第二話 白夜
白夜の心。
…………メイ………。
もう、二度と会えない……?
嘘だ。
だって、少し前まで、俺達は、一緒に笑っていたのに。
「……俺、だけ…」
白天使が俺だけしか残らなかったのは、運が良かったんじゃない。
メイがいたから。
黒天使のメイが……俺を守ってくれたから。
俺の、せいなんだ。
「ごっ…め、ん……」
熱い水が溢れ出す。
ごめんね。
ごめん、メイ。
トントン
「…!はい…?」
「…白夜…?」
ドアから不安そうにこちらを見つめるのは、千佐だった。
「ああ…千佐。どうしたの?」
「…。びゃっ君…。」
ぎゅっと、千佐が抱きしめてくる。
「………千佐…」
「…メイ、びゃっ君のこと大好きだった。びゃっ君も、メイのこと大好きだった。」
「…。うん。」
「泣いて。もっと。メイのぶんまで、泣いて。…足りない分は、僕が泣くから…。」
「千佐っ………。」
泣いていいよ。大切な人を想いながら。
心の中で、生きていることを確かめながら。
大事に、大事に。
「…っく……。ひぅっ……。」
「…ぐすっ。……すんっ」
涙の数だけの記憶。
ひとつひとつかみしめて。
メイと出会ったのは、一年半前。
俺が治療した黒天使だった。
「…ありがとう、白夜君」
「いや、いいよ。気にしないで。…にしても、空が飛べるのに木から落ちるなんて……」
「あ、うん……ちょっと、見とれちゃってて」
「何に?」
「…………白夜君に…」
「………は?」
「あなたの羽、すごく綺麗よ?うっすら蒼色が交じっていて…」
「え?!」
そんなことを言われたのは初めてだった。
むしろ、他の天使からは差別的な目で見られていたし。
初めて自分が好かれたような気がして、嬉しかった。
「あ、ありがとう。」
「…?どうして?…まぁいいけど♪ねぇ、遊びに行かない?私、あなたと話したかったの。いい…かな?」
「あぁ、いいよ。行こう。」
それから、二人は仲良くなった。
最初は仲良しなだけだったけど、いつの間にか愛してた。
ずっと、あの幸せな時が続くと思ってた。
けど………
白夜っ、逃げてぇぇっっ!!!!!
それが最後の君の声。
「僕っ…やっぱり許せないのっ…」
「俺、も…」
皆を、大切な人を殺したあいつを…
ユルセナイ。
「千佐」
「…なあに?」
「ありがとう。」
「…?なんで?」
「いいよ、気にしないで…」
千佐のおかげでまたこんな風に笑えた。
…だけど、千佐はまだ笑えていない。
自分のせいだって、責めちゃいけない。そんなこと、大切な人は望んでいないから。