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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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悪魔の新しい力

さて、まずは深淵魔法を使いこなすところから始めるかな。

悪魔達は各々死闘を繰り広げていて、俺に向かってくる者はいない。……あいつら、何のために戦っているんだろう。いや、目的なんてないか。ただ暴れたいだけだろうし。

まぁいいや、邪魔も入らないし、基本的なところから実践していこう。



深淵魔法の初歩は魂感知。干渉するためには魂を感知できないと話にならないからね。

けど、これはもうできている。深淵魔法を継承する前から闇に干渉できていたからね。今ではさらに精度が上がって悪魔達の魂も感知できるほどだ。


感知の次が同調。魂に干渉するには魂の波長を合わせる必要がある。相手の魂の波長に自分の波長を合わせることで干渉を可能とするんだけど、これが難しいんだよね。


意思の強さや感情によってその波長は変化する。だから一つの意思しか持たない悪魔の粒子になら同調するのは容易だ。

けど、悪魔の魂の波長は複雑。生きているから当たり前だけど、多くの感情を抱いている。意思の強さも時と場合によって変化する。それを完全に把握して同調するのはほぼ不可能だ。

だから、悪魔と同調する場合は一部分のみにする。悪魔は全員が偏った意思を持っている。それぞれの方向に思考がぶっ飛んでいるからだね。その一番強い思考に同調できれば、完璧な同調ではないにしても干渉は問題なくできるみたい。



そして、最後が干渉。

自分と相手の魂を同期させることによって相手の魂を操ることができる。

まぁ、操るといってもできることは限られているけどね。今の俺じゃあ魂の波長を増減させるくらいしかできないかな。それでも、その影響力はかなり大きいけどね。



『貴様っ! よくも我の邪魔をしたな!』



声が発せられた方から魔力の膨張を感じた。そちらを見ると、先ほど殴り飛ばした鬼がいた。

顔面は陥没していたはずだけど、今では傷一つなく修復されていた。見た目通りタフだね。


その鬼が真っすぐに俺目掛けて駆け出していた。あの直情タイプなら、練習台にちょうどいいかな。



『死ねぇ!』



体格が俺の倍くらいあるのに鬼の動きは素早く、間合いを詰めてすぐに拳を振り下ろしてきた。絶大な力を込めた拳が俺に強襲する。動きが単純過ぎて難なく避けられたけどね。


攻撃の隙を突いて鬼の脇腹に向けて針を射出した。だが、鬼の表皮に弾かれて針が刺さらない。何か魔法を使っているみたいだね。

鬼は針の勢いに押されて後退っていたが、攻撃を気にする様子もなく再び駆け寄ってきた。今のうちに魂の同調をやってみるか。



感知した鬼の魂と同調を開始する。すると鬼の意思を感じ取ることができた。自分の行動を阻害されたことへの嫌悪。少女から好感を持たれていることへの嫉妬。目の前の少女に触れることができなかったことへの怒り。それらが殺意へと転じていた。


……やっぱり変質者じゃねぇか! 何やろうとしていたんだよこのロリコン野郎!



魂の波長を合わせるには相手の意思に同調、つまり共感する必要がある。相手の意思に共感できないと波長を合わせることができない。鬼の意思に共感できなかったせいで、鬼との同調に失敗した。


鬼が目前に迫り再び腕を振り上げる。仕方がなく先ほどと同じように躱そうとしたが、鬼が振り下ろした拳の軌道を途中で変化させた。勢いを殺すことなく放たれた裏拳が胸に叩き込まれた。胸から鈍い音が響き、その衝撃で後方に飛ばされた。

単調な動きで腕の動きも目で追えたけど、一連の流れが速すぎて反応が間に合わない。これは目視では防げないね。



さっきは複数の感情をまとめて感じ取ろうとしたから失敗した。やっぱり一つの感情に絞って同調するしかない。

あの鬼の持つ最も強い意思は俺に対する殺意。それにのみ同調する。それなら簡単だね。鬼に対して同じように殺意を向ければいいんだから。ただそれだけで、鬼との同調に成功した。



同調すると違和感でも感じるのか、鬼は訝しげに俺を睨んだが、特に深く考えることもなく俺への攻撃を再開した。

鬼の行動はワンパターンでまた腕を振り上げていた。振り下ろした腕を躱し、次の裏拳もバックステップで躱し切る。鬼は裏拳の勢いを殺さずに腕を後方に引き付け、今度は手刀を真っすぐに突き出した。魔力を込めた手刀からは斬撃が放たれた。だが、それも躱すのは造作もなかった。

魂を同調させてもサトリのように心を読み取ることはないけど、強い意思を読み取ることならできる。だから殺意の籠った攻撃がどこから迫ってくるのかはっきりと分かる。


再び生まれた隙を突き、背中を殴りつけた。魔法を使っていない肉体だけの攻撃だが、それでも鬼の背中が砕けた。



『なぁっ!?』



鬼はダメージを受けたことよりも自分に掛けた魔法がいつの間にか消えていたことに驚いたようだね。

鬼は魔法で身体能力と防御力を上昇させていたが、俺が鬼の魂に干渉して魔力の門を強制的に閉ざした。それによって魔法の効果を打ち消した。

これが深淵魔法の一つ、強制閉門。魔力を送り出す門を外部から閉ざすことができる魔法。これにより鬼は魔力の一切を封じられている。



『がああああああ!!』



今度は魔力が使えなくて苛ついている。本当に分かりやすい性格だね。

激高して駆け寄ってくる鬼に対し、再び魂の干渉を行う。膨れ上がった殺意を、反対に減少させる。



『ああぁ? あぁ……』



強い意思に干渉し、その意思を反対の波長で打ち消す。深淵魔法の一つ、自己消滅。

魔法名の通り、完全に同調が成功している状態で発動すれば、相手の自我を消滅させることができる。

今は一部しか同調できていないから自己を消滅させることはできないけど、鬼の抱いていた殺意を消すことはできた。


殺意を抱いていたから鬼は俺を攻撃していた。その殺意が無くなれば、鬼の行動理由も無くなり、その動きを止める。



『……』



意気消沈した鬼は、その場で佇んでいた。俺が目の前まで近づいて手を翳しても、攻撃どころか防ごうともしない。



ザシュ!



手の平から伸ばした針が鬼の頭を貫く。一瞬の痙攣の後、鬼はその体を霧散させた。

その魂を手繰り寄せ、手元に収束させて黒い核を形成する。魂核という魔法で魂魄魔法の一種だ。体から抜け出したばかりの魂を一時的に保護するための魔法だけど、今は別の用途で使っている。

このまま鬼の魂を取り込んでもいいけど、意思の強い魂を取り込むのは負担が大きい。だからこうして核として隔離した状態で鬼の力を使用することにした。


鬼の魂に干渉し、そこから魔法と必要な魔力を取り出した。



『"金剛"、"剛力"』



金剛は体を金属並みに硬質化させる魔法。剛力は力を向上させる魔法。

剛力のような身体能力向上の魔法なら俺の魔力でも発動できるけど、金剛は土魔法に該当するから鬼の魔力を使わないと発動できない。魂に干渉しないといけないけど、深淵魔法のお陰でいろんな魔法が使えるようになったね。



キンッ



何かが頭に当たった。弾かれて目の前に落ちたものを見ると、それは弓矢だった。

どこからか狙撃されたようだが、周りにはそれらしき影は見当たらない。


魂の感知によって敵意を持つ悪魔を見つけ出すことは可能だが、まだ闘技場全体に感知を広げることはできない。それに、敵意を持っている悪魔が多くて狙撃した悪魔を特定することはできないだろうし。


だから次の攻撃に備えて闇に干渉した。その直後、再び矢が俺の頭目掛けて飛来する。先ほどよりも高威力で、当たっていれば金剛を使っていても頭を貫かれたかもしれない。まぁ、当たっていればの話だけどね。


矢は俺に触れることなく宙で止まっていた。闇を経由して反衝を発動させ、矢の衝撃を吸収したのだ。

俺が認識していなくても、闇が自動で魔法を発動してくれる。これは相手の意思をトリガーとしている。つまり、矢に込められた敵意に闇が触れた瞬間に魔法を発動するという仕組みだ。


矢も魔法で作られていたようで、反衝によってエネルギーに変換され、それが狙撃手の元へと返っていく。


その行先は観客席の一番上。そこに弓を持った悪魔がいた。悪魔は攻撃が跳ね返ってきたことに驚愕したようだが、距離が離れすぎているせいで難なく躱された。

場所を特定するために跳ね返したから当たらなくても問題ないけどね。



『"破刻一線"』



破壊の光線が一瞬で狙撃手の頭を貫いた。頭を失った狙撃手はその場に佇んでいたが、思い出したかのように崩れ落ちて霧散した。



少しずつ深淵魔法の使い方にも慣れてきた。爺もまだ攻撃を仕掛ける素振りは見せていない。

深淵魔法は使用する魂が多ければ多いほどより力を発揮する。既に闘技場にいた悪魔の二割は闇に還っている。悪魔の乱闘は予想外だけど、俺にとっては好都合だね。



それじゃ、次の段階に移行するかな。



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