佐藤①
「兄輪、俺と付き合わないか?」
昼休みの屋上に続く階段の踊り場で事件に遭遇したわたし。あ、あの変人なハニワが告白されただなんて!後から屋上に向かったわたしは階下で二人の話を盗み聞きしていた。
「アタシは興味ないので、もう話しかけないで。」
一往復で終わったよ!!キャッチボールですらないデッドボール!?それは無い、人として。
階段を静かに降りてくる音が哀愁を誘う。
「あ、鈴木。いつからそこに?」
降りてきたのはハニワと同じクラスの佐藤。小学生の頃はよくわたしと同じクラスだった。
「佐藤さ、あんなヤツのどこがいいの?」
声が上ずるのも気にせずわたしは佐藤に問い正す。もうバレてるかもしれないけど、わたしは佐藤が好きになっていた……最近になって。
昔から明るい性格で清々しいヤツだったけど、最近は背が伸びて顔つきも凛々しくなった。そのため多くの女子に人気があった。本来ならそんなモテキャラには興味はないハズなんだけど、この前佐藤に財布を拾ってもらった時、久々に面と向かって話した佐藤の晴れやかな仕草にときめいてしまったのだ。
「聞いてたのかよ。ま、いいけどさ。バッサリとフラれるとは思わなかった。流石にショックかな。」
自虐的なんだけど、そんなハニカム姿がまた良いんだなぁ〜。
「兄輪って全く話したことなくてさ、クラスでも無口で孤立してるけど、たまにうっすら笑ってることがあってさ、コイツこんな一面もあるんだなっておもうようになってさ。もっといろんな兄輪を見たいと思ったら、その好きになったというか。」
この前ハニワが気持ち悪い笑いをしていたことを思い出す。無表情キャラなら一切笑うなと言いたい。そんなクソみたいなトラップに佐藤がかかったなんて許せない!
「アイツは無表情で何考えてるか分からないし、笑った時は悍ましいことを考えてるに決まってるよ。もうハニワには近づかない方がいいよ。アイツ本当にクソだから!」
多分わたしがハニワのことを一番知っているだろう。AIの方がよっぽど人間味あふれるほど無機質な感情。アイツはAIに人間の心について教えてもらった方がいいレベルだ。
「俺に気を遣ってくれてありがとな。でも、俺のために無理に兄輪さんを酷く言わなくていいから。フラれたけど何でかなスッキリしたわ!サンキュー!!」
あろうことか……わたしが心にも無いハニワの悪口を言ったと佐藤は勘違いした。心からの本音なのに。
それより……佐藤にはわたしはどう映ってるんだろう。
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鈴木の恋バナその2です。佐藤を振り向かせることができるのか、鈴木!?(゜ω゜)
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