7話〜ギルドの依頼〜
「それでは行くか」
「ちょっと待って、ねぇテルお肉持ってない?」
「ん?あると思うけど?」
「少し宿にわけてあげてくれる?」
「あまり入らないし、高いらしいの」
「…ノト?」
「あー、構わん」
「フロッグの肉がまだいっぱいあるよ」
「あとボアの肉も少しあるけど?」
「みな渡して問題ないだろう」
「わかった、渡してくるよ」
「いい?ノトありがとう!」
この宿屋は、村を作る以前にリリとノルが住み込みでお世話になっていた宿だ。ぼくとノトもこの街にいた時はこの宿を拠点にしていた。
「ありがとう!みんな喜んでくれたよ」
「あー、それはよかったな」
「うん!」
「それじゃぼくはノトとギルドで用済ますから、マサ、
リリと買出しは任せるね」
「わかりました!リリさん行きましょう!」
(今日はマサ…元気だな!)
“バタン”“ガャガャ”「ギルド賑やかだね」
「そうだな…依頼が少ないようだ」
「《アメリア》さん、お久しぶりです!」
「?!テルさーん!ノトさんも!」
「待っててください!ギルマス呼んで来ます!」
「更新に来ただけだし、忙しいだろうからいいよ」
“カッカッカッ”「ギルマスー、ギルマスーー!」
「…聞いてないね」
「…そうみたいだな」
“ドタドタドタドタ…バタンッ”
「来たか!テル、ノト!こっちだ!」
「《ライリー》さんお久し…」「早く来い!」
「…なんだ?」
「…わからん」
“タッタッ…ギィ”「失礼します」
「助かったぜ!今年も来ると信じてた!」
「どうしたライリー、何かあったのか?」
「あー、変異種が出てな」
「変異種?ライリーさんでも倒せないの?」
「わからねー」
ライリーさんは、ヒカルとこの世界に来て最初に出会った冒険者だ。ぼくたちをギルドに紹介して冒険者にしてくれた。その時ギルドの新人受付嬢だったのがアメリアさんだ。
「って訳でよー、頼まれてくんねーか?」
「なるほどな、飛ぶ魔獣でライリーとは相性が悪いのか」
「他の冒険者達は?」
「ランクの高い奴らはみんな帝国のギルドに行っちまっ
てな、ここではCランクパーティーが最高だ」
「そいつらも討伐に出たんだが、メインの弓使いが重傷
負って戦えなくなっちまってよ」
「そうか」
「あー、王女も王国軍連れて討伐に出たが、もう少しの
とこで逃げられてな」
「王女とはまだ幼くなかったか?」
「まだ10歳くらいだが、なにかと国民思いのいい嬢ちゃ
んだ、外町にだいぶ被害が出てるから放っておけなか
ったんだろ」
“ワーッガャガャ”“ワーッワーッ”
「外が騒がしいな」
“バタンッ”「おい、どおした?!」
「ギルマス!出ました怪鳥が!」
「テル行くか」
「うん行こう!」
「待て!俺も行く!アメリアこっちの事は任すぞ!」
「ライリーさん!」
「外町の畑の方だ急ぐぞ!」
ライリーさんは大剣使いで、その一撃はヒカルにも引けを取らない威力を持つ。出会った当時でA級冒険者だった実力者だ。
“ダダダッ”「あいつだ!」
「でかいな!」
「あのデカさで速いぞ!」
“バッサー”[グァーッ]“バサッ”
「来るぞっ!」
「〈アースウォール〉!」“バカンッ”
「抜けてきた!」
「うおーっ!」“ドガガガガガッ”「ノト今だ!」
“バッ”「はあーっ!」“ズバッ”
“バサッ[グァーッガァー]バッサ”
「〈ウィンドエッジ〉!」“シャッシュパッ”
[グァガァーーッ]“バササッ”
「やばい!竜巻来るぞ!」
“ゴゴゥーーッ”
「〈ウィンドハリケーン〉!」“ゴゴゥーッブワーッ”
「相殺したか、さすがだテル!」
「地上なら俺の一撃で仕留めるんだがな」
「テル魔法で落とせないか?」
「けっこう打ってるんだけどね」(ん?後ろ誰かいる)
「後ろの小屋、誰かいる!」
「なにっ?…おい!そこに誰かいるのか?」
「危ねぇぞ、内町へ逃げてろ!」
“ガタッ”「…ちっ!」“タタタタッ”
「逃げおくれか?あのマントのやつは」
「ライリー前だ!また来るぞ!」
「くそっ飛ばれてちゃキリねぇな」
「ノト飛んで羽おとせねぇか?」
「飛んで届くが空中では自由がきかん」
「空中で動けなければ、こっちがやられる」
「だよな」
(空中で動ければ?…そうだ!)
「ノト、空中を走って落とそう!」
「?策があるんだな、わかった」
「また来るぞ、羽が!」
「ノト飛んで!」
「わかった」“バッ”
「〈シールド〉、足場にして!」「!」“ダンッバッ”
「シールドを展開させる!行けそう?」
「これなら!任せておけ!」
「〈シールド〉」“パッパッパッパッ”
“バッバッバッバッ”「はあーっ!」“ダンッズバーッ”
[グァーッガァゲーッ]“ヒューッ”
「落ちてくるぞ!あとは任せろー!おおーっ」
“ダダダッバッ”「ぅおおりゃーっ!」“ズガバーンッ”
「やった!」「よし!」「みたかー!」
“ドズンッ”
「さすがだぜっ!テルもノトも鈍ってねーな!」
「当たり前だ」
「あれの魔石ぼく貰ってもいいかな?」
「あーいいぞ」
(こいつのせいで外町は静かだったんだな)
「ギルドに戻るか」
この魔獣は約1か月もの間街を苦しめていた。外町は畑や家屋にも甚大な被害が出ていた。冒険者や王国軍の被害者も少なくなかった。
「いやー助かった!」
「これで明日から楽出来るぜ、アメリアもご苦労だった
な、明日から少し休んでいいぞ」
「やったー♪テルさんノトさん、ありがとうございまし
た!」
「いえいえ冒険者の仕事してなかったから、ぼくたちも
ギルドの役に立てたなら良かったです」
「そうだな」
「お前たちは変わらねぇな」
「そうだこの討伐の件、国から依頼出てたんだ」
「ぼくは魔石貰ったし、十分だよ」
「褒賞ならライリーが受けてくれて構わん、金は使うこ
とないからな」
「いいのか?ギルドの実入りが少なくて困ってたんだ、
助かるよ」
「うん、それじゃ待たせてるから行くよ」
「あー待て、おまえらの村どこにあるんだ?」
この討伐依頼の達成でギルドの面目も保て、ギルマスとしても冒険者としてもライリーさんの街からの評価は、更に絶大となる。
「リリ、マサお待たせ」
「さすがでしたね、テルさんノトさん!」
「ありがと、買出しは出来たの?」
「大丈夫です、宿に荷物まとめて預けてます」
「それじゃお礼言って帰ろうか」
「そうだな」
「テルさん疲れたでしょ?帰りも運転しますよ!」
「うん、それじゃ頼もうかな」
「任せてください!」
「揺れないように頼むわよ…」
「任せてください!」
テツからの頼まれ事、買出し、冒険者登録の更新。今年の街での目的も無事果たし帰路につく。明日からまた村での平和な日常が始まる。
おざきです
貴重なお時間をわたしにいただき感謝します
お読みいただきありがとうございました♪