盲目文学少女と盲導犬ワンコ犬ぞりレースに出る
『天使が二人の冥福を祈りながら天へ連れて行きました』
ベッドの上で1人の少女が本をなぞっています。その横には彼女の相棒。犬のコロが見守っていました。
「クウン?」
コロがベッドに足をかけ少女を心配そうに様子を伺います。少女の名は明奈。明奈は病気のため目が見えません。読んでいた本は点字の本なのです。
「なんか悲しいお話でしたね。コロは私と一緒に逝く必要ないからね」
コロは何だか悲しそう。明奈はコロの頭を軽く撫で話かけます。
「私も本を読んでいるだけじゃダメだよね?もっと体を動かすこと探さないと」
明奈がコロと戯れていると、ノックもせず明奈の幼馴染みの祐輔が部屋に入ってきました。
「明奈!コロ貸して。犬ぞりレースに出たいからさ」
「コロは盲導犬だからそういうのはダメだよ」
「コロも明奈の相手ばっかりじゃつまんないないよな」
「そ、そんなことないもん!」
明奈は怒りました。コロは明奈も祐輔も大好きだったので困ってしまいました。
「コロなら優勝出来ると思ったんだけどなぁ。ちょっと試しにソリ引かせてよ」
「ぶー」
祐輔はコロと明奈を外に連れだすことに成功しました。祐輔はコロにソリをセットします。
「じゃ行って来る。コロ。GO」
コロは祐輔の指示に従いゆっくり様子を見ながら歩きだしました。
「コロ。GOだよ」
コロはゆっくり歩きます。
「コロお疲れ様。どうだった?」
コロはゆっくりとコースを一周して明奈の所へ戻って来ました。
「アテが外れた。コロはレースには向かないや。他当たるよ」
祐輔に送られコロと明奈は家に戻りました。
「犬ぞりか。今度は南極物語を読みましょう」
明奈は再びベッドに戻り本をなぞります。本を読みながら明奈にある思いが出来ました。
(私、コロと犬ぞりレース出れないかしら?入賞は無理でも完走は出来るのでは?)
目が見えない明奈は外に出て遊ぶことはありませんでした。ここに来てスポーツらしいことが出来るのに気づいたのです。
夕食時、明奈は父母に犬ぞりレースについて相談。『無理しないなら良いよ』と許可をもらいました。
昨日、祐輔が回ったコースをコロと明奈で回ってみます。転ぶことなく無事に完走出来ました。
(これならいける!)
明奈とコロは喜びました。
犬ぞり大会当日。天候は快晴。気温は氷点下と寒くなりました。
『エントリーナンバー8番。北野明奈さんコロ号スタートしてくだい』
「行くよコロ」
コロと明奈は勢い良く飛び出して行きました。