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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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【side マコト】幻影の悪魔

マコト視点

啖呵を切ってからすぐに攻撃に移る。

なんか格好悪いっすけど、サトリさんが行動する前に手を打たないと、一瞬で消されるっす。



『"明光"!』



翳した手から閃光が迸る。放った魔法はただの目眩まし。これだけなら怯ませることすらできないっすけど、目的は自分の姿を隠すことっす。


分身体を2体作り出し、左右に分かれて幻影剣で奇襲する。

幻影剣は幻覚を見せることができる剣。切りかかる瞬間に斬撃を分裂され、本物の軌道を幻覚の中に隠蔽する。



『子供騙しですね』



サトリさんは迷うことなく2本の幻影剣を掴み取った。やっぱり、サトリさんの目の前では幻覚も全く効いていないんすね。


分身体がサトリさんの両手を塞いでいる内に、幻影剣で切りかかる。上段から振り下ろした剣に対し、サトリさんは両手首を捻って分身体から幻影剣を奪いとって上部に構える。


でも、分身体の剣で防ぐのは無理っすよ。



シュッ



何の抵抗もなくサトリさんが構えた幻影剣を2本とも切断する。


そのまま剣を振り下ろしたんすけど、頭を捉えることなく空を切る。

あの一瞬で逃げられるとは、予想よりも大分早いっすね。



『やはり、ただの幻術ではないですね。最初に剣を掴んだ時は実体がありましたが、貴方の剣が触れた瞬間に幻となった』

『それを見るためにわざと受けたんすか?』

『気になったものでね。それは何という魔法なんですか?』

『ただの分身っすよ』

『普通の分身ではないはずです。土や水などの物質を媒体にして発動した分身体であれば実体のある分身体となります。しかし、貴方は幻術で分身体を作っているに過ぎません。分身体に魔力を纏わせていますが、それだけで実体を持たせるのは不可能。魔法で幻影を実体に変えているのではないですか?』

『……そうっすよ。まさかこんなに早くバレるとは思っていなかったっす』

『それくらいは造作もありません。ですが、それだけではないですよね?』



次の手に移る前にサトリさんが先に動く。一瞬で目の前に現れ、サトリさんの手が自分の腹部を貫いた。

反射的に魔力で障壁を張ったんすけど、障壁ごと貫かれてしまったっす。


反撃として幻影剣で切りつけたんすけど、また一瞬で距離を取られちゃったっすね。攻撃を当てるだけで一苦労っす。



『触れた瞬間は実体があったはずですが、貫いた途端に幻影に変わりましたね。幻影を実体にするだけでなく、実体を幻影に変えることもできるとは、中々に素晴らしい魔法ではないですか』

『……お褒めに預かり光栄っす』



やっぱりサトリさんに見られたのは不味かったっすね。

心は読めないはずなのに、自分の手の内がどんどん暴かれている。あの観察眼だけでも十分脅威っす。



『それで、その魔法の名は何というのですか?』

『虚実反転っす。サトリさんの言った通り、実体と幻影を入れ替える魔法っすよ』

『是非その魔法の原理を暴きたいところではありますが、御子を仕留めるのが最優先。後で魂からその情報を抜き出すとしましょう』

『……本当にできるから性質が悪いんすよね』



自分が死んだら魂に干渉して情報を抜き出す。サトリさんなら造作もなくできるんすよね。

というか、自分の口から喋らせるとかって言っていたはずなんすけど、今のは殺害予告っすよね?



『"影沼"』



サトリさんを中心に広範囲に渡り沼を形成した。サトリさんは逃げることもせず、沼に足を取られている。



『"影針"!』



影から複数の針が飛び出し、サトリさんを突き刺していく。

だが、貫くどころか、傷一つ付けることができない。



『これも虚実反転により影に実体を与えているということですか?』

『そうっす。というか、少しは痛がってほしいんすけど。その体はどうなっているんすか? 硬すぎなんすけど?』

『それほどの硬度ではありませんよ。魔鉱石と同じくらいです』

『比較対象が可笑しいんすけど。何すか、その異常な防御力』



魔鉱石なら魔力を流し込みながら攻撃すれば削ることは可能なんすけどね。サトリさんの肉体の方がよっぽど厄介っす。

それだけでなく、サトリさんの強さはその異常な身体能力によるものが目立つっすね。


攻撃を受けても傷つかない防御力。攻撃を見てから避けることのできる回避能力。防壁ごと粉砕する攻撃力。

それに加えて、相手の心を見透かす心眼と、敵の能力を分析する観察眼。


魔法で身体強化しているならまだ分かるんすけど。今のところ転送以外に魔法を使っていないとか、何の冗談なんすかね。



『では、終わらせますよ』



その言葉が耳に届いた時点で、サトリさんの腕が自分の首を切り飛ばしていたっす。飛んで行った首は切断面を下にして影沼に埋まる。

動きが速すぎて目で追うのがやっとっすね。避けるのはもう諦めた方がよさそうっす。



『痛いじゃないっすか』

『ムフフ、むしろ痛いで済んでいるのが驚きですね。確実に首を刎ね、今も生首のままの貴方が、何故生きているのですか?』

『あれ? 悪魔は首が飛んだ程度じゃ死なないんじゃないっすか?』

『悪魔でも普通は死にます』



体は実体で、首を刎ねられたのは事実。普通の悪魔なら即死しても可笑しくないレベルっすね。

でも、首を刎ねられたら死ぬという認識は、自分には通用しないっすよ。



『よいしょっと』



軽い感じで沼から這い出る。まるで最初からくっ付いていたかのように、首の下には体がついている。体を作るなんて造作もないっすからね。



『私の目を欺けるのは貴方くらいですよ。その技量には舌を巻くものがあります。貴方が望めば、王の座を明け渡してもいいのですが』

『それ王が言うセリフっすよ。後、柄じゃないんで王になるのは嫌っす』

『そうですか、残念です』



再び迫りくる手刀が自分の頭を跳ね飛ばす。それだけに留まらず、頭を捕まえて握りつぶした。

確実に死を与えようとしたようっすけど、まだまだ死なないっすよ。



『しぶといですね』



沼から分身体が一斉に飛び出す。その手には幻影剣が握られており、そのままサトリさんに切りつける。

分身体は次々に沼から出ていき、既に20体を超えた。それでもまだ足りないっすよね。


サトリさんは分身体を次々と消していく。幻影と実体を織り交ぜていても、そのすべてを壊されては意味がないっすね。



4体の分身体で四方から一斉に刺突した。

サトリさんは避けることなくその身で受け止め、腕を振り抜いて首を刎ねた。

首のなくなった分身体の陰から、スクイさんの頭目掛けて刺突する。


完全に捉えていたはずなのに、サトリさんの頬に少し触れただけで逃げられてしまったっす。あの状態から逃げられるとは、さすがに想定外っすね。

スクイさんは沼の範囲外の位置まで移動した。渾身の一撃はサトリさんの頬に浅い切り傷を付けただけっすか。



『今のはさすがに驚きました。まさか、この私に傷をつけるとは』

『自分は渾身の一撃がかすり傷だけですっごいショックなんすけど』

『誇っていいですよ。私に傷をつけた悪魔は貴方が初めてです』



そう言われても全然嬉しくないんすけどね。

傷つけることができないと思わせていたから隙をつくことができたのに、生かすことができなかったっす。



『御子さんの聖霊魔法なら、もっと深手を負わせられると思うんすけど?』

『まともに受ければ私も怪我を負ってしまうでしょうね。しかし、聖霊魔法が来ると分かっていれば防ぐことは可能です』

『なら、なんで御子さんを排除しようとするんすか? 確かにサトリさんの計画通りにイントラを発現することはできなかったみたいっすけど、もう何回か試せばいいだけじゃないんすか?』

『アトネフォシナーに危険を齎す、それは聖霊魔法を使うからではありません。そのイントラの発現自体に問題が生じたからです』

『……どういうことっすか?』

『貴方が知る必要のないことですよ』

『相変わらず秘密が多いっすね。それなら、御子さんを排除することに納得できないっす』

『そうですか。それならやはり、一度死んでもらうしかないですね』



プレッシャーが増し、サトリさんの魔力が吹き荒れる。地面が隆起して黒い魔鉱石が脈動する。

御子さんの魔力で白く染まった魔鉱石は操れないみたいっすけど、地面はほぼ真っ黒だから全部操れるんすね。


空中に飛んで魔力で足場を作り、次の動きを予測する。


常に先を予測して行動しなければ一瞬で首が飛ぶっすからね。思考を巡らせて何が起きても対処できるよう幾通りもの未来を予測する。


でも、これはさすがに予想できないっすよ。



『させないわ~! "魔結氷界"!』



脈動していた地面が凍結してその動きを止める。次いでに、その声を聞いて自分の思考もフリーズしたっす。


ギギギッと首を回して声の方を向くと、チコさんが地面に手をついて魔法を発動させていたっす。


チコさんの魔法は魔力自体を凍結させる魔法っすね。魔鉱石を動かしていた魔力が凍結し、徐々に魔鉱石の中まで浸潤して地面を完全に固める。



『あああーん! 私もマコトちゃんの意見に賛成よ!!』

『私も~、御子ちゃんを消しちゃうなんて勿体ないわ~!』



なんすかね、シリアスな場面をぶち壊すこの奇声は。

思考がまとまらないっすけど、とりあえず一旦幻影の中に身を隠したっす。主に2体の変態から逃れるために。



『さぁ、行くわよマコトちゃん!』

『え!? あれ、ちょ、えぇ!?』



幻影に隠れたはずの自分の手をマコさんに握られたっす。

悪魔でも鳥肌になるんすね。ぞわっとした感触に思考が完全に静止したっす。



もう、勝ち負けとか、御子さんのこととか置いておいて、この場から逃げ出したい。



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