2話〜フール村②「友達」〜
“ドンッドンッ”「テルいるかー?」
(ん?《テツフル》の声だな)
“ガチャ”「どうしたの?まだ昼間だよ?」
「おーいたか、今日は酒の誘いじゃなくてだな、倅の仕
上げを手伝ってやってくんねーか?」
「おっ!《マサフル》ついに完成したの?」
「あー文句ねー出来だ、付与してやってくれるか?」
「テツが文句ないなんてすごい出来だね!準備するから
ちょっと座ってて」
「あーこれ1杯もらってるな!」
「…ほんとお酒好きだよね…」
「ドワっハハハハッ」
テツがこの村に来て7年になる。ドワーフ王国でも指折りの技術者で、昔ヒカルと訪れた際にぼくの短剣を打ってくれたのがテツだ。
「おまたせ、それじゃ行こうか」
「もー準備出来たのか?なんだ、もっとゆっくり準備し
てていーのによ?」
(…まだ飲みたいだけだな)
「マサ待ってるんでしょ?ほら行くよ」“ガチャ”
「わかったよ、しかしこの酒うめーな?1本持ってって
も構わねーか?」
「あっそうだった!《ルナルフ》さんにも持っていってよ、ノルに頼まれてたんだ」
「!いやー、あいつに飲ますのはなー…な?」
「ノルがコーンで作った新作だし、少しくらいなら?」
「…わかったわかった…」
テツはある理由でドワーフ王国にいられなくなった。冒険者となり家族を連れて、この国の冒険者ギルドに滞在中にぼくと再会した。
「テルさん!見てください!どうです!…どうかな?」
(マサ興奮してるなぁ)
「うんうん、ぼくの短剣にも見劣らないよ!」
「ほんとですか?やったー」
「ふんっ、その程度じゃーまだまだよ」
(マサの前だと素直じゃないなぁテツは)
「ほんとすごいよ!でもなんで短剣にしたの?テツみた
いに斧使うのかと思ってたよ」
「テルさんみたいになりたくて!それに斧だとどうして
も素材傷めちゃいますしね」
「まったくなにがテルだ、大斧振り回してこそのドワー
フだろってのに、ふんっ」
(ほんと素直じゃないな…)
「それで、どんな付与をしたいの?」
「あっはい、切味や耐久には自信あるので、麻痺させる
魔法なんかを付けてもらいたいです!」
「麻痺ね了解」
「それじゃ〈エンチャント〉〈パララサス〉」“パァァッ”
「これでいいかな?大型の魔獣なんかには特に入りずら
いから過信しないでね?」
「はい、ありがとうございます!」
「そうだ!折角だし狩に行こうか?もうすぐ街へ行く時
期だし、ホーンフロッグの皮が欲しかったんだ」
「またボールでも作るのか?まぁあの肉は酒に合うし、
うめーから付き合うか、んじゃ行くか」
「マサと2人で行くよ、テツは樽を作っといてくれない
かな?ノルが酒作るのに足りないって」
「おーわかった、任せとけ!そりゃ大事だな!」
(…ですよね…)
「それじゃマサ行こうか」
「はい、行きましょう!それじゃ川の上流ですね?」
テツと再会した時マサはまだ9歳の子供だった。小さな子を連れてる事もあり、元々冒険者を好き好んでやってた訳ではないテツ一家は、ぼくたちの村へ住むことにした。
「テルさん、いましたよ!僕がやっていいですか?」
(1匹だけ、周囲にほかの反応はないな)
「うん任せるね、背面は素材で使いたいからお腹の方を
狙ってね」
「了解です、飛んで来たとこを狙います!」
「〈ディフェンス〉」
「ありがとうございます、行きます!」“ダッダッ”
「うおりゃー!」“ズドン”
(さすがドワーフすごいパワーのパンチだな)
「おおーりゃー!」“ダズン”[ゲゴーッ]
(これ短剣必要ないんじゃないかな…?)
[ゲゴッゲゴーッ](くるっ!)
「マサっ!」
[ゲゴーッ]“ビョーン”
“ジリッッッシュパッ”「よしっ!」
「えっ?うわあーっ!」“ドシーン”
(マサが下敷きに!)
「マサーっ!」“ダッ”
“ガバッ”“ドサッ”「いたたたたっ」
「大丈夫です、うまく麻痺が入りました!」
(よかった、それにしても丈夫だなぁ)
「今のうちに魔石取り出しちゃいますね!」
「すごい手際良く捌いてるね」
「はいっ!ノトさんに教わって練習しましたから」
「じゃぁあとは〈アイテムバッグ〉に入れちゃうね、も
う2、3匹ほしいな、まだいける?」
「いけます!行きましょう!」
テツ一家が村に来た事で、村は一変した。家や村の設備、生活用品など。小さな村だけどその建物も道具などは、街よりも立派になった。
「これだけあれば足りそうだな?そろそろ帰ろうか?」
「もうですか?もう少し狩りましょうよ」
(ぼくも短剣出来た時はそうだったな)
「よし、じゃぁあの奥に見える2匹も狩って帰ろう!」
「はい!2匹共僕がやっていいですか?」
「無理しないでよ?やれる?」
「やれます!」
「わかった任せるよ、それじゃぼくは素材の回収と援護
にまわるね」
「はい!お願いします!」
ぼくはそれ以降、必要な物が出来てはテツに相談し、ノトと素材を集めに行って、テツの鍛冶場に入り浸る日々が多かった。
「ただいま」
「おー遅かったな、樽ならもう出来てるぞ」
「ん?あいつはどうした?」
「マサなら鍛冶場だよ、短剣の手入れしにいったよ」
「そうか、まー上がれよ、もちろん付き合うんだろ?」
「相談もあるし、いただいていこうかな」
「おーそういやーそんな事言ってたな?今度は何を思い
ついたんだ?」
「うん、街へ行くのにこの皮使って………て感じに」
「それはいいなー、よしまかせろ!…街行く件なんだけ
どよ、今年は倅を連れてってくれねぇか?」
「マサを?」
「あー、もう16になったし、そろそろ街の鍛冶屋なんか
も見せておきてーんだ」
「なるほどね、今のうちに自分のレベルを知っておいた
方がいいかもね」
「そーゆー事だ、頼めるか?」
「うん、わかった!マサを連れてく方向でノトと話して
おくよ」
「あー頼む!よし、じゃー今日はとことん飲もうぜ!」
「今日はって…いつもじゃない?そうだ、とって来た肉
これどうする?」
「ずいぶんあるなー、脚だけで足りるだろ?あとは、
その鞄にしまっておけよ、それにしてもコーンが
こんなうめー酒になるとはな」
「ノルの腕がいいんだよ、料理もうまいしね」
この村で色んな物をテツと作り、作っては飲んでの日々を繰り返していた。今ではテツは、なんでも話し合える1番のぼくの友達だ。ちなみに奥さんのルナさんは、村1番の酒豪だ…。
おざきです
貴重なお時間をわたしにいただき感謝します
お読みいただきありがとうございました♪