手くやらないと家族に迷惑をかけるし、あちらに借りを作ってしまう可能性もあるので、出来れば婚約話が本格化する前にどうにかしたい。
大体この婚約話を言い出したのが、イザベラ様なのだ。
何だかおかしいでしょ?
何か裏がありそうだし、早く私を追い出したい気満々なのが、まるわかりよね。




