表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔に転生した俺は復讐を誓う  作者: 向笠 蒼維
第1章 地獄の道
52/141

悪魔の鎧の暴走

スクイの周りを、召喚された悪魔と魔獣が埋め尽くす。

見える範囲だけでも悪魔は10体程。そして魔獣は、ざっと数えても百は下らない。



『どんだけ召喚してんだ!? 勝てるか、んなモン!!』



6体相手ですら僅かな希望を抱いて戦っていたのに、希望なんてなかったと言わんばかりの絶望的状況だ。


悪魔は一体だけでも苦戦するし、スクイの召喚した魔獣は魔力分解や吸着など、厄介な能力を持っている。

普通に戦っても勝てない、なら一旦距離をとるしかない。そう、これは逃げるんじゃない、戦略的撤退だ!

俺は踵を返そうと足に力を入れようとするが、俺の意思に反して闇の体は勝手に攻撃を仕掛けた。



バシュ!



『え、ちょっ!?』



両腕から数百の針が射出し、空間を埋め尽くしながら敵の群れを貫く。

鋭い針が数体の魔獣を貫き、その命を奪う。殺した魔獣の中には先ほどまで戦っていたゴリラ型の魔獣とサイビトも含まれていた。

アイツらは魔力を分解できるが、物理攻撃は効く。闇の攻撃が物理攻撃かどうかは怪しいけども。


厄介な能力を持つ魔獣を倒すことはできたが、射出した針の数に比べて倒せた数が少ない。


それは、一部の悪魔と魔獣の能力が原因だった。

遠くから見てもスクイの倍以上の高さはある巨漢の悪魔が、針をその身に受けて後ろに行くのを阻止していた。体の頑丈さもそうだが、その悪魔のところにだけ針が集中していた。おそらく、俺の攻撃を魔法で収束させたのだろう。


魔獣の中にも、二足歩行する亀型の悪魔が、背をこちらに向けて甲羅で針の攻撃を受け止めていた。

さっきフウガに殺されたはずの豚も復活していて、針が腹に食い込んでいるのに悠然と佇んでいる。いや、痛がれよ!

それ以外の魔獣も、動きの速い者は壁役の後ろに移動して難を逃れていた。



『"水爆"』

『"雷刃"』



俺の両サイドから魔法名が聞こえてきた。

それと同時に目の前の地面に魔法陣が出現し、水が弾けたように噴き出して俺の体を吹き飛ばした。

さらに光り輝く刃が下から出現し、俺を天井へと切り飛ばす。

斬撃は鎧で防げているし、電撃は効かないからダメージはない。ただ、俺に纏わりついた水に雷が流れ込み、全方向から差し込む光で視界が白一色に埋め尽くされる。


闇がオートで反衝を発動させ、纏わりついていた水と雷を弾き飛ばす。

だが、一瞬の隙の内に、敵は攻撃に転じていた。悪魔達が魔法をこちらに向けて放ってきたのだ。


火の玉や石の礫、水の刃に雷の矢など、多様な魔法が俺に向かって放たれている。威力よりも手数を重視している魔法の後を、5体の鳥型の魔獣が追従している。


魔法も厄介だけど、鎧で防ぐことは可能だろう。それよりも気がかりなのは、迷わずに突っ込んでくる魔獣の方だ。というか、人の顔を持った鳥が顔面を突き出して飛んでくる光景に恐怖を感じる。


横に飛んでガードの体勢を取りたいのに、闇の体は迎え撃つつもりのようで、その場から動かない。


黒鎧顕現。闇から力を借りることができ、魔法も自動で放つことができる優秀な鎧だけど、取り込む闇が多すぎると体の自由を奪われる。俺の知らない魔法を使えたり、高い機動力を持つことができるメリットはあるけど、猪突猛進して敵陣に突っ込むという無謀な行動をとるからデメリットを大きく感じてしまう。


自分の意思で動かすことのできる量の闇を取り込むようにしないと、いずれは意識すら持ってかれてしまうだろう。

それは今後の課題として、今は目の前に集中しないと今後が来なくなる!


闇の体が対応してくれているから油断していたけど、闇が発動した反衝がいつまでたっても攻撃を跳ね返せないでいた。

攻撃を跳ね返す魔法だが、この魔法は相手の攻撃を波に変換してから反射しなければいけない。でも、数多の魔法が絶え間なく同じ個所にぶつかってくるため、反射する隙が無い。


腕に振動が伝わり、衝撃をエネルギーに変えるための魔法陣が、そのエネルギーに耐えきれず崩壊しそうになっている。

このままだと、エネルギーが暴発する!


俺は前に翳した魔法陣に魔力を注ぎこんだ。さらに、反衝を発動させた闇に同調する。



――嫌っ! 来ないで!――



映し出された画像には、小さな女の子が2人。姉妹なのか、似た顔立ちで、少しだけ体の大きな姉が妹を守っている構図だった。

その目の前にいるのは、下卑た笑みを浮かべる男。片手にはロープを持ち、もう片方の手で魔力を放出しているようだった。

どんな攻撃かは分からないけど、放出された魔力を反射しようと、姉が反衝を使い続けている。


闇を介して使っているから実感はあまりないけど、反衝はかなり高度な魔法だ。相手の攻撃を魔法陣で受け止めて波に変換し、その後で攻撃に変えて放つ魔法。

魔法陣が崩れれば取り込んだエネルギーが暴発してしまう。波の変換がうまくできなければただの盾に成り下がる。攻撃を返そうとしても、波に変換したエネルギーを収束して放たないと強風程度にしかならない。


複数の技術が重なって初めて攻撃の反射が可能になる。この魔法を使えている時点で、姉の能力の高さが窺える。

でも、この魔法の欠点を理解していない。いや、分かってはいるけど、どうしようもない状況に追い込まれているということか。


この魔法の欠点、それは、魔法を反射するまで常に魔法陣に魔力供給をしなければならないということ。

攻撃を受け止めるためにも、攻撃をエネルギーに変換するためにも、そして魔法陣を維持するためにも、魔力を惜しみなく注ぎ込まなければならない。


目の前の男は、それを分かっているのだろう。だから、魔力を薄く放出し続けて姉が魔力切れをするのを待っていた。

その狙いは正しい。だが、見誤った点がある。それは、姉が妹を守るために死力を尽くしたという点だ。魔力が切れても魔法を止めない。男がそれに気づいても、もはや止めることができなかった。いくら薄く放出したといっても、長時間蓄積した魔力を一気に身に受ければ大怪我では済まないから。


魔力が尽き、そこで意思が途切れた。その先、姉がどうなったのかは明白だ。そして、妹の人生も。



『ぐぁああ!!』



叫び声で意識を現実に戻した。その叫び声が自分の口から出ていたことに驚愕した。

同調した影響で、姉が感じていた恐怖心が心を侵す。子供が受け止められる恐怖心を超えている。発狂していてもおかしくないのに、姉は妹を守るために最後まで抗った。姉の思いが、俺の中で殺意に代わる。


叫び声に呼応して、魔法陣が輝きを増し、受け止めた魔法をすべてエネルギーに変換した。

それを一瞬で攻撃に変え、さらに自分の魔力も加えて威力を倍増させる。

そのエネルギーの塊を、目前まで迫っていた鳥型の魔獣に思い切りぶつけた。



『死ねぇ!!』



ボシュン!!



鳥型の魔獣にエネルギーの塊がぶつかり、その体を吹き飛ばす。だが、ぶつけた瞬間に鳥型の魔獣の体も爆発した。



バァン!!



互いの衝撃が相殺し合い、それでも消えなかった爆風で俺は後方へと吹き飛ばされた。

あの鳥、自爆しやがった!


翼を広げ、何とか両足から地面に降り立つことができた。だが、事態は刻一刻と深刻に、無慈悲に進んでいく。

魔獣の残骸が灰となって空を舞い、スクイのもとへと飛んでいく。そして、再びスクイが魔法名を唱えた。



『"多重召喚"』



さっき倒したばっかりの魔獣たちがすべて復活した。しかも、追加で3体の悪魔と20体程の魔獣が召喚された。

どんだけストックあんだよ! というか、サイビトこれで3回目だろ! リサイクルし過ぎだ!



敵は死なないどころか、むしろ増えていく。闇の鎧のせいで逃げることもできない。


……いや、それじゃ駄目だ。


生き残るためには、逃げた方がいいのだろう。普通であれば、それは正しい選択だ。

でも、ここは地獄だ。正常な判断を持ったままでは、悪魔という異常な敵に勝つことはできない。

勝ちたいなら、正常な思考はいらない。そう考えると闇の鎧の行動も、正しいと思えてくる。


けど、今のままでは力が足りない。

力不足の原因は、俺の理性のせいだ。


俺の理性がネジとなり、闇の力を締め付けている。

理性を失うわけにはいかない。けど、今勝つには、常軌を逸するしかない。


そう考えた時に、一つの魔法名を思い出した。


常軌を逸するには、狂えばいいんだ。

理性がある状態で狂うことは難しい。なら、魔法で、狂った状態にすればいい。

俺が今考えることは、敵を殺す、それだけでいい。


なら、不要な理性なんて、全部吹き飛ばせ!



『"狂化"!』



魔法名を唱えたと同時に、俺は意識を失った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ