表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
7/141

癒されたい悪魔

はぁはぁ……


壁を殴り、床を踏み抜き、わざわざ口を作ってまで雄叫びを上げた。

壁と床は無残なまでに粉々に砕けている。魔法陣の原型は最早ない。


雄叫びを上げれば、空気が振動しているのが分かった。ピリピリと肌を刺激し、巻き上がる灰を吹き払った。


ふぅっと一息つき、俺は暴れるのを止めた。

憎悪は心にがっちりと食い込んでいるが、表面に出ていた分は消費できた。


急にいろいろと起こりすぎたせいで、頭の整理ができていない。

思い返してみると、あの光の玉は人の心、魂だったのだと思う。もしくは残留思念みたいなものかな。


触れた瞬間にその人の記憶が流れ込んできた。

白い光は明るい人生からの転落、黒い光は絶望からの闇落ち、どのみち救いは無かったな。

白と黒の違いを把握したかったけど、どういう意味なのか?

見た感じだと、いい人か悪い人かの違い? そんなので人の魂の色って変わるのか?


それと、黒い光の変化した姿。赤黒い目に黒い靄の塊。間違いなく、俺と同じ存在、悪魔になったんだろう。

白い光は悪魔にならずに天井に向かっていったのに、この違いは何なのだろう。

地縛霊はこの世の未練が強くて現世に留まるというが、それと同じだろうか? だが、その理屈でいうと、ルグドも同じだったはず。家族と一緒にいたいという思いは、方向性は違うが、アリミュに負けないほどの思いだった。


思いの強さが同程度なら、やはり質が関わっているのだろう。そして悪魔となった理由は、この場所が原因なのだと思う。

記憶の中で耳にした、地獄の門。その地獄とは、ここのことなのだろう。転移した瞬間に灰と化したのだ。ここを地獄と言わず何という。

そして地獄で平然と生きている俺は、やっぱり人間捨てちゃってるんだね……


さらに疑問に思ったのは、何故処刑してから地獄へと送るのか。

公衆の面前で罪人が死んだことを示す為なのか、地獄のことを知っていて罪人が楽に死ねるようにする為なのか……


理由はわからないけど、今回は処刑は行われなかった。俺が魔力を流し、罪人をこちらに転移させたから……

彼らは処刑で首を落とされるのと、地獄で焼かれるのと、どちらの死が良かっただろうか。

少なくとも俺は、首を落とされてからこちらに転移されてほしかった。

これでは、俺が彼らを殺したも同然じゃないか。


どのみち助からない命なら、俺の見えないところで散ってくれ。

見れるところまで来たなら、救える道を用意しておいてくれ。



もういなくなった者たちに愚痴を零した。

ここは、本当に地獄だ。救いは無く、絶望が蔓延している。

……俺も、ずっとここにいたら気が狂うだろう。早くここから抜け出さないと。



俺は部屋の一角を見つめた。散々暴れたせいで、壁はボロボロになっている。そして、その一角には、大きく穴が開いている。どうやら、隣が空洞になっていたようで、そこに繋がったみたいだ。


ここにいても、辟易するだけだと思い、穴から外を覗いた。


そこはかなり広い空間が広がっている。洞窟のようで岩肌が見えるが、全体が白く光っているように見える。

そして、白い空間で蠢く黒い物体。


先ほど殴りつぶした、赤黒い目をしたアメーバ状の物体。同じ姿形の悪魔が至る所で蠢いている。

……悪魔になっても、生理的に無理な現象ってあるんだね。


どれだけ見渡しても、気持ち悪いものばかり、SAN値ピンチ。


期待はしていなかった。動物が生きていける環境じゃないこともわかっている。

せめて、いっぱいいる悪魔の中で、見た目だけはかわいい悪魔はいないのか!?

小動物っぽい癒し系な悪魔がいたっていいじゃないか!!


俺は頭を抱えて現実逃避する。とても逃げられる状態じゃないが。



記憶がほとんどなくても、小動物と触れ合っている記憶は結構あった。

落ち込んだ時は近所の犬や猫を触って心を静めていたのだ。


今、まさに癒しが欲しい。ここにいないなら、早急にここからでなければならない。


そう、俺は地獄を出る。かわいい子を抱きしめに!!




……はい、現実逃避終了。

じゃあ、洞窟探検といきますか。


悪魔はただ癒されたいだけ

小さい子を襲う変態紳士にはならない、きっと、多分…、そうあってほしい…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ