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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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戦慄する悪魔

ザーっと、雨の音が世界を包む。

嵐が激しく降る雨の背を押し、より激しく地面をたたく。


俺は、走っていた。雨から逃げるために。

俺は、笑っていた。理由は、思い出せない。



空が光に包まれ、俺は足を止めた。

一瞬の雷光ではない、世界を照らす光。


空を見上げれば、雷雲が螺旋を描いている。

その中心が、俺が立っている場所に感じた。




見とれていると、螺旋の中央が一際輝いた。

それと同時に、体の自由が奪われて、視界が霞む。



霞みゆく世界の中、隣に立つ女性の表情だけがやたらと鮮明に見えた。


その人は、泣いていた。俺を心配するように。

その人は、笑っていた。理由は、知らない。








……



……今のは、何だ?


見たことのない景色だったが、懐かしくも感じる。

これは、俺の記憶なのか? それとも、ただの夢か?


記憶の片鱗ならば、重要な出来事だったに違いない。

見た風景、隣にいた女性を思い返してみるが、それ以上は何も思い出せない。


とても楽しかった気がするし、とても悲しかった気もする。


はっきりとしない記憶にモヤモヤしたまま、瞑っていた目を開いた。

目には白く光る天井が見える。どうやら、気を失って横に倒れていたようだ。

悪魔たちのせいで頭痛がひどかったが、すでに痛みは引いている。


どれくらい気を失っていたのかはわからないが、無事に目を覚ますことができてほっと一息ついた。


だが、下半身の違和感に気が付いて、戦慄が走る。

恐る恐る上体を持ち上げて、下半身を確認した。




下半身に悪魔たちが群がっていた。




ファ――――――――!!




心の中で奇声を轟かせながら、俺は座った状態から腕に力を込め、後ろ向きに吹っ飛んだ。

受け身などできずに頭から着地したが、そんなことどうでもいい。


いまだ足に絡まっている悪魔たちを叩き飛ばし、曲がった足を元に戻した。

立ち上がって周りを見渡すと、異様な光景を目にする。


悪魔たちが、俺目がけて這い寄ってくるのだ。

仮足を必死に動かして進む姿には、恐怖しか抱かない。

これが可愛い赤ちゃんならダイブして抱きしめにいくのに!



悪魔たちを避けながら、俺は壁に向かって走り出した。

足の踏み場もないほど密集していたところもあったが、そこは諦めて踏みつぶして進んだ。

足にぐにゃっとした感触が残る。SAN値ピンチ。




漸く、壁にたどり着いた。

ちょっと休みたい、けど、目覚めた瞬間に襲い来る悪魔たちの蠢きが脳裏から離れない。

すでにギリギリなのに、もう一度経験したら発狂する。休むのは諦めて、壁を調べることにしよう。



壁を触ってみたが、特に変わったところはない。

また開通させればよくね? という安直な発想で思いっきり殴ってみたが、壁には少し罅が入っただけで、殴った手首が折れた。痛みはないから問題ないが、壁を突き破るという発想は捨てたほうがいいみたいだ。


調べながら壁に沿って進んでいくと、大きな穴を見つけた。垂直に空いているから、遠くからでは見つからないわけだ。

空いた穴の先は少し暗くなっているが、見えないほどではない。ここよりは弱いが、下でも壁や床が発光しているみたいだ。



とりあえず、降りるか。

下に降りることの恐怖はもちろんあるが、ここにいることの恐怖に比べたら屁みたいなものだ。


下までは結構高さがあるが、痛みは感じないし、怪我してもすぐ治るから気にしない。

俺は飛び込んで地下へと降り立った。


スタっと着地したかったが、思わず膝をついてしまった。

床が柔らかくてうまくバランスが取れなかったのだ。


床に触れてみると、先ほどまでいたところと違い、かなり弾力のある質感をしている。

だが、この踏み心地、初めてではないような……



疑問が過ったと同時に、体が震えているのに気が付いた。

頭では把握できていないが、体はしっかりと把握できているらしい。




身の危険に―――




床が蠢きだした。にゅるっとした仮足が床から伸び、ゆらゆらと揺れる。

仮足一本で俺と同じくらいの大きさがある。


遠くの床が隆起し、その存在があらわになった。


上の階で見た、悪魔たちの集合体。それが、一体化してより巨体になった存在が、目の前にいる。

盛り上がった部分には悪魔の目が所狭しと並んでいる。数えきれないほどの目が、俺を見つめた。



上階の悪魔の恐怖は、序章に過ぎなかったのだ。



SAN値、消滅。





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