4話〜フール村④「フール」〜
(そろそろマルスが来る頃だし、仕上げなきゃ)
“ガチャ”
「テルぅどこいくのぉ?」
「やぁノノ、楓林に行くんだけど一緒に行くかい?」
「本のおうちぃ?」
「そうだよ、あとシロップも作るから手伝ってくれる?」
「おいしいのぉ、おつだいするぅ」
「助かるよ、今日はミトは一緒じゃないの?」
「よんでくるぅ」
「うん、それじゃミト呼んだらテツのとこに来てくれる
かい?先に行ってるね」
「はぁい」“トッタッタッ”
この地を初めて訪れたのは、ノトと2人で冒険者ギルドの依頼で近くに来た時だ。日も落ちてきたので、ここの綺麗な川沿いで朝まで休むことにしたんだ。
(テツ今日は庭にいないな)“コンッコンッ”
“カチャ”「あっテルさん!」
「やぁマサ、テツいるかな?」
「…昨日飲み過ぎて2人共まだ寝てるんですよ…」
「昨日は宴で盛り上がってたからね…頼んでた瓶が欲し
かったんだけど、仕方ないか」
「ああ!それでしたら僕が作ったんで、持っていきます
か?こっちです!」
「マサが作ってくれたんだ?ありがとう」
「100個って聞きましたけど、一応多めに作っておきま
した」“ガチャ”
「これです、どうですか?」
「うんうん、すごくいい出来だよマサ!」
“タッタッタッタッ”
(!ノノとミトかな?)
「テル、任務やるぅ!」
「ミトぉ呼んできたぁ」
「それじゃ楓林へ行こう、2人共よろしくね」
「テルさん達、樹液を採りに行くんですか?僕も一緒に
行って手伝いますよ」
「マサくんもぉいくぅ?」
「助かるよ、それじゃみんなで行こう」
野営をするのに火を起こす為、近くの楓林で乾いた枝を集めていると、楓林の中に1本一際目立つ大木を見つけた。その大木からは、木の形をした魔素の塊であるかのような、そんな違和感を感じた。
「それじゃ、みんなで手分けして木に掛かってる袋の樹
液をこの鍋に集めてね」
「おっけぇ!」「はぁい」
「こんな大きな鍋で?そんないっぱい作るんですか?」
「大きいけど、煮詰めて出来上がりは40分の1程度にな
るんだよ」
「だからこの1袋でさっきの瓶3本分くらいしか作れない
んだよ」
「そうなんですね!」
「マサくん、はやく任務するよぉ!」
「ごめんごめん、頑張るよ」
“タッタッタッ”“バシャー”“タッタッ”“ザバーッ”
(みんなのおかげですぐ済みそうだな)
「ちょっと《フール》のとこへ行ってくるから、みんな
は続けててくれるかな?」
「おっけぇ!」「はぁい」
「わかりました!」
(みんな素直で、ほんといい子たちだ…終わったらモフ
モフしてあげないとな…ついた)
「〈リリース〉」“パァー”
朝になって、街へ戻る前にノトと一緒に寄ってみる事にした。大木に触れてみると、それは幻術だった。幻術を解くと、現れたのはエルフ王国でよくある作りの家だった。
(フールが戻ってきた形跡はないな…ここの本は読みつ
くしたし、掃除だけしておこう)
“キィバタン”
「テル任務完了だよぉ、テルべんきょー?」
「早いね、もぅ終わったの?今日は掃除しておいただけ
だよ、シロップ作りの続きをしようか」
「おっけぇ!」
“パタン”
「テルさん全部集めましたよ!枯れ枝なんかも集めてお
きました」
「うん、ありがとう!」
「テルぅ、ミトねぇのんだんだよぉ」
「げっ、ノノ!なんでゆうんだよ!」
「はははっ、ノノも飲んでみたい?…はい、どうぞ」
“ゴクゴクッ”
「おみずぅ?」
「少し甘いお水だね、それじゃシロップを作ろうね」
「〈ファイア〉」“ボゥッ”
(熱も加えて時短しよう)
「〈ヒート〉」
「このまま煮詰めてる間にみんなで袋をまた下げてこよ
うね」
「おっけぇ!」“ダッタッタッ”
家には人の気配はなく、数年以上放置されていると見てとれた。中には大量の手書きの本、それと色々な種類の植物の種が瓶に詰め並べられていた。
「よし、こんなもんかな」
「出来上がりましたかっ!」
「できたぁ?」
「もう少しだね、あとはぼくの家でやろう」
「はい、出来上がりまで手伝います!」
「ミトも任務ー!」「ノノもぉ」
大量の本には色々な植物の育て方、綿織物や絹織物の作り方、あとは魔法の研究資料とここでこれを書いたのがフールと言う人物だと言う事が記されていた。
「ノノー、ミトー!」“タッタッ”
「今日はテルさんとマサくんに遊んでもらってたのか
い?よかったねー!」
「シロップの任務だよー!」「ノノもぉつくったぁ」
「今からうちでメープルシロップの仕上げをするんだけ
ど、ノルも手伝ってくれる?」
「なるほどー、あっ!それならうちでパンケーキを焼い
ておきますよ、出来上がったら来てください」
「やったー」「ぱんけぇきぃ」
「いいね、そうしよう!」
「マサくんも食べてくだろ?たくさん焼いとくよ!」
「はい、是非!いただきます!」
「それじゃ早く仕上げちゃおう」
「はい!手伝います!」
街に戻り10日程たち、ノトは家族を連れ街を出る決断をする。『フールの知識を借り、あの綺麗な川の近くで家族と暮らせる家を作りたい』そんなノトの相談は、ぼくのスローライフの夢と合わさった。
「これで完成!」
「任務完了ー」「シロップぅできたぁ」
「出来ましたね!」
「だいぶ多めに出来たから、マサも好きなだけ持ってい
きなよ」
「いいんですか?ありがとうございます!」
「いっぱい瓶作ってもらったしね、当然だよ」
“ガラガラッ”
「もう出来たかい?パンケーキ焼く準備万端だよ」
「うん、出来たよ」
「それじゃ焼くからみんなうちにおいで」
「はい!」「はぁい」
いつかフールが戻ってきたら、ぼくたちは盗人と呼ばれてしまうだろう。でもいつか会える事が出来たなら、『ごめんなさい』ではなく『ありがとう』そう言いたい。その為に敬意を込めてフール村、そう名乗ろう。
おざきです
貴重なお時間をわたしにいただき感謝します
お読みいただきありがとうございました♪