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悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
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【side ミツメ】子供の悪魔

意思の強い悪魔の中にも、心の弱ぇ奴がいる。自分に自信がなくて内向的だったり、極端に臆病だったり。

特に子供の悪魔でそういう奴らが多いな。


悪魔に大人も子供もないはずなんだが、心が弱いと見た目もガキっぽくなるのかもしれない。もちろん、俺は例外だがな。

上位悪魔で見た目が子供なのは俺くらいだ。俺以外のガキ共は、全員が下位悪魔だな。


悪魔の中には弱いガキ共を虐めるのが好きな奴が多い。なんでも、怖がる反応が楽しいからとかほざいていたな。

別にどんな趣味嗜好を持っていようが勝手だが、そういう奴らは俺にも手を出そうとしてくる。見た目がガキってだけで弱いと決めつけてやがるからな。そういう奴らは全員返り討ちにしてやった。


ちょっかいをかけてきた嗜虐趣味の屑共を屠ってきたせいか、いつの間にか子供の悪魔共から慕われるようになった。

最初は鬱陶しいと思っていたが、他の奴らから尊敬の念を持たれるってのは中々気分がいい。

それに、アイツらが撒き餌になって他の悪魔共を釣ってくるから、ストレス発散には事欠かなかったな。

闘技場を頻繁に使っていたせいで、屑共も俺に喧嘩を売ってこなくなったのは誤算だったが。


ガキ共はずっとビクビクしていて最初は話もまともにできねぇし。少し遊ぼうとしても弱すぎて殺しそうになっちまう。

娯楽もないから、暇つぶしに魔法を教えたり戦闘訓練をしたりしていた。多少は強くなったが、元々が下位悪魔の中で最弱だったからな。育てても中位に片足突っ込んだ程度だった。

ガキ共は弱いが、まぁ俺が育ててやった奴らだからな、俺の舎弟として認めてやった。


もう少し強くしてやろうと思っていたんだが、最近は見かけなかったな。

久しぶりに見かけたと思ったら、何であんなところで寝ているんだ?

映像から情報を取ろうとするが、音が無いから何をしゃべっているのか分からねえ。



『これ、音は出せないのか?』

『少し手間ですが、音を出すことはできます。ただし、音声を再現しても念話にはならないので、言語が分からなければ意味を理解できません』

『あぁ、なるほどな』



どんな魔法を使っているか分からんが、映像や音声は取れても念話は無理なのか。

悪魔の使う言語はバラバラだから念話がないと意思疎通ができねぇ。まぁ念話使えない悪魔なんていないから困ったことはないが。

……監視はできても何を話しているかは分からない、か。いいこと聞いたな。それなら今まで言ってきた悪口もバレていねぇはずだ。



『念話の再現はできませんが、何を話しているのかは理解していますよ』

『……じゃあ、何話しているか教えてくれ』



そういえば、サトリは心が読めるんだった。これは、悪口も全部バレてるな。……暫く無心でいた方がよさそうだ。



『どうやら戦闘に入るみたいですよ』



サトリがそう言ってからすぐに、御子が攻撃を仕掛けた。闇で形成した針を射出したようだな。

あの針は闇でできているからな、体に刺さるとそこから闇が体に流れ込んできやがる。そのせいで意識が混濁し、正気を保つのが難しくなる。

手数も多いし中々優秀な攻撃だが、速度は遅いから避けるのは余裕だ。……油断していなければな。


スクイも余裕で避けていた。

だが、上位悪魔の割には体の動きは良くねぇな。スクイの戦闘は初めて見るが、接近戦は苦手なのか?


迫ってくる御子に対し、スクイは魔法を放った。

御子の手前に描かれた魔法陣から犀型の魔獣が姿を現す。



『あれは、召喚魔法か』

『えぇ。従属した魔獣を召喚する魔法ですね』



悪魔が召喚魔法を使うのは何度か見たことがあるな。その時に召喚魔法を使った悪魔も魔獣を召喚していた。

その悪魔はただの時間稼ぎとして魔獣を召喚しただけだったが。


召喚魔法は召喚する魔獣の質が重要となるが、スクイの召喚した魔獣は質がいいな。


魔獣は御子が放った断斬を無傷で受け切った。見た目で身体能力が高いのは分かるが、それだけでは断斬を受け止めることはできねぇ。どうやら魔法を使ったようだな。

あれは、魔力分解か。魔法を使える魔獣はかなり稀なんだが、あの魔獣の固有魔法か?

……というか、何で御子が断斬使っているんだよ。



『ムフフ、御子はミツメの魔法を見ただけで使えるようになりましたよ』

『……あの野郎、俺への当てつけか?』



クソ、今度戦うときには手加減なしの断斬を食らわしてやる!

そして何度も心を読むんじゃねぇ!


そんなことを考えながら御子を見ていると、スクイが戦闘を召喚した魔獣に任せ、その場にしゃがみ込むのが目に入った。

そのまま子供に手を伸ばし、その頭を握りつぶした。



『……は?』



子供の頭が潰されたのを見て、俺はスクイが何故ガキを殺したのか分からずに困惑した。

意識の無い悪魔を殺して何が楽しいんだ?

悪魔が殺生をするのは快楽の為っていうのがほとんどなんだが、スクイの表情からは何の感情も読み取れなかった。


分からずに凝視していると、殺した理由が分かった。

スクイはガキの体を形成していた悪魔の粒子を、体内に取り込みやがったんだ。


その行為に驚愕した。悪魔は悪魔を殺すことはあっても、取り込むことはしない。

そんなことをすれば、精神が崩壊するからだ。


元々、複数の魂が混ざり合って一つの強力な意思を形成した個体が悪魔だ。

その強力な意思を取り込もうとすれば、意思が混ざり合い、全く別の個体になる。つまり、2体の悪魔が消滅して1体の悪魔が誕生するということだ。


強くなりたいと願う悪魔はやるかも知れねぇが、自殺願望の無い悪魔はまずやらない。

危機的状況に陥ったときの苦肉の策であれば分からんこともないが、スクイは何の躊躇いもなく実行した。


理解できない行動に驚愕していたが、次第にもう一つの感情が溢れ出た。

スクイがガキを取り込んだ。それは、ガキが復活できないことを意味している。もう二度と会えないという考えが脳裏を過ったとき、殺意が心を満たした。



『あの野郎、俺の舎弟を……!』



自分でも何でこんな感情を抱いているのか分からねぇ。

だが、今は意思が混ざり切る前にスクイを殺し、舎弟を助け出すことしか頭になかった。



バンッ!



風を操って圧縮した空気を破裂させ、発生させた爆風で自分の体を吹き飛ばす。その勢いを生かしたまま、猛スピードで来た道を戻っていく。

風を操って軌道を修正し、何度か爆風を発生させて速度を上げていく。

あっという間に階段へとたどり着き、再び風を圧縮して足元で破裂させる。その爆風に乗って上空へと駆け上がった。



『何をしているのですか、ミツメ?』

『ぐっ!?』



いつの間にか目の前にサトリがいた。そのまま顔面を蹴り飛ばされ、背中から地面に叩きつけられた。



『がはっ!』

『御子の戦いを邪魔してはいけませんよ』

『ふざ、けんな! あのスクイとかいうクソ野郎はぶっ殺す!』



風を操って高速飛行し、スクイの横を飛び越えた。



ボシュ!



『なっ!?』



横から飛んできた攻撃を避けるために急停止をかけると、眼前を円錐状の魔鉱石が走り抜けた。

俺は攻撃の主を睨んで怒鳴りつけた。



『邪魔するんじゃねぇ!』

『駄目だと言っているのが理解できないのですか?』

『うるせぇ! アイツは俺の舎弟を殺して取り込みやがったんだぞ!?』

『えぇ、そうですね』



俺が怒鳴りつけても、サトリは笑みを浮かべたまま淡々と口を開きやがった。その表情、その言葉で、怒りが増幅する。



『闘技場以外での殺しは禁止じゃねぇのか!? いつもなら嬉々として粛清しに行く奴が、何で黙って見てんだよ!?』

『あれは殺しではなく、食事ですからね』

『……は?』



意味が分からず、思わず聞き返してしまった。

サトリは笑みを浮かべたまま、俺に言い放つ。



『復活したばかりのスクイでは力が足りませんからね。目覚めたら食べるように指示しておいたのですよ』



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