31話〜筏〜
「あの馬車!」
「テル知ってるの? 顔は見えた?」
「いや、まだ顔は見えないんだけど……やっぱりそうだあの馬車!」
「やっぱりって? 知ってるのね?」
「うん、マルスさんの馬車だ!」
「マルス? 誰?」
「ヒカルも顔見たらわかるよ、ジャック王国の商人だった」
「わかんないわ、怪しくないならほっておく?」
「こんな時間だし何かあったのかも、声かけてみるよ」
周囲では他には気配を感じない。近づいて行くと、御者はやっぱりマルスさんだった。
「おやっ? これはこれは、こんな所でテルさんにお会いするとは!」
「マルスさん、どうしたんですか? こんな時間に?」
「えー、馬が思うよう進まず予定より遅れまして、ケイレブ公国内で休むよりは、無理してでもエルフィ王国に入った方が安全なもので」
「そうなんですか?」
「はい、どうも帝国領内では気も休まらず……どうもテルさんも何か訳有りのようでしたか?」
「いえ、ぼくは少しこの辺りに用事で」
「この様な時間に少女を連れられてるので、余計な詮索でしたかな?」
「そう言われると……そう見えますね……」
「冗談です、テルさんに限ってその様な事があるはずありません」
「ありがとうございます……マルスさんはこのまま村へ向かうんですか?」
「いえいえ、エルフィの城下町に少し滞在してからフール村へはお伺いします」
「そうですか、それじゃ街までお気をつけて」
「はい、ではまた」
マルスさんは暗い草原の道を走り去って行った。城下町にしばらくいるみたいだし、また会えるかもしれない。
「わかったわ! あの金持ち商人ね?」
「うん、何年か前に城下町で会ってから、村で作ってる物を卸してるんだ、行商をしてるみたい」
「帝国領になった影響かしらね?」
「うん、詳しくは聞いてないけどね」
「まぁ、怪しい者じゃなくて良かったわ、もう少し休む?」
「もう大丈夫、代わるよ」
「そう? それじゃ休ませてもらうわ」
ヒカルが休んでる間何事も無く、もう朝を迎えた。
「朝じゃない!? ごめんテル」
「うん、ヒカルが寝てる間何もなかったよ、休めた?」
「えぇ、車で寝たから身体中ちょっと痛いけどね」
「ごめん、テント張った方が良かったね」
「大丈夫よ、朝になったし代わってテル休む?」
「ううん、大丈夫、川沿いを海の方まで見廻りに行こうか?」
「そうね、この橋以外無いから、この辺りが一番重要だけど、一応行きましょう」
「橋はここだけなんだね? でもここから海までの川泳いだらどこでも行けそうだね」
「考えてなかったわ……行きましょう!」
この場所から海まではそう遠くない、歩いてでも1時間程の距離だ。
「そう言えばヒカル、この世界に来て船って見た事ないかも」
「そうなのよ、この世界の地図見て解る様に、陸続きなのよね、海を渡るなんて聞いた事もなかったわ」
「そうなんだ」
「海が見えるわ、どお?」
「特に何の反応もないよ」
「ねぇ、テルがマントの男だったら、どうやって国境を越える?」
「ぼくだったら? シールドを足場にして川の上を走って渡るかな……」
「そんな事出来るの?」
「うん、飛んでる変異種と戦った時、それでノトが空中を走ったしね」
「……」
「海まで来たね」
「戻りましょう」
「橋の方に?」
「違うわ、城に戻りましょう」
「えっ!? うん」
「一応、海沿いを見廻りながら戻るわよ」
「うん」
ぼくならどうするか……あの呪術が使えるなら、ぼくくらいの魔法は使えるはず……それだとサーチにかからない可能性の方が高いか。ん? あれは?
「ヒカル、海のあの岩陰……何かない?」
「えっ? あるわね! 行ってみましょう」
丸太の様に見えるけど……これは!?
「筏だわ!」
「そうみたいだね、やっぱり海や川を渡る人がいるんだね」
「そうね、戻って兄様に報告しましょう」
この筏を使ったのは誰だろう? やっぱりマントの男なのか? 考えてもわからない、今は早く戻ってレオンさんに報告するのが一番か……。
「兄様!」
「どうしたヒカル! テル君も?」
「兄様、見廻った結果、これ以上続けるても効果は薄いと思います」
「どう言う事だ? テル君もそう思うのか?」
「はい、ヒカルにぼくなら、どう国境を越えるか聞かれました」
「!?」
「ぼくなら、川の上を渡ります、もしくは船を使って海から……森の方の崖からでも入れます」
「そう言う事か……」
「それに、海の岩場で海に浮く乗り物を見つけたわ」
「そんな物があるのか!?」
「誰が何の為の物かはわからないけど、広範囲を警戒するには人手が足りないわ」
「お前達の言いたい事はわかった、周囲を常に警戒する事に切り替えるとしよう」
「えぇ、そうしましょう」
あの筏は誰が乗ってきた物だろう……
おざきです
貴重なお時間をわたしにいただき感謝します
お読みいただきありがとうございました♪




