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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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青ざめる悪魔

俺は部屋を出て洞窟探検を開始した。



……この場合、洞窟探検というよりは、地獄巡りの方が正しいかな?



洞窟全体が真っ白で距離感がつかめない。壁まで結構距離はあるが、その間に気になる建物は見当たらなかった。

真っ白に輝いて広がる空間は、神秘的で、地獄のイメージとは似ても似つかない。


だが、その神秘的な空間を、悪魔たちが汚している。

視界に収まる範囲だけでも、アメーバ状の悪魔が優に100体は超えている。

悪魔たちの蠢いている様子を見ながら歩き続けるのは精神的につらい。


俺は目を逸らして回れ右をした。すると、今まで自分がいた部屋が視界に収まる。



これは……



後ろを振り向いても、同じように何もない空間が広がっている。その何もない空間に、先ほどまでいた白い建物がポツンと存在していた。

建物といっても、四方を壁で覆っているだけだ。床に魔法陣が刻まれていたことから、もしかしたら魔法陣を隠すために壁で覆ったのかもしれない。


一つだけ建物があれば余計に目立つのでは、と疑問が過ったが、洞窟全体が真っ白なため、近づかなければ案外気づかないのかもしれない。



もしかしたら、これ以外にも白い建物があるのかも……



もう一度洞窟全体を見渡した。目に力を込めて遠くを眺めていく。すると、遠くにあった景色が少しずつ近づいてくるように見えた。どうやら、悪魔の目は望遠鏡にもなるらしい。悪魔の体が便利すぎる。


目を凝らして見渡してみたが、結局建物は見つけられなかった。悪魔を至近距離で見て精神的ダメージを蓄積させただけだ。

だが、まだ建物の裏側は見ていない。回り込んで建物の裏を見る。




そこには、壁一面を覆うほど大きな黒い塊が、建物に凭れ掛かっていた。




血なんて流れていないし、顔色も真っ黒で能面のままだが、サッと血の気が引いていくのを感じる。

この黒い物体が何か、聞かなくてもわかる。黒い靄を固めたような物質を、山のように積み上げたらこうなるだろう。



俺は後ずさり、一歩足を引いた。

ぶにっとした感触が、足の裏から伝わる。


なぜか、足元に悪魔がいる。

声にならない悲鳴を上げると同時に、踏み込んだ足に力を込めてしまった。


ぐちゃ、と目玉が潰れる感触がする。そして、目玉が崩れて灰になり、俺の足元に吸い込まれていく。

アリミュの時とは違い、映像は流れ込んでこなかった。少し頭痛がしたくらいだ。

だが、そんなこと問題ではない。俺の体の中に、あの悪魔がまた取り込まれたのだ。あのアメーバが、俺の体の中で蠢いている光景を幻視する。


脳内映像を振り払おうとして、思わず足を強く叩いてしまった。足はぐにゃっと曲がり、立っていられずに尻餅をつく。

尻餅をついた衝撃で意識を現実に戻した俺は、ふと視線を感じて上を向いた。



壁によりかかっていた黒い物体がこちらを凝視していた。無数の目玉で。



ぬぉおぉ!!



俺は後ろに走り出そうとしたが、曲がった足が地面を踏み込めず転んだ。

気が動転して足の修復ができない。後ろを振り向くと、悪魔の集合体がこちらに倒れこもうとしている。

今の体であれば肉体的にダメージを受けることはないだろう。だが、精神的ダメージが許容量を超える。あれの下敷きには絶対になりたくない!


逃亡はあきらめて、迎撃の体勢をとる。俺は右腕を大きくして殴りかかった。

すると、殴った腕がすっぽりと悪魔の集合体に入り込んだ。殴った部分の悪魔は潰せたが、他の悪魔には衝撃が伝わらなかったようだ。


腕に悪魔たちの仮足が絡まる感触がする。

身の毛がよだち、すぐさま右手を抜き取ると、今度は左手を持ち上げて巨大化し、悪魔たちを叩きつぶした。

手の平から、ぶちぶちと目玉の潰れる感触がする。

無言の絶叫を上げながら、俺は両腕で悪魔をつぶしていく。


暫くの間、手の平で地面を叩き続けた。

そして、周りに蠢いている悪魔がいないことを確認し、俺は再び尻餅をついた。

悪魔との闘いは、精神的につらい。



……あっ



悪魔を殲滅することに集中しすぎて忘れていたが、重大な問題が残っていることに気づいてしまった。

悪魔たちの残骸が、灰となって巻き上がる。


悪魔を倒すと何故か体に取り込まれる。その理由はわからないが、今はどうでもいい。

誰でもいいから、あれを取り込まなくても済む方法を教えてくれ!!



願いを聞き入れてくれる者がいるはずもなく、巻き上がった灰が体に取り込まれ、強烈な頭痛と精神的ダメージで俺は意識を手放した。




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