先王の愚行
兄達二人にご挨拶して、部屋に戻った私は、侍女のエマリアに湯浴みを手伝ってもらって着替え寝る準備をする。
前世の癖でお風呂に入らないとベッドに入りたくないのよね。
この世界では晩餐会や舞踏会前に湯浴みして散々磨きまくって、出かけるけど、帰ってくると簡単に体を拭いて寝ちゃうんだよね。
舞踏会なんて踊ったりするし、会場広いから結構な距離歩いたりして汗かくのに気持ち悪くないのかしら?
それに化粧をちゃんと落とさないなんて信じられない。
明日はナタリー様がお茶会を主宰なさる。
私も出席しないといけないし、イザベラ様も来るから、気を引き締めていかないとならない。
だから、しっかり休まなくてはね。
さて、話を戻しますね。
1年後ナタリー様は第1王女のマリアお姉様をお生みになり、その後すぐお母様も懐妊され、王家はこれで安泰だと言う雰囲気でした。
2人の妃が次々に子宝に恵まれて、これ以上側妃も必要ないと言う声も多かったようです。
しかし、お祖父様が亡くなる少し前に、急に万全を期すためもう1人側妃を立てると言い出したとか…
まあ ご自分は3人も側妃がいたのに、子宝にはなかなか恵まれず、正妃が生んだお父様以外は2人の王女だけだったようです。
この時お父様も男子はお兄様だけだから、お祖父様もそこを心配されたのでしょう。
そしてとうとうイザベラ様が第2側妃として、決まってしまったのです。
喜んでるのはゲンドリオ侯爵派のみ。
皆さん戸惑っていたとか… 当事者のお父様も苦笑いだったみたいです。
この王の愚行は貴族議会でも、相当揉めたし、頭を抱えることになったようです。
もう1人側妃を置くにしてもなぜイザベラ様だったのか?
それはナタリー様が側妃に決まった後、少しして年頃の令嬢は皆嫁いでしまったのですよ。もう妃になれる可能性はとても低かったのですから。
少しでも条件のよい相手を見つけて、嫁がないと行き遅れてしまいます。
なので、お祖父様が無理やり第2側妃を立てると言った時にある程度の条件にはまる令嬢が残っていなかったのです。
まだ洗礼前の子供以外は最後まで、諦めなかったイザベラ様だけ。
後は低位貴族で魔法が弱い令嬢のみ。
消去法で決まったイザベラ様。
惨めですね。
でも凄い執念。
ご本人は得意満面でやっぱり私しかいないでしょ?っと威張りまくりだったようです。
側妃になった当初、調子に乗った傲慢な態度で相当周りを引かせたらしいです。
イザベラ様のお披露目パーティーの後は、お父様は定期的に側妃のもとへ通わなければいけないのですが、気がすすまなかったのか…
ちょうど即位するための戴冠式を控えていて、忙しい時だった事を理由にイザベラ様のもとへは行かれなかったそう。
どこまでも残念なイザベラ様。
戴冠式の数ヶ月後とうとうイザベラ様も我慢の限界だったらしく、ゲンドリオ侯爵に泣きついたようです。
王様になったお父様をまわりが説得し、1度だけイザベラ様のところに通われたそうですが、まさかその一度で懐妊されるとは…
なんと言う悪運、いえ強運。
凄いです。




