魔法少女①
「キエキエキエッ!お前等は皆殺しだはぁ!!」
街に突如、何か虫みたいな化け物が現れ暴れまわっていた。サソリ・ハチ・クモ・アリ・ムカデなど色々な毒虫が合体したような異形の容姿で、多肢による素早い動きと同時に多数の攻撃を繰り出し人々を虐殺していた。圧倒的な攻撃力と毒で遅かれ早かれ攻撃を受けた人は死に至る。虫の通った後は人の屍が累々と重なる。
「最近、あんな化け物がよく出るね。最初は驚いたけど……何か慣れてきたよ。」
わたしはあの廃墟で出会った化け物をはじめ、その後何度か異形の化け物と遭遇していた。ハニワからは化け物に出会ったら観測するように依頼されていたので、いまわたしは化け物をスマホで録画している。
「大量虐殺ってこういうことを言うんだね。人がアリを踏みつぶしているようだなぁ~。」
ただ見ているのは退屈だ。
「そこまでよ!」
化け物の前に立ちはだかったのは……フリフリな服を着た女の子。
「わたしは『魔法少女ステラ』。天の星々が悪を見逃さないからね!」
『魔法少女』?年の頃はわたしと同じくらいかな。恥ずかしくないのかな、アレ。幼稚園や小学生低学年なら喜びそうだけど、高校生なわたしからすると恥ずかしいことこの上無く……痛々しい。
魔法少女と虫の化け物の戦いが始まる。わたしは変わらず少し離れた場所から録画を続ける。
「何なのあの恥ずかしいの?」
わたしの素朴な疑問に、耳にしたイヤホンからハニワが答えてくれる。
「彼女もまた鈴木さんと同じ超常の力を持つ存在。系統は異なるように思われますがね。いずれデバイスになってもらおうと思っているので、そのままデータ収集を継続してください。」
「りょーかい。」
押されている化け物は一旦後退する……わたしの方へ。
「ちょっと、こっちにこないでよー!」
「何だこの人間はぁ!邪魔だはぁー!!」
虫の化け物のサソリの尻尾がわたしに襲い掛かる!さすがに……手を出さざるを得ないかな。
「そうはさせない!!」
サソリの尻尾がわたしに抱き着く魔法少女の背中に突き刺さる!苦悶の表情を浮かべる魔法少女だったが、作っているのか笑顔を見せる。
「大丈夫?早く逃げて。」
「あ、ありがとう。死にそうですけど大丈夫ですか?」
そんなことしてもらわなくても良かったのにと思いつつ、一応お礼と心配を投げかけてみるが、辛いのか言葉は出ない。
「キエキエキエー!サソリの毒でイっちまいな、魔法少女!!」
高笑いする虫の化け物。間近で見るとキモチワルイ。一層のこと……
「お手伝いしましょうか?」
スマホを向けながらわたしは援護を申し出る。魔法少女は毒が身体に回り始めたのか苦しそうにしているが、毅然と立ち上がる。
「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫。魔法少女は負けないから!」
心底ぞわゾワっとした。こんな漫画みたいな台詞を吐き出すなんてサムイを通り越してキモイ。この虫と同じくらいに。
「じゃあ……頑張ってください。」
お読みいただきまして誠にありがとうございます!
鈴木の性格がだんだんと悪くなってきている気がします。こんな子じゃなかったのに……。
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