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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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悪魔の保父さん?


暫くの間ヨミとゆっくり話をしていたら、マコトに愚図られて仕方なく重たくなった腰を上げることにした。



身体に疲れはないんだけど、精神的には大分疲労が溜まっていた。


御子だの何だのと担ぎ上げられ、戦いを強要される状況に陥り。

人間であれば掠っただけでも致命傷となる攻撃を受け続け、何とか4体の悪魔を倒すことができた。



ただ、勝ったと言えるのは、ムカデだけだった。



マコとチコは、明らかに手を抜いていた。その状態で意表を突いて認めてもらったに過ぎない。何で認めてもらえたのかは良く分からないけど。


スクイに関しては、実際には倒してすらいない。

スクイが召喚した悪魔はともかく、途中で乱入した悪魔達のせいで戦場は大混乱。

そのうちの一体がスクイに止めを刺したから、倒したとは言えないね。まぁ、止めを刺したといっても魂までは消滅していなかったけど。



俺が倒せたのは、悪魔の気まぐれによるものってことだね。

それで勝ったと自惚れる程おめでたい頭はしていない。



そんなか細い糸、どころか千切れ千切れの糸を無理矢理寄せ集めて上ってきた現状に、精神的な負担がないわけがない。

だから、可愛いものを見つけて精神の箍が外れてしまったのだ。断じて、ロリコンではない。ないったらない。



まぁ、マコトの気持ちも分かるから、そろそろ動くかな。

俺も、変態達を一人で相手なんてしたくない。ストレス爆上がりで悪魔の胃に穴が開く。



周りを見渡すと、マコトがマコとチコの相手をしていた。何であの変態達はマコトに抱きつこうとしているのだろう?

マコトは全力で逃げているみたいだけど、変態は魔法を使ってまで逃走を阻止している。……お互い必死過ぎる。まぁ、マコトの気持ちは分かるけども。


その近くにはムカデが転がされていた。気を失っているが、外傷はなさそうだ。


更にその隣には、黒い紐のようなもので縛られている悪魔が一体。……確か、ベラギルだったっけ。

俺が魔法で拘束していたはずだけど、意識を失っているうちに魔法が解けたのかな?


ベラギルは意識を失った状態で縛られている。意識があれば暴れ出すだろうから、紐で縛ってあることについては納得できる。

でも、何で亀甲縛りなんだろう?


いや、まぁ、誰がやったのかは分かっている。

ベラギルの服はボロボロで最早布切れになっているが、何とか局部を守ることには成功していた。悪魔に生殖器なんてないだろうけど、見た目が人間だから大事だよね。



……あっちは、全てマコトに任せよう、そう心に決めてミツメの元へと歩き出した。

途中で何度かマコトの声が聞こえた気がしたが、気のせい気のせい。





真っ平だった魔鉱石の床は、至る所が削れてしまい歩きにくい。


あの硬い魔鉱石をここまでボロボロにするなんて、ミツメの黒い風はかなり強力だよね。最初にミツメと戦った時は使っていなかったけど、やっぱり手加減していたらしい。


……黒い風を使われていたら、八つ裂きどころか、塵すら残らないところだった。



ミツメの顔を覗き込む。黒い風を使っていた時は苦悶に満ちた表情だったが、今の表情からは感じない。取り込み過ぎた闇も放出できているようだから、問題はなさそうだね。



何度か声をかけると目を覚ました。起きた瞬間に五月蠅いって言われたけども。


寝顔だけなら可愛い子供なのに、起きたら憎たらしい悪ガキになってしまう。

なんで歪んだ性格になってしまったのか。何が原因か考えて、すぐに結論が出た。環境が言葉通り地獄なんだから、まともに育つ方が可笑しいか。


でも、最初にあった時のようなトゲトゲしい感じは消えている。悪口は叩くけど、害意は無くなっている、ように感じる。

最初は出会った瞬間首チョンパだったからなぁ。それに比べたら大きな進歩だね。


これから少しずつ矯正していけば、普通の男の子に、なる訳ないか。



少し残念なものを見るような目でミツメを見ていたが、その視線には気づかなかったみたいだ。

ミツメは視線を俺から横に移した。それに合わせて俺も同じ方を向くと、そこにはヨミが後ろから付いてきていた。



『誰だ、お前?』



ミツメがヨミに質問を投げかけた。口調もちょっと柔らかくなってる気がする。あの悪ガキがここまで更生するなんて、一体何があったんだろう?

疑問は抱きつつも、子供の成長にほっこりした。



『ヨミ』

『ヨミ? そんな名前の悪魔いたか?』

『あぁ、ヨミは最近悪魔になったんだ』



ミツメの質問に俺が答えた。ヨミはまだ流暢に話すことができないからね。



『テメェにゃ聞いてねぇよ』



答えてあげたのに、何で悪口を叩かれるのだろうか? というか、ヨミの時と比べて口調が違うんだけど。

あれ? 実はあまり更生してない?


少し悲しく思っていると、手を引かれて後ろを向いた。



『メア、どうしたの?』

『くぅ~! 傷ついた心が癒されるぅ!』

『キメェ』



ミツメの罵倒が心に刺さるが、ヨミが心を癒してくれるから問題なっし!



『というかテメェ、名前あったのか?』

『いや、さっきヨミに付けてもらった』

『……』



ミツメは視線をヨミに移した。今度は若干敵意を含んでいるような。どうしたんだろう? 年頃の子供のことはよく分からない。



『じゃあ、マコトのところに向かおうか』

『うん』

『……』



ミツメは何も言わなかったが、歩き出したら付いてきた。

ヨミが右隣りで、ミツメが左隣り。傍から見れば子供を引率しているように見えるかな。


思わず笑みが零れた。こんな地獄でも、ほのぼのとした雰囲気になるんだね。


早くこの戦いを終わらせて、地獄の外に出たいね。



そんなことを考えながら、マコトの方へと向かう。



最後の敵はマコト。

決意をもって、相対する。





『ちょっと御子さん! 遅い! 遅いっすよ!! 何保父さんやっているんすか! 子供よりも変態達の相手の方が大変に決まっているじゃないっすか! とっとと対応するの変わってくださいっす!!』

『ちょっと、マコトちゃん。変態って、誰のことかしら?』

『もし私達のことを言っているなら~、お仕置きするわよ?』

『おいテメェ! 誰に向かってガキ呼ばわりしてやがる!』

『……よし、暫く放置しよう』

『えぇ!? ちょ、御子さん!?』



意気込んできたのに、いつも通りのマコトを見て戦う気持ちが失せた。とりあえず、他の悪魔達がマコトに敵意を抱いたから、思う存分戦ってもらう。その方が楽そうだし。


マコとチコがジリジリと距離を詰め、ミツメは体から風を吹き出している。

そんな中、マコトはどうやら本体と分身体を入れ替えて姿を隠し、事が済むまで身を潜めるみたいだね。


目では見えないけど、闇を通じて感覚で分かった。今では体の外にある闇からでも感覚を得ることができるみたい。



とりあえず、今やることは一つ。



バシュ



『ちょっ、危なっ! えぇ!? 御子さん何で自分の場所が分かったんすか!?』

『勘。自業自得なんだから、逃げずに甘んじて受けろ』

『嫌っす無理っす! 変態達からの抱擁なんて二度と御免っす!』

『それは、まぁ……確かに』

『ちょっと御子ちゃん? 何同意しているのかしら?』

『マコトちゃんだけじゃなくて~、御子ちゃんにもアッついお仕置き、してあげなきゃ~』

『『ひぃっ!?』』



藪蛇だった! いや、変態の抱擁って聞いたら、嫌だと感じるに決まってるじゃない!



バゴン!!



逃げようとしたら、マコトと一緒に風に吹き飛ばされた。風が来た方向を見ると青筋を立てたミツメが。



『テメェら、俺を無視してんじゃねぇ!!』



マコトを追い詰めるはずが、共に悪魔達に追い詰められて逃げ惑う。


マコトが隠れそうになったら針で射抜いて逃がさないようにしていたけど、逆に俺が飛んで逃げようとしたらマコトの影が壁になって行く手を阻む。



『御子さん! 邪魔しないでくださいっす!』

『それはこっちのセリフだ!』

『ちょっと! いつまで二人でイチャイチャしてんのよ!』

『私達も~、混ぜなっさ~い!』

『だからテメェら! 俺を無視すんじゃねぇ!!』



改めて、心から思った。

……早く、地獄から出たい。




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