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2/10

2速


 調べれば調べるほど例のアイドルは高嶺の花だと判明した。アイドルを売っているメーカーは超有名どころか、ロードバイクの世界では雲上御三家メーカーであるのだ。

 そりゃ30万するわ、と思い始めてるから俺はすでにロードバイクに毒されて来ているな。最初はいくらスゴくても絶対に高すぎるだろコレ、と思ってたのに……


(あ、そういえばそろそろ食料がないじゃねえか。明日にでも実家に行くか)


 俺の実家はここからだいたい40kmほど離れたとこだ。隣の市にあるんだが、途中で峠を越えなきゃならない。エコ志向な俺は燃費の悪くなりがちな峠はあまり通りたくないが、タダで食料を手に入れるためには背に腹は変えられん。


「もしもし母ちゃん? 明日さァ……」


 俺は実家へ電話をかけ、明日そっちへ向かうと伝えると就寝した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いっけー! オーバードライブ、オフ! うなれ俺のワゴンアァァァルッッッ!!」


 タコメーターは5000回転を刻んでいる! なんと素晴らしい坂なんでしょう! ああ、俺は今10円玉を撒き散らしながら走っているも同然だ。たまにはぶん回してやんないと車は長持ちしないらしいし、と自分を自分で慰めなきゃやってらんねえぜ。


「どりゃァァ!……ん?」


 曇り空で峠は普段より暗い。そんな峠のカーブミラーにピカッとランプが写った。ランプは一つだし、対向車はバイクだろう。バイクなので接触しにくいだろうが、向こうは下りだし念のためちょっと脇に寄っとこう。かもしれない運転は大事だからな!


「……うわはや!」


 なんと対向車は昨日のアイドル乗りだった! しかもすんげえへばりつくような体勢で、すんげえ勢いでカーブを攻めてった。ルームミラーを見ると、短い直線をまるで落下していると錯覚するくらいの勢いで爆走し、またカーブを攻めてった。頭おかしい。


(ていうか、チラッと見えた……)


 昨日もそうであったが、あのアイドル乗りはサイクルジャージじゃなくて普通の服でロードバイクに乗っている。今日はスカートで、しかもすごいスピード出しているのでルームミラーからでもはためくスカートの中身が確認できた。


(しかし、よくもまあ怖くないもんだ。ヘルメットはオフロード用だし、実は服の下にプロテクターでも着けてんのかな)


 偶然の再会と、相変わらずの強烈な走りにまたも俺は見とれていた。この一瞬の再会は、俺にちょっとした決断の最後の一押しを決めちまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「最近コロナでトイレットペーパーがないだろ。困ってるだろうし持ってきてやったぞ」

「よかけな。ここあたいじゃいっきはっちたげえ、のさんかった。あいがともす」

(※いいのかい。ここ辺りじゃすぐに無くなってね、困ってたよ。ありがとね)

「かわりに少し野菜くれりゃ十分だぜ」

「よかどよかど。ずんばいあるけいもげんないげん、もろてけ」

(※いいよいいよ、いっぱいあるからサツマイモでもなんでも、もっていきなさい)

「じゃ、母ちゃんもコロナには気を付けてな。親父にもよろしく。それじゃまた」

「またいっでも帰ってきやんせ!」

(※またいつでも帰って来ていいからね)


 母ちゃんは手土産に持ってきたトイレットペーパー24ロールと引き換えに、車が満載になるほど野菜やら日用品やら載せてくれた。男の一人暮らしではトイレットペーパーは全く減らなくて持て余してたので、喜んでくれて何よりだ。


(さて、帰ったらもう一度ロードバイクについて調べよう。さっきのあの走りを見て決心がついた。俺もロードバイクほしい!)


 自転車ならママチャリもあるし、移動手段なら車もある。でもいいじゃないか、たまには欲しいものを衝動買いしたって。それに中古なら結構良いのが割りと破格で売ってるし。第一ロードバイクは維持費があんまりかからない!

 ロードバイク本体さえ買えば、せいぜい数年に一回のタイヤ交換くらいしか大きなお金はかからない……はず。しかもタイヤはプロのレースで使うような最高級の物が1本6000円くらいで買えるし、意外と消耗品は安いのだ。いや俺の軽自動車のタイヤ1本と同じくらいするから普通にクソ高いけどさ。


(ははは……俺もうロードバイクに完全に思考を支配されてるな。こうなっちまうと、もう買うまでロードバイクの事しか考えられねえや)


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