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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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ベラギルと悪魔

ベラギルは俺に向けて手を翳し、再び魔力を飛ばしてきた。

先ほどと大きさは同じだが、魔力の密度が高くなっているように見える。それが両手から連続で発射され、十数個の魔力の塊が殺到した。


俺は迎え撃つために両手から針を射出し、魔力の塊を貫いていく。



ババババババババババッ!



複数の破裂音が響き渡り、弾け飛んだ針の残骸が宙を舞う。

爆発の衝撃が針を伝って腕に届き、両腕が後方に弾かれた。人間だったら確実に両肩外れているね。



『おらぁ! 行くぞ!』



ベラギルは再び両手に魔力を込めた。少しの溜めの後に放たれた魔力は、大きさも密度も先ほどまでの比じゃない。

体を包む程大きな魔力の塊に対し、俺は魔法を放った。



『"黒槍"!』



眼前から発射された黒槍が魔力の塊を貫き爆発を生む。爆発によって多少威力は削がれてしまったが、それでも凶悪な力を秘めたまま槍はベラギルの元へと殺到した。



『ちっ、やはりまだ力が足りねぇな』



パンッと乾いた小さな爆発音がしたと思ったら、ベラギルは一瞬で横に移動し、黒槍を易々と躱していた。どうやら爆発を利用して移動したみたいだ。


魔力で爆発を発生させているが、ベラギルは魔法名を唱えていない。

無詠唱で魔法を発動させているのだろうが、タイムラグ無しで爆発を生むとなると、接近戦は危険か?

いや、さっきの回避を見ると、遠距離から攻撃を当てるのは難しい。

それに、距離がある方が爆発の威力も上がるだろう。それなら、多少のダメージは無視して接近戦に持ち込んだ方が勝機はあるか。



問題は、ベラギルと戦っているときにミツメが乱入してくること。


スクイが吹き飛ばされてからはずっと……、スライムのことで一瞬忘れかけていたけど、警戒は続けていた。

何時こっちに攻撃を仕掛けてくるかと思ってひやひやしていたが、今も一歩も動かずにその場に留まっているから、まだ大丈夫か?


吹き飛ばされたスクイはというと、死んではいないようだが、まだ立ち上がってこない。

今のうちに仕留めておきたいと思うけど、下手に動くとベラギルかミツメに後ろから攻撃されそうだ。

……そういえば、狂化が解けて冷静さを取り戻したから思い出したけど、殺したら駄目なんだっけ。でも、どうやったらスクイが俺のことを認めてくれるのか、皆目見当がつかない。


スライムは、マコトが狂化状態って言っていたけど、暴れる様子はない。

見境なく触れたものを取り込もうとするから、近づかなければ害は無い。


マコトは見当たらない。また魔法で隠れているみたいだ。

傍観者を決め込むのはいいけど、部外者のベラギルの相手はしてほしい。後、ミツメも止めてほしい。次いでに、スライムの面倒を見ておいてくれ。




『まずは飯が先だな』



俺が頭の中で状況を確認していると、ベラギルはスライムを見つめてそう呟き、手の平をスライムに向けた。

意図を察知して動こうとしたが、一歩を踏み込む前に魔力が飛ばされてしまった。



バァン!



スライムにベラギルの魔力がぶつかって爆発した。

スライムの体が大きく抉れ、核が外へと吹き飛ばされる。粘液が四方八方に飛び散るが、蒸発したかのように霧散して灰に変わる。


爆発で散らばった赤黒い魔力が、宙を漂う灰を取り込んでいく。

灰を乗せた魔力がベラギルの元へと流れていく。灰だけでなく空気中からも闇を取り込んでいるようで、魔力はより黒さを増してベラギルの元に収束し、全身を汚泥のような魔力で満たしていく。



『っ! あの野郎! "断斬"!』



スライムに攻撃したことに激怒し、俺はベラギルに向けて断斬を放った。

だが、またも爆発を利用した移動により攻撃を躱されてしまった。



『こいつは食いでがあるからな、少しはマシになるだろ』



俺はスライムに近づきつつ、牽制するために手に魔力を収束させる。

いつでも魔法を放てる状態にしてベラギルに手の平を向けるが、ベラギルは気にすることなく足元に落ちた赤色の核を拾い上げた。


ベラギルが核に触れると、薄くだが核の表面が青白く光っていた。あれが、スクイの魂魄隷化によるプロテクトなのだろうか。

スライムの外に飛ばされたタイミングで灰に変わるはずだが、核のまま形状を維持している。空気中にベラギルの魔力が満ちていたから、それに魂が触れないように守っている?


原因ははっきりしていないけど、これなら核を取り込まれることはないか。



そんな甘い考えは、瞬時に消え去った。



グシャ



ベラギルが黒い魔力を手に纏い、核を握りつぶした。

赤色だった核に澱んだ魔力が侵食し、真っ黒に染め上げる。核は灰になることなく、溶けてベラギルの体内へと吸収されてしまった。



『……お前、今、何をした?』

『あぁ? 破魂を使っただけだが?』



思わず口にした疑問に答えが返ってきた。

破魂。そのままの意味なら、魂を壊す魔法……?


あの澱んだ魔力には覚えがある。俺が豚型の魔獣に捕まった時に垂れ流していた魔力と同じだ。

あの時、俺は逃げることに必死で魔力を流し込んでいただけだと思っていたが、スクイは俺が魂に干渉する魔法を使っていると推測していた。

気が付かないうちに、破魂という魔法を俺が使っていたのか?



『何だ、破魂を知らねぇのか? ってことは、監獄の悪魔共は闇の残留思念を消さずに取り込んでやがるのか?』



闇の残留思念。取り込んだ時に感じる闇の意思のことか。

確かにそれを消せるなら、取り込む時の負担はなくなる。


けど、それは僅かに残った魂を消し去るということ。最初から破魂を使っていたなら別だけど、散々闇に助けられてきた今となっては、破魂を使って闇を取り込むことはしたくない。



『"雷光線"!』

『がっ!?』



目の前を光が通過し、遅れて魔法名が耳に届いた。

光の線はベラギルの腹部を通過し、スライムの体をも貫いて奥へと消えていった。



その発生源を辿っていくと、洞窟の先に全身が真っ黒に染まったスクイがいた。


ミツメの攻撃が全身に傷を負い、一目で満身創痍だと分かる状態だ。

傷口を塞ぐこともできず、体は消耗を続けてやせ細っていて、両腕は千切れたまま修復できていない。


いくら悪魔だとしても、立っていることが不思議に思える。

それでも、ベラギルを睨む瞳には揺らぐことのない強靭な意思を感じる。



『何しやがる、この死にぞこないが!』

『お、前、如き、に……、魂は、俺が、守っ……』



意思に体がついていけていないのか、言葉が途切れ途切れになっている。

念話の場合は体というよりは魔力がうまくコントロールできていないのか?



『そんなに死にてぇなら、俺様が殺してやるよ!』



ベラギルは闇で腹部に空いた穴を修復し、魔力をスクイへと飛ばした。

スクイは防ぐことも避けることもできない状態で、魔法を唱えようとしたのか僅かに口が動いたが、結局は何もできずに直撃した。



バァアン!



殺意の籠った衝撃が、スクイの体をバラバラに吹き飛ばした。


スクイは魔力の分解や物理攻撃の無効化など厄介な能力を持っていたはずだが、発動したようには見えなかった。

体が闇で覆われているせいで、使えなかったのだろうか。



『雑魚が。テメェ如きに俺様の邪魔する資格なんてねぇんだよ』




ベラギルの呟きにより、俺の中で殺意が膨れ上がる。

なんで殺意を抱いているのか、自分でも不思議だ。さっきまで殺したいと思っていた相手だっていうのに。


理解しがたい感情に困惑し、スクイの亡骸を見る。

飛び散った体が、上空からポトポトと地面へ落下する。



『っ!?』



それを見て、俺はスクイへの警戒度を上げた。

あの状態で、灰にならないなんて可笑しい。しかも、スクイの体だった真っ黒な断片が僅かに青白く光っている。



断片が、ゆっくりと蠢いて集結し、真っ黒な塊ができる。

その塊は徐々に肥大化し、元の体の倍以上の大きさまで成長した。




そして、悍ましい怪物が目を覚ました。



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