無表情②
「この星の生物の能力は低いハズだが、この個体は違うのか?」
銀色ダルマがわたしに賛辞を投げてきた。悪くない。いまのわたしの頭脳と身体は超人級なので、相手が宇宙人だろうと赤子の手だった。銀色ダルマは身体から流体金属みたいなのを飛ばして来るが、わたしが行動を考えるまでもなく量子AIが数万の回避行動の中から最適解を示し、超人的身体能力で回避を実行していた。オートパイロットってヤツかな。
「ラュォゾをあんな姿にしたアンタは許さないから。死んでラュォゾに詫びろって!」
銀色ダルマ曰く、自分がラュォゾを殺したくせにとか文句を言っていたが、わたしの意思でラュォゾを殺した訳じゃないからわたしは悪くない。悪いのはハニワであり、そもそも巨大化させたこの銀色ダルマだ。だからそんな文句は少しも気にならない。今は銀色ダルマへの怒りだけだった。
「ジワジワ嬲り殺すのは趣味じゃないんだよね。とりあえず死んで。」
わたしはいつも通りに相手に死を与えた。
「あれ?」
銀色ダルマはまだ動いていた。
「我に死は無い。キミには死はあるのだろう?死が嫌なら我に従え。ラュォゾのような力を授けよう。この星を滅ぼせ。」
なんてことだろう。この銀色ダルマは生命ではないのか?わたしは生命を終わらせることはできるけど、生命ではないモノに死を与えることはできない。破壊的な力も無い。これはもう……
「ハニワさん、こっちの状況は把握してるよね。どうする?」
わたしは脳内でハニワに語りかける。
「鈴木さんが無力だなんて。アタシがサポートできるのはまた合体ロボにしてあげるくらいですが、その流体金属な宇宙人に効くかどうか。」
人類の叡智を扱えるハニワでも漠然とした助言しか出来ないとは。どうしたものか。
「イオとヴェヴェ、聞こえる?変な宇宙人を倒す方法教えて。」
「お姉ちゃん、ソレは……」
「なるほど、それなら……」
普段あまり役に立たないイオがくれた助言にハニワが反応する。
「鈴木さん、あとは任せていいですか?」
ハニワの問いにはこう答えた。
「アンタがやって。面倒くさいから。」
「はい。」
無機質な返事に、多分ハニワは無表情なんだろうなと思った。これで生身の人間だというから驚きだ。
合体ロボにされるやいなや、摂氏-196度の過冷却攻撃で銀色ダルマを凍結し、そのまま摂氏-270度の宇宙空間に捨てやった。
宇宙から来た宇宙人でも宇宙空間では活動できないなんて。わたしは無表情で見送ってやった。
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どこかの究極生物様とぶつからないことを祈ります。鈴木の力も万能では無く、結局頼ってしまうところは人間ですね。
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