肉体①
身体が上手く動かないことがある。原因は分かっている。
わたしはエイリアンに殺されてからハニワが蘇生手術が終わるまでかなりの時間が経過したため、脳の蘇生限界時間を大幅に超えたことによる不可逆的な脳機能障害によるものだった。普通なら脳死しているところだが、ハニワ自身の人格バックアップから生成した複数の自己AIによる医療パターンシミュレーションを人知を超えた量子演算能力で解析した最善の治療を、ハニワ自身が装着した外科手術ガジェットでオペを慣行。どんな名医でも成し遂げられない脳死状態からの蘇生に成功したのだった。それでも後遺症はどうにもならないようだ。
ハニワ曰く、マイクロチップ化した量子コンピュータを埋め込むことで脳機能の補助を行うという提案があった。もちろんそれをお願いするわたしであった。今日はそのオペの日でドクター・ハニワの家に向かうところだった。
「身体を捨てれば?お姉ちゃん」
わたしの可愛いイオ君がそう言いだした。可愛い顔で何てことを言うんだろう。
「いやぁ、それはちょっと……イヤかな。」
「姉君はもう肉体と精神が乖離できたのだから、イオを言う通り、肉体など捨てるのが良い。」
長身イケメンなヴェヴェちゃんも同じことを言う。
「あなたたちは本来幽体なんだっけ?それって不安は無いの?肉体から抜けたらもう戻れない気がして怖いんだけど。」
ふたりは顔を見合わせる。
「お姉ちゃんは世界の果てに到達した時点で精神は消えることは無いよ。ただ、肉体と癒着していることで肉体の劣化の影響が精神にも侵食するリスクがあったけど、肉体とのリンクも今回切れたから大丈夫だよ、お姉ちゃん。」
イオの言っていることはイマイチよくわからないので、大丈夫と言われても不安は消えない。
「つまり、敢えて肉体を持たずとも我らと同じで精神体として消滅することは無くなったということ。そして我らのように物質に影響を与えることで義体を操ることもできる。馬鹿げたことだが、物質世界で過ごすならその壊れた身体を捨てて、新たな身体を作ればいいということだ。分かるよな、姉君。」
ヴェヴェがフォローしたようだが、やはりピンと来ない……。
「ハニワに説明してくれない?あんた等の話を翻訳してもらうから。」
釈然としない表情をヴェヴェは浮かべたが、イオはハニワの家を訪ねることが楽しそうであった。身体が不自由なわたしはまたヴェヴェとイオと三位一体な姿でハニワ邸を目指した。
お読みいただきまして誠にありがとうございます!
身体を新しくできたらどんなに良いか。そんな夢を鈴木は手に入れるのか?積むや積まざるや!?(使い方間違ってるし……)
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